MFS 「炎のたからもの」 | 映画熱

MFS 「炎のたからもの」

男も女も、永遠の旅人だと思います。


宮崎駿監督の引退発言を、朝のニュースで見てびっくり。
昨日のうちに、あの特番を見ておいてよかった~

思えば、「もののけ姫」の時も、これで最後だって言ってましたね(笑)


アーティストやクリエイターという人は、「無」から「有」を生み出す職業。
その「産みの苦しみ」というものは、壮絶な世界なんだと思います。

芸術家が絵を一枚描いた後は、死んだようになると言います。

カナダのアニメ作家、フレデリック・バックは、アカデミー賞を受賞した
「木を植えた男」を完成させた後に、片目の視力を失いました。

優れた作品を生み出すというのは、命を削って行うものなのです。



今日ご紹介する歌は、「ルパン三世 カリオストロの城」の主題歌。

歌っているのは、ロック歌手のボビー。オーディションで選ばれたそうです。

メロディラインからすると、透き通った声の方がハマるんだけど、
それじゃあ単純でつまらない、と大野雄二氏は思ったらしい。

そこで、若干ハスキーな声の彼女にあえて決定し、
わざと高めのキーに設定することで、苦しそうに吐息混じりで歌う感じにしたそうな。


この歌は、タイトルバックに流れます。

そこに流れる映像の凄さは、岡田斗司夫著「オタク学入門」に詳しく出ています。
その「伝説のオープニング」で、宮崎監督の「本気度」が伝わって来るんです。

ルパンの声を担当した山田康雄氏は、最初は軽く考えていたらしいのですが、
ラッシュフィルムの映像を見て、「これは本気でやらなきゃ」と襟を正したとか。

宮崎監督にとってこの作品は、まさに「遺言」であったのです。
彼がこの映画で描こうとしたのは、「晩年のルパン」だったのです。


ルパンの職業は、言うまでもなく「泥棒」です。
その彼が、一生に一度だけ、いいことをしようとする…

それは、罪ほろぼしなのか、単なる気まぐれなのか。
映画をしっかり見れば、ちゃんとわかります。


俺は、子供の頃にこの映画を見て、「男」を学びました。



「幸せを訪ねて 私は行きたい

 いばらの道も 凍てつく夜も

 二人で渡って行きたい」


幸せって、何でしょうね。

何が幸せかという感覚は、人によって違います。

誰もが、幸せになりたいと思って生きています。

それが何なのか、わかったとしても、簡単には手に入らないもの…

それでも、それを求めて生きられるのは、幸せなことなんですよね。


「あなたにだけは わかって欲しい 絆で私を包んで」

い~い歌詞ですね~ 泣けてきちゃう(涙)


追いかけても、追いかけても、蜃気楼のように逃げてしまう幻。

それでも、それが見えるなら、そこにあるのなら、追い続けて行きたい。

そういう切ない思いが、ボビーの美しい歌声によって、心に突き刺さります。


俺は、つらい時、苦しい時、追いつめられた時に、このメロディを口ずさみます。

ルパン三世最終回「さらば愛しきルパンよ」でも、効果的に使われた名曲。

この歌には、本心を呼び覚ます力があります。


クラリスを救うため。

自分がやり残したことに、けじめをつけるため。

自分が失ったものを、取り戻すため。


おっさんは、ひたすら戦います。

どんな状況になっても、ヒロインを優しく励まし、やるべきことをちゃんとやる。

そして、何事もなかったかのように、きれいに去って行く。


1つの戦いが終わり、また新しい戦いが始まる。

その、気持ちいい「一瞬」を切り取った、優れた物語なのです。


宮崎監督作品には、大変お世話になりました。

スタジオジブリ作品では、「紅の豚」が一番好きですが、

宮崎監督作品の中では、「カリ城」がダントツに好きです。


一生に一度でいいから、カッコいいことをしてみたい。

そういう男のロマンを、思い出させてくれる映画。


そして、そういう男を追いかける女の気持ちを歌った、素晴らしいバラード。

まさに、俺にとっての「炎のたからもの」なんです。



宮崎監督、おつかれさまでした。

今年の映画は、俺の中でまだ消化できていません。

いっぱい考えて、いっぱい経験して、心に問いかけて行くつもりです。


あなたから教わった世界を胸に、これからもがんばって生きて行こうと思います。