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3です
結局前半はそのまま0-0で終わった。仮装した観客が面白半分に親指を下に向けてブーイングを飛ばしている。
スコア通りの試合内容ではない。尾刈斗は決めようと思えば決められるシーンが何度かあった。なのにスコアが動かなかったのは、結局尾刈斗にとってもこんな試合はお祭りの一環程度にすぎないからなのだろう。
「ちょっとマックス! あたしのぼうしいらないの?」
ハーフタイムにはレベッカがマックスを怒鳴りつけた。
「どうしていらないときに下がってくるの? フォワードなんだから前で待っててよ