映画 「ナイトクローラー」
狂気は凶器となり、狂喜乱舞して暴走していく。
東京では8月に公開された映画ですが、新潟でもやっと上映されました。
「ナイトクローラー」とは、街が眠りにつく頃、事件や事故現場に急行し、惨状を撮影。
その映像をマスコミに売ることを生業とする者たちの通称だそうです。
いわゆる「パパラッチ」みたいなもんでしょうか。
きっと、興奮する職業なんでしょうねえ。
主人公は、無職の青年。
仕事を得られなくて、盗んだ物を売ったりして、何とかしのいでいる状態。
最初は、自分を売り込むのも下手で、鼻であしらわれていたりしますが、
学習能力と適応力は人一倍で、出会う人から次々と“吸収”していきます。
ある時、偶然にナイトクローラーで稼いでいるおっちゃんと遭遇。
働かせてくれと頼んで断られますが、世の中にはこんな仕事もあることを知る。
この瞬間から、彼の脳内で、“何か”が動き始めます…
主演は、ジェイク・ギレンホール。
彼のギョロッとした目が、実に効果的に生かされています。
「タクシードライバー」は、主人公のモノローグが魅力でしたが、
ギレンホールは、目ヂカラで、全てを表現していきます。
彼の語りは、決して悪人口調ではなく、ほどほどに“いい人オーラ”を放っています。
その中途半端さが、次第に変わっていく“静かな躍動感”につながっていきます。
間違いなく、ハマリ役ですね。きっと、彼の代表作の1つに数えられるでしょう。
「タイムマガジン」のコメントでは、
『デ・ニーロが演じた「タクシードライバー」のトラヴィス再来!』
なんてことを言ったそうですが、ちょっとカラーが違うように思います。
①普通だった男が、だんだん狂っていく物語。
②もともと狂っていた男が、行動するきっかけを得る物語。
③もともとそういう要素を持った男が、狂気の世界に足を踏み入れる物語。
本作は、①だと思います。
「タクシードライバー」は、②に該当するでしょう。
「クラッシュ」は、断然③だと思うんですが、いかがでしょう?
(ポール・ハギスじゃなくて、クローネンバーグの方ですよ~)
本作で描かれている世界は、狂気と暴走。
“普通”と“異常”の境界線って、実は曖昧な部分が多い。
自分では普通だと思っていても、傍から見たら異常行動にしか見えない場合があるし、
自分では狂っていると思っていても、傍から見たら普通にしか見えない場合もある。
人によって視点や判断基準は様々なので、定義するのは難しい。
だから、より多くの人が正しいと認めたことが「正常」とされ、
それ以外の少数派は「異常」とされ、社会的に「迷惑」な存在になっちゃう。
転校や転職、引越しなどを多く経験した人は、
集団ごとに、「常識」や「暗黙ルール」が異なることを知っています。
面倒だけど、そうやって「適応力」を磨くことで、スキルアップしていくんですよね。
理解できないことは、「異常」であり、
理解できない行動は、「異常行動」であり、
理解できない思考は、「狂気」と認識される。
それが「暴走」していくことが、何よりも「恐い」のです。
ドライバーが暴走すれば、車は「凶器」になり、
料理人が暴走すれば、包丁も「凶器」になり、
警官が暴走すれば、拳銃が「殺人兵器」になる。
「暴走」というのは、「ブレーキがかからない状態」のこと。
俺は、自分が暴走する恐さを知っています。
だから、憎悪を心の中に封印する癖があります。
その結果、心がパンクして、精神病になりました。
人の体にも、心にも、限界というものはあるものなんですね。
世の中には、「必要悪」というものが、確かに存在します。
マスコミ自体は、社会に必要な機関だと思います。
偏向報道や過激な取材、やらせなどはアカンことになっていますが、
人の目を引く記事や映像は、がんばらないと生み出せない。
俺は、養豚を生業としています。
世の中に、豚肉を食べる人がいて、需要があるからこそ、俺の仕事が成立します。
おいしい豚肉を安く食べることができるのには、ちゃんと理由があります。
ナイトクローラーの人たちだって、需要があるからこそ、仕事として成立するんです。
見たい人がいるからこそ、より過激な映像を撮るために情熱を注ぐ。
いかがわしいとわかっていても、人は刺激的な映像が見たいと思うものなんです。
週刊誌だって、女性週刊誌だって、いかがわしい記事が目玉でしょう?
