映画 「ロボコップ」 | 映画熱

映画 「ロボコップ」

人の感覚と、機械的な判断とは、どちらが優れているのでしょうね。


俺が20歳の時に公開された、ポール・バーホーベン監督の「ロボコップ」は、
色んな意味で斬新で衝撃的な映画でした。

日本の特撮ヒーロー「宇宙刑事ギャバン」にインスパイアされたらしいのですが、
俺的にはやっぱり、石ノ森章太郎の「ロボット刑事」が元ネタだと思っています。

だって、カッコいいじゃん、こういうのって(笑)

パクリであろうが何であろうが、面白いもんができればそれでいいんだもん~


俺としては、「ターミネーター」よりも、「ロボコップ」の方が断然好きなんです。

すぐに壊れてしまうような、あの「ポンコツ感」がたまらないんですね(笑)

これはきっと、「人造人間キカイダー」や「電人ザボーガー」にも通じるもの。


機械も人間も、「いつ壊れてしまうかもしれない」ところが、ハラハラするんです。



さて、前置きが長くなりましたが、今回の映画、面白い要素があります。

劇場シリーズとしては、4作目になるのかな。

初期のシリーズに比べると、ドロドロ感が弱くなってソフトになりました。

物語の性格上、エグい場面はありますが、正視に堪えないほどではありません。


俺としては、動きがシャープになり過ぎちゃっていて、
いかにも中に人が入っている感がありましたけど(笑)


しかしながら、この黒いコスチューム、なかなかカッコいいです。

今回は、車ではなくバイクに乗って移動するので、仮面ライダーみたいです(笑)


こういう映画は、「リブート」と呼ばれているらしいです。

「リブート」とは、「再起動」という意味。「リメイク」とは違う種類のもの。
停滞していたシリーズに、新たに命を吹き込むようなイメージでよろしいかと。


そういう意味で、新しい「設定」が加わりました。


これまでのロボコップは、人間としての記憶がフラッシュバックして、
主人公が悩み苦しんでいましたが、
本作では、「人間感覚モード」と「機械モード」を切り替えられるみたいなんですね。

で、ロボコップの面倒を見る博士役が、何とゲイリー・オールドマン!

ロボコップの苦悩もあれば、それをコントロールする博士の苦悩もある。


冷静な判断が必要とされる時に、人間の感情というのは邪魔なのかもしれない。

余計なストレスを感じずに、クールに物事を処理できれば、ずっと楽なのかも…


本作では、ロボコップという存在が必要とされる理由も、きちんと描いています。

そして、自分の意志とは関係なく「改造」されてしまった男の悲しみも…


「サイボーグ009」は、「人間であって人間でない哀しみ」を描きました。

「ロボット刑事」も「キカイダー」も、機械であるがゆえの悩みを表現しました。


今回の新しい「ロボコップ」は、石ノ森作品に捧げるオマージュなのかもしれませんね。

黒いコスチュームデザインは、何だか「ハカイダー」を連想しちゃうし(笑)



「正義」と「悪」は、人間の永遠のテーマです。

「正義が勝って、悪が滅びる」のは、単なるおとぎ話かもしれない。

強くても弱くても、勝つ時は勝つし、負ける時は負けてしまうもの。

「運がいい」とか「協力者に恵まれている」という要素もあるでしょう。

「ひとりで戦える」ほど、世の中は甘くないんですよね…


何もかも機械的に判断して生きていけたら、どんなに楽かもしれない。

物事に悩まずに、クールにスルーしていけたら、苦しまないのかもしれない。

でも、そういう人生って味気ないし、あっという間に終わってしまうのかも。


俺は、物事を何でも器用にこなせる人よりも、

不器用で、悩んでばかりの人の方が好きです。


手塚治虫作品でいうと、「火の鳥 復活編」に登場する「ロビタ」に魅力を感じます。

不完全であり、不器用であり、何度も失敗をしてしまうのが、人間の本質だと思うんです。


自分がうまくできると思い込んでいる人は、弱い人を許せない。

自分は何をやってもダメだと思い込んでいる人は、強い人を妬む。


誰もが、「できること」と「できないこと」があるんですよね。


「ロボコップ」は、普通の人間から見たら「怪物」かもしれない。

しかし、自分の脳で判断し、自分の心で感じることができれば、俺は人間だと思う。

不完全だからこそ、それを補うように、他の部分が発達していく。

弱い誰かを守るためにこそ、その人の「強さ」が必要なのだから。


「ロボコップ」は、「ロボット」ではなく「サイボーグ」である。

「完全な人間」など、どこにもいないし、機械なんてすぐに壊れるのである。

機械は、人間が面倒をみてあげなければ、ちゃんと動けないんですから。


だから、みんな「不完全」でちょうどいいと思うんですよね。



俺はやっぱり、「ロボコップ」というキャラクターが好きです。

映画の出来がどうであれ、物語がどうであれ、公開されれば、やっぱり見たい。



うつの人間にとっては、「機械モード」に切り替えることが自由にできたら、

体調の悪い時に働くのにいいなあって思いますけど、

それをやっちゃったら、ずっとそうしたくなってしまうかもしれないですね(汗)


やっぱり、生身の心で、生身の感覚で物事を捉えて味わうことが、大事なのかもしれない。

つらい時はつらいなりに、苦しい時は苦しいなりに、上手に生きてみたいと思います。



「力を持つ者」には、その人なりの苦悩があり、

「力を持たない者」も、その人なりの苦悩がある。


「悩む」ことも、「苦しむ」ことも、生きている証拠。

「心が生きている」からこそ、「苦悩」を感じられるというもの。



「ロボコップ」の雄姿は、「人間の心の強さ」の象徴。


「自分の弱さ」から目を背けずに戦える力こそ、真の強さなのだ。









【作品データ】

監督:ジョゼ・パリージャ 脚本:ジョシュア・ゼトゥマー 
原作:エドワード・ニューマイヤー マイケル・マイナー
撮影:ルラ・カルヴァーリョ 音楽:ペドロ・ブロンクマン
出演:ヨエル・キナマン アビー・コーニッシュ
   ゲイリー・オールドマン マイケル・キートン
   サミュエル・L・ジャクソン

 (2014年アメリカ 上映時間:117分)