映画 「アシュラ」
「生まれてこない方がよかったのに」 …この問いに対する答えはあるのか?
あの「アシュラ」である。
ジョージ秋山の、トラウマ漫画である。
映像化不可能と言われた、幻の傑作が、ついにスクリーンに登場。
正直言って、この映画を見るのが怖かった。
たぶん、大っぴらに宣伝はできない。
ひっそりと公開されて、静かに埋もれていく作品になるかもしれない…
だからこそ、俺は、この映画を劇場で見ずにはいられなかった。
この映画の内容は、あえて書かないでおこうかな…
俺の文章から、想像してみてもらおうかな。
物語を知っている人なら、わかってくれるでしょう。
人間としての理性や、生理的嫌悪の限界に迫る内容なので…
どのくらい凄い内容かと言いますと、
1970年に連載していた週間少年マガジンが、有害指定図書に指定されて、
未成年への販売が禁止になり、社会問題になっちゃったくらいですから。
しかしまあ、よくこの漫画を映画化できたもんです。
原作の魅力の6割くらいは、表現できたんじゃないでしょうか。
これを製作した、スタッフの心意気を買おうと思います。
技術的には、やや不満もありますが、アニメならではの表現効果もあったので、
俺的には、面白かったです。
少なくとも、中途半端な実写で映画化するよりは、ずっといいでしょう。
人は、どこまで「人」でいられるか。
限界まで追い込まれても、「人」でいられるか。
地獄のような状況においても、「人」でいられるか。
極限状態においては、人間の理性は、あっという間に崩壊する。
そこには、ルールも法律も、役に立たない。
無法地帯で、人目も関係ない状況において、「人」の心はどうなっていくのか…?
「生まれてこない方がよかったのに」
映画でも、漫画でも、この言葉が繰り返される。
そんな言葉を吐かねばならないのは、何故か。
どんな理屈も、美辞麗句も、無意味な世界の中で、
誰が「人間らしい生き方」ができるというのか。
生きるということは、苦痛の連続である。
何かを踏みつけ、誰かを傷つけなければ、生きていけないのである。
きれいごとなんて、糞くらえ。
生命力は、ケダモノの力であり、略奪して、喰らい、生き抜く力なのである。
勇気のある人は、ご覧下さい。
恐怖を感じる人は、どうかご遠慮下さい。
この作品に描かれた世界は、決して夢物語ではないのです。
自分が、この状況に出くわしたら、一体どうするか。
登場人物の行動の是非を、問う資格がある者がいるのか。
よく、考えましょう。
考える間もなく、物語は進んで行きます。
映画館を出てから、さらに考えましょう。
何日も、何年も、考え続けることになるかもしれない。
結論は、出なくてもいいと俺は思います。
ただ、考えておいた方がいいんです。
実際にその状況になった時に、何かが見えるから。
南無阿弥陀仏。
【作品データ】
監督:さとうけいいち 原作:ジョージ秋山
脚本:高橋郁子 主題歌:小南泰葉
声の出演:野沢雅子 北大路欣也 林原めぐみ 玄田哲章
島田敏 山像かおり 山口勝平 平田広明 水島裕
(2012年東映 上映時間:75分)
☆エンドロールで、オマケ映像が入りますので、最後までご覧下さい。
☆さすが、こういう作品には、アイドルは出演しませんね…(笑)