エロ本産業だって、アダルトDVD産業だって、需要があるから、なくならない。
風俗も売春も麻薬も、いじめもセクハラもパワハラもDVも、きっとなくならない。
当然、交通事故や現場事故、殺人も自殺も戦争も、なくならない。
「減らす」ことはできても、「なくす」ことは不可能なんです。
人類が全滅すれば、なくなるでしょうけど。
この映画は、単純なようで、深いメッセージがこめられています。
ナイトクローラーという仕事は、絶対になくならない。
社会的に忌み嫌われる仕事ほど、需要はしっかりあるんです。
その分、やり手は少ないし、生き残るのも難しい。
映画が終わった後、色々考えました。
俺は、人一倍、妄想力が優れている。
だから、映画以上に、もっとすごいことを想像してしまいました。
俺の妄想の方が、本作より過激だと思います(笑)
映画「変身」を見た時。
映画「崖の上のポニョ」を見た時。
俺の妄想モードが暴走したことをよく覚えています。
他にも、暴走しまくって書いた記事は、無数にありましたね。
暴走は、よくない。
それは、わかっている。
だけど、暴走せずにはいられない時が、確かにある。
駆り立てるものは、一体何か。
それは、誰にも、わからない。
当の本人にしか、理解できない世界。
だけど、これだけは言えます。
…暴走って、気持ちいいっ!
【作品データ】
監督・脚本:ダン・ギルロイ
撮影:ロバート・エルスウィット 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ジェイク・ギレンホール レネ・ルッソ
リズ・アーメイド ビル・パクストン
(2014年アメリカ 上映時間:118分)
☆レネ・ルッソは懐かしい女優さんですね。彼女は今年で61歳だそうな。
ちなみに、ダン・ギルロイ監督の奥様だそうです(笑)
東京では8月に公開された映画ですが、新潟でもやっと上映されました。
「ナイトクローラー」とは、街が眠りにつく頃、事件や事故現場に急行し、惨状を撮影。
その映像をマスコミに売ることを生業とする者たちの通称だそうです。
いわゆる「パパラッチ」みたいなもんでしょうか。
きっと、興奮する職業なんでしょうねえ。
主人公は、無職の青年。
仕事を得られなくて、盗んだ物を売ったりして、何とかしのいでいる状態。
最初は、自分を売り込むのも下手で、鼻であしらわれていたりしますが、
学習能力と適応力は人一倍で、出会う人から次々と“吸収”していきます。
ある時、偶然にナイトクローラーで稼いでいるおっちゃんと遭遇。
働かせてくれと頼んで断られますが、世の中にはこんな仕事もあることを知る。
この瞬間から、彼の脳内で、“何か”が動き始めます…
主演は、ジェイク・ギレンホール。
彼のギョロッとした目が、実に効果的に生かされています。
「タクシードライバー」は、主人公のモノローグが魅力でしたが、
ギレンホールは、目ヂカラで、全てを表現していきます。
彼の語りは、決して悪人口調ではなく、ほどほどに“いい人オーラ”を放っています。
その中途半端さが、次第に変わっていく“静かな躍動感”につながっていきます。
間違いなく、ハマリ役ですね。きっと、彼の代表作の1つに数えられるでしょう。
「タイムマガジン」のコメントでは、
『デ・ニーロが演じた「タクシードライバー」のトラヴィス再来!』
なんてことを言ったそうですが、ちょっとカラーが違うように思います。
①普通だった男が、だんだん狂っていく物語。
②もともと狂っていた男が、行動するきっかけを得る物語。
③もともとそういう要素を持った男が、狂気の世界に足を踏み入れる物語。
本作は、①だと思います。
「タクシードライバー」は、②に該当するでしょう。
「クラッシュ」は、断然③だと思うんですが、いかがでしょう?
