小さき勇者たち ~ガメラ~ | 映画熱

小さき勇者たち ~ガメラ~

思ったより出来がいい、わりと良質の作品。 子供たちよ、この映画を見て “何か” をつかみ取れ!


監督は、平成仮面ライダーシリーズを手掛けた田崎竜太。脚本は、龍居由佳里。ガメラシリーズでは初の女性脚本家ですね。怪獣造型は、平成ガメラを手掛けた原口智生。特撮演出は、マニアックな作品の助監督を数多くこなした金子功。音楽は、上野洋子。


出演は、富岡涼。「Dr.コトー診療所」 に出ていた、決して美少年ではない、普通の顔立ちの男の子です。ヒロイン(?)は、夏帆。「ケータイ刑事」 の四代目だそうで。


共演陣がある意味豪華キャスト。津田寛治、寺島進、石丸謙二郎、田口トモロヲ、渡辺哲、諏訪太朗…。なんなんだ、この面子。キワモノ俳優ばっかりじゃん。…でも、みんな実力派。


さて、映画ですが、昭和ガメラ世代も、平成ガメラ世代も、今どきの世代も、みんなそれぞれ楽しめる構成になっています。ただ、あくまでも、“子供の目線” でお楽しみ下さい。


歴代の怪獣映画って、どうしても “大人の都合” が先走ってしまって、説明くさくなってしまうのが、子供にとって難点だったように思うんです。でも、この映画では、極力そういう部分を削りに削って、子供が体験した事実だけを中心に構成されています。


当然、普段偉そうな事ばかり言って、肝心な時になると、大人はオロオロしてちっとも役に立たない。やっぱり僕ら子供ががんばらなくっちゃね…っていう気持ちにさせる演出がニクい。


中盤から後半にかけての、ナンジャソラな展開も面白かった。映画なんだから、何でもやってくれい!


敵役の怪獣、ジーダスはトカゲ系。エリマキも付いているので、わりとゴジラっぽい。しかもハリウッド版に近いかと。着ぐるみに入っているのは女性なので、スタイルも動きもちょっとスマート。


いきなり現れてドギモを抜く登場シーンがいい。見たとたんにわかる悪者顔もいい。いたいけなガメラを執拗に付け回すチンピラぶりがますますいい。オラオラキックもナイスです。


昭和ガメラファンが喜ぶネタのギャグもあります。ヒントは、ギロン。詳しくは劇場でご確認を。


平成ガメラ三部作が素晴らしすぎたので、その後では、いいものは出来ないだろうとふんでいたんですが、なるほど、こういう手があったか…って感じですね。いいじゃん。日本の怪獣映画、まだまだイケますよ。


ただ、一つだけ気になるのは、ガメラ造型のデザイン。はっきり言って、可愛過ぎ。これでは、怪獣としての迫力ゼロ。途中まで本物のカメを使っただけに、デカくなったとたん、思いっきり人間が中で四つん這いになっているのがバレバレなスタイル。わかっているけど、ちょっとなあ。


デカくなったら、少しはいかつい顔にしてくれよって感じ。童顔のままだと、かなり変。女優の安達祐美が、顔はそのままで、身体だけグラマラスになったような違和感。 …ちょっと違うか。


思い出したのは、鳥山明の「Dr.スランプ」 のアラレちゃんが着ていた着ぐるみ。で、色は茶色。何だか見終わった後に、急にテリヤキチキンバーガーが食べたくなって、モスバーガーに行きました。 …わはは。


ガメラって、ゴジラと違って、子供寄りの怪獣なんですよね。最近まで忘れていたみたいです。だから、大人にはわからない、子供にだけわかる世界があっていいと思うんです。


今どきの子供たちが、この映画を見て、“何か” を感じ取ってくれたらうれしいです。俺たちの世代が感じたものとは違うと思うけど、今どきの子供にしかわからない、“何か” を。それを大人になるまで大切に育てて欲しい。 …自分なりの方法で。


それを、ガメラはやさしく見守っているんだと思います。少年の夢とロマンと冒険心を、そしてそれを実現する“勇気” という力を。


自分が子供だったころの視点と、大人になった現在の視点とを見比べて、フッと小さなため息をつきました。


ゴジラにはない、ガメラだけの魅力。それを決して外さない作品です。 …怪獣映画、バンザイ!




【トイレに行くタイミング】


ガメラを捕獲して、怪しい実験をしているあたりか、子供三人組が病院にたどり着いたシーンくらいがベストかと。まあ、全体的にゆっくり進むので、どこで行ってもストーリーはわかると思いますよ。



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