僕は妹に恋をする | 映画熱

僕は妹に恋をする

不自然でヘタでぎこちない演技の向こう側にあるものを、感じ取れればいいのでは、なんて思います。


見に行くつもりはなかったんだけど、娘がたまごっちの大会に出たいって言うから、ユナイテッド・シネマのゲーセンに連れて行くことになり、妻と娘が行っている間に見る映画で、ちょうどいいのがこれしかなかった。まあ、これも縁ということで。


原作は、青木琴美の同名コミック。いわゆる少女マンガ。ドラマCDになって、アニメになって、今度は実写映画。最近、こういうのホントに多いですねえ。この作品、“僕妹”(ボクイモ) なんて呼ばれているそうな。


監督・脚本は、安藤尋。「BLUE」 でソフト・レズを表現した人ですな。今回は、双子の兄妹のアブナイ関係をソフトに表現…してるかどうかは、見てのお楽しみ。


主演の兄は、松本潤。言うまでもなくヘタです。コイツは最初から問題外。原作者はベタほめだけど、女性はみんなジャニーズ好きなんですかねえ。まあ、アイドルのオーラがプンプンですから。眉毛が剃ってあるのがどうも不自然で違和感あり。ガサツな兄みたいな割には、毎日鏡の前でちゃんと手入れしているんですね。ああ、嘘くせえ。


ヒロインの妹には、榮倉奈々。彼女の致命傷は、やけにデカい身長。松本君よりデカいかも。撮り方でうまくごまかしているっぽいけど、パンフの写真でバレバレです。デカ女アレルギーの俺にとってはかなりのNG。こっちもいい感じでヘタなので、主役とある意味つり合っているかもね。まあ、せいぜい仲良く演じて下さいな。


共演は、平岡祐太、小松彩夏、浅野ゆう子、諏訪太朗。少なめなのでシンプル。


さて、映画ですが、見方によってはグッとくるかも。心に古傷のある方は心して見て下さい。


恋愛映画がキライだと言いながらやたらと見てるじゃん、という声が聞こえそうですが、まあ、いいじゃないですか。自分の意志とは関係なく、見ることになってしまうこともあります。で、見たからには何か言いたくなる。金を出すと口も出したくなるのが人情。


兄と妹の恋愛って、昔からあるネタだけど、大抵は抑圧されて歪んだエロ作品になりそうなところを、あくまでも明るいタッチで仕上げています。アニメでいうところの、杉井キサブロー監督みたいな、さわやかでイヤらしくない演出。


あんなにヘタな役者使っても、ちゃんと映画にするところがすごい。さすがはプロ。逆に、ウマい役者だとエロくなってしまう恐れがあったりして。思春期の感情を大人が表現するのはカンタンじゃないもんね。


原作を知らないので、画面から想像するしかありませんが、多分マンガは面白いんだろうなって思います。兄妹なのに妙にぎこちないのは、しばらく離れて暮らしたことがあるのかな。母親と3人で暮らしているようなので、両親が離婚して死別してまた一緒に暮らすようになったとか。経済的な理由で一緒の部屋で過ごす日々…うーむ、色々考えてしまう。


安藤監督は、余計なところは全部省略したい人なのかも。「BLUE」 の時もそうでしたが、『…ねえ、』 って話しかけてから 『…ん?』 って答えるまでに少し間がある。この微妙でわずかな時間の中に、何かを表現したいのかもね。まあ、ウマい役者なら表情で生かせるところなんだけど、この映画ではヘタなもんなから、観客もどう判断していいやら。変な意味でやきもきさせられました。ひょっとして、これも計算のうち?


親友役の平岡君は、福山モドキって感じで笑えました。カッコいいんだか悪いんだか、落ち着いてんだかドジなんだかわからんところがいい。しかしまあ、こういう役って、かなりの割合でメガネ男子ですよね。 「ピンポン」 とか、「海がきこえる」 とか、「サザエさん」 の中島くんとか…。


しかし、特筆すべきは、小松彩夏です。彼女、登場シーンからゾクッとさせられました。「実写版セーラームーン」 でセーラーヴィーナスを演じた女の子ですね。娘が好きだったのでよく一緒に見ていたので顔を覚えていました。彼女自身の演技力はまだ未知数ですが、この映画の彼女はよかった。まあ、ヘタな人と共演したから余計にうまく見えたのかもしれませんが。とにかく普通によいです。演技しようという姿勢がちゃんとある。


母親役の浅野ゆう子は、ベテランだけに、出番少な目でもやっぱり存在感あり。2段ベッドのハシゴを登る時の “足の演技” にご注目。しかしまあ、こんなセクシーな母親と住んでいたら、それだけでエロい関係になりそうな気配ですが。


恋愛って、相手の心を感じ取るのと、自分の思いを伝える作業の連続だから、映画で表現するにはもってこいの題材であり、また永遠のテーマでもあるんだと思う。安易に量産される安物が多い中で、作り手が本気で撮る映画もちゃんとある。少なくとも、安藤監督は、そういう心意気のある人なんだと俺は思います。


俺にも、古傷はたくさんあります。この映画のいくつかの場面でそれを思い出しました。人は、封印した過去をいつかは乗り越えなければならない。自分なりのやり方で…。その姿勢の一端を、この映画で感じて下さい。



【エンドクレジット】

普通に終わります。クリスタル・ケイの歌はあんまり魅力的じゃないから、帰っても大丈夫。


【トイレに行くタイミング】

中盤は、水族館に行く場面くらい。後半は、体育館のギャラリーで男2人で会話しているシーンがベストかと。


【オススメ類似作品】


「BLUE」

安藤尋監督。市川実日子、小西真奈美共演。どう見てもOLの2人が、じょしこーせーやっちゃいます。ホントにそう見えてしまうところがスゴい。やっぱプロは違うねえ。お見事な1本。ちなみに、原作者は新潟県出身のマンガ家。


「氷点」 (1958年作品)

山本薩夫監督。原作はもちろん三浦綾子。妹を愛する兄の執拗な情熱がたまらなくエロかった。


「くりいむレモン パート1 媚・妹・BABY」

創英新社のロリコンアニメ記念すべき第1作。「牧場の少女カトリ」 と 「Zガンダム」 のカミーユがやりまくる、禁断の作品。俺も高校生の時にお世話になりました。光るポコチンがダイナミック。「ダヴィンチ・コード」 の変態ジジイとチャンバラやらしてみたい。


「夜のピクニック」

長澤雅彦監督。多部未華子、石田卓也共演。ここに紹介するだけでネタバレしているみたいで恐縮ですが、やっぱりコレも同一ジャンルでしょう。この映画のヒロインが、本作のヒロインに勝っている最大のポイントはズバリ、身長です。



【追記】

エンディング・テーマの 「きっと永遠に」 は、聞きこんでいるうちに、だんだんとよさがわかってきました。今ではすっかりカラオケのレパートリーになっています。名曲として心に残したいので、書き加えておきます。