(ポール・ハギスじゃなくて、クローネンバーグの方ですよ~)
本作で描かれている世界は、狂気と暴走。
“普通”と“異常”の境界線って、実は曖昧な部分が多い。
自分では普通だと思っていても、傍から見たら異常行動にしか見えない場合があるし、
自分では狂っていると思っていても、傍から見たら普通にしか見えない場合もある。
人によって視点や判断基準は様々なので、定義するのは難しい。
だから、より多くの人が正しいと認めたことが「正常」とされ、
それ以外の少数派は「異常」とされ、社会的に「迷惑」な存在になっちゃう。
転校や転職、引越しなどを多く経験した人は、
集団ごとに、「常識」や「暗黙ルール」が異なることを知っています。
面倒だけど、そうやって「適応力」を磨くことで、スキルアップしていくんですよね。
理解できないことは、「異常」であり、
理解できない行動は、「異常行動」であり、
理解できない思考は、「狂気」と認識される。
それが「暴走」していくことが、何よりも「恐い」のです。
ドライバーが暴走すれば、車は「凶器」になり、
料理人が暴走すれば、包丁も「凶器」になり、
警官が暴走すれば、拳銃が「殺人兵器」になる。
「暴走」というのは、「ブレーキがかからない状態」のこと。
俺は、自分が暴走する恐さを知っています。
だから、憎悪を心の中に封印する癖があります。
その結果、心がパンクして、精神病になりました。
人の体にも、心にも、限界というものはあるものなんですね。
世の中には、「必要悪」というものが、確かに存在します。
マスコミ自体は、社会に必要な機関だと思います。
偏向報道や過激な取材、やらせなどはアカンことになっていますが、
人の目を引く記事や映像は、がんばらないと生み出せない。
俺は、養豚を生業としています。
世の中に、豚肉を食べる人がいて、需要があるからこそ、俺の仕事が成立します。
おいしい豚肉を安く食べることができるのには、ちゃんと理由があります。
ナイトクローラーの人たちだって、需要があるからこそ、仕事として成立するんです。
見たい人がいるからこそ、より過激な映像を撮るために情熱を注ぐ。
いかがわしいとわかっていても、人は刺激的な映像が見たいと思うものなんです。
週刊誌だって、女性週刊誌だって、いかがわしい記事が目玉でしょう?
エロ本産業だって、アダルトDVD産業だって、需要があるから、なくならない。
風俗も売春も麻薬も、いじめもセクハラもパワハラもDVも、きっとなくならない。
当然、交通事故や現場事故、殺人も自殺も戦争も、なくならない。
「減らす」ことはできても、「なくす」ことは不可能なんです。
人類が全滅すれば、なくなるでしょうけど。
この映画は、単純なようで、深いメッセージがこめられています。
ナイトクローラーという仕事は、絶対になくならない。
社会的に忌み嫌われる仕事ほど、需要はしっかりあるんです。
その分、やり手は少ないし、生き残るのも難しい。
映画が終わった後、色々考えました。
俺は、人一倍、妄想力が優れている。
だから、映画以上に、もっとすごいことを想像してしまいました。
俺の妄想の方が、本作より過激だと思います(笑)
映画「変身」を見た時。
映画「崖の上のポニョ」を見た時。
俺の妄想モードが暴走したことをよく覚えています。
他にも、暴走しまくって書いた記事は、無数にありましたね。
暴走は、よくない。
それは、わかっている。
だけど、暴走せずにはいられない時が、確かにある。
駆り立てるものは、一体何か。
それは、誰にも、わからない。
当の本人にしか、理解できない世界。
だけど、これだけは言えます。
…暴走って、気持ちいいっ!
【作品データ】
監督・脚本:ダン・ギルロイ
撮影:ロバート・エルスウィット 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ジェイク・ギレンホール レネ・ルッソ
リズ・アーメイド ビル・パクストン
(2014年アメリカ 上映時間:118分)
☆レネ・ルッソは懐かしい女優さんですね。彼女は今年で61歳だそうな。
ちなみに、ダン・ギルロイ監督の奥様だそうです(笑)