S子さんの思い出 | 映画熱

S子さんの思い出

アメーバニュースにコメントしていたら、ある女性を思い出しました。今日は、その子のお話。


俺が28歳の時に、働いていた会社が倒産して、転職したのがE電子という会社でした。

そこは、75%が女性という、電子部品製造会社。


当然ながら、男性の新入社員には、注目が集まる。

たちまち俺は、女子社員の好奇な視線にさらされました。


俺はとにかく、仕事を覚えようと必死だったので、地味で目立たないようにしていたんですが、

俺の知らない間に、俺のイメージキャラが出来上がっていたみたいなんです。


そんなある日、大物社員の送別会がありました。俺は、半ば強制的に参加。

そこで俺は、ある女性社員に絡まれました。

T美さんというカワイイ女性だったんですが、ベロンベロンに酔っ払って、

俺に寄りかかるわ、抱きつくわてタイヘンでした。


酒癖の悪い女性がいるなあ、くらいに思ってたんですが、

翌週、出勤すると、俺はT美さんをたぶらかしてホテルに連れ込んだことになっていたのです。

彼女は、記憶がないと言ってたし、そういうことを気にする女性じゃないので、あっけらかん。


俺は、遊び人というレッテルを貼られました。


ちょうどその時は、遠距離の彼女と別れて間もない頃だったので、

次の彼女を作るつもりはありませんでした。


だから、彼女いるの?って聞かれると、いない、と答えてました。

作らないの?って聞かれると、しばらくはいいです、と答えてました。

それで余計に、こいつは遊び人だわ、ということになっていきました。



からかわれるくらいならいいんだけど、目の敵にされるのは困る。

ここから、俺の“反撃”が始まります。



まず、噂の中心が誰であるかを調べました。

仲のいい友達をうまく使い、信頼できる女性を使い、ついにその人物を突き止めました。


その女が、S子さん。

そして、彼女と一緒になって騒いでいる女性…名前は忘れちゃったので、A子さんとします。

その2人が中心人物であることを突き止めました。

彼女たちは、同姓からも嫌われているようでした。

ただ、怒らせるとうるさいから、ということで、女王として君臨していたんですね。


なあんだ、基盤は弱いじゃん。


まず俺は、A子さんに目をつけました。彼女は、俺とほぼ同期のH君に気があるようでした。

H君と俺は、休憩時間に一緒に煙草を吸う仲なので、

A子さんが通りかかった時に、声をかけました。

彼女は、俺を通して、H君に接近…!


それから、毎回のように、俺たちのところに来るようになりました(笑)

H君はまんざらでもない様子だったので、後は放っておきました。


面白くないのは、S子さんです。

2人とも、彼氏がいなかったから、うまくいってたのかもしれない。

彼女の、俺に対する攻撃性は、拍車をかけることになるでしょう。


そのタイミングを見計らって、俺は、仕事中に堂々と、S子さんのところに進撃。

彼女が作業しているところに、正面から乗り込んで行きました。


7人くらいが並んで作業しているところに、男性社員がつかつかと寄って来る…。

俺は、彼女のまん前に両肘を付いて、こう言いました。


『…ねえ、今日の夜、空いてる?』


彼女はきょとんとして、俺の顔を見る。

そして次の瞬間、下を向いて、こう言いました。


『…用事があるから、ダメ。』


『…じゃあ、明日は?』


周りは、びっくりして俺たちの方を見ています。


『…あ、明日だったらいいけど…。』


『…じゃあ、明日の8時半に、スナックJで待ってるね。』


『…うん…わかった…。』


俺はそのまま回れ右。すたすたと自分の作業場に戻ります。

女性たちの、ザワザワする声が聞こえました。


Sちゃんが、デートに誘われた!しかも、白昼堂々と!


噂は、ハリケーンのように会社を駆け巡りました。



そして、当日の夜。

俺は、8時20分にスナックJに到着。

そしたら、外にすでにS子がいる~!(笑)

オシャレをして、ニコニコ笑った彼女がいる。


こりゃあ、クスリが効き過ぎたかな?


彼女と一緒に、店内に入る。

たわいのない会話をして、ウイスキーの水割りを飲んで、カラオケを歌う。


え~、ここではっきり言いますが、彼女は下品です(笑)

見た目はカワイイのに、性格が悪いんですね。

聞いたら、ワイルドな兄貴がいるということ。

それで、男まさりなんですな。


カラオケも歌うんだけど、やっぱりどこか下品。

元プロ歌手のマスターに言わせると、あんなの、歌じゃねえ、とのこと(笑)


う~ん、やっぱり、もうちょい何とかしないと、アンタは彼氏できんわ。


俺は特に、彼女を口説こうというつもりもなかったので、2時間くらいで店を後にしました。

軽くあいさつをして、また明日~って感じで終了。



さあ、その翌日から、彼女の態度が豹変します(笑)


何故って?今度は、彼女の方が、“噂をされる側”になったのですから。


ねえ、桑畑くんとどこまで行ったの~?

一緒にカラオケ歌ったんだって~?

2人っきりで、その後どうしたの~?


その日以来、俺は、噂の矢面に立たされることはありませんでした。

むしろ、“イヤな女を手なづけた男” “物好きな男”として、ある意味、株が上がりました。


女性たちも、イヤな女がおとなしくなったのが、おかしくてたまらない様子でした。


ただ、弊害もありました。

いちいち笑顔で挨拶してくるので、何だか面倒くさかった(笑)


『…また今度、行こうね!』

『…うん、また今度ね!』


でも、その“今度”は、二度と訪れませんでした(爆笑)



俺がその会社を去った後、だいぶ立ってから、S子さんから電話が1回だけありました。

だいぶ酔っ払っているみたいで…。


彼氏ができた、と言っていました。

俺が、やきもちでも焼くと思ったんでしょうか?

そうか、よかったじゃん、と言っておきました。



『…ねえ、あの時さあ、何で誘ってくれたの~?』

『…まあ、何となくね。』

『…あたしって、魅力あった…?』

『…なきゃ、誘わないよ。』

『…誘ったの、あたしだけ?』

『…うん…そうだな。』

『…あんた、7人くらいの女とヤッたことになってるよ。』

『…なんじゃ、そりゃあ!』

『…だって、あんた、変な男なんだもん!』

『…そりゃそうだよ、お前に声かけるくらいだから。』

『…ああっ、やっぱりからかってたなー!』

『…違うよ、ロクな女がいなかったから、お前がまだマシだったってことだよ。』

『…ふーんだ、バカ!』

『…まあいいや。とりあえず、お幸せに!』

『…うん…ありがとう…じゃあ。』


会話は以上。それからは、1回もかかってきません。


後から聞いたら、H君とA子さんは結婚したらしい。

おお、俺ってキューピット?



気のせいか、最後に聞いたS子さんの声は、少しだけ、大人の女性の声に聞こえました。


20代後半の、忘れられない思い出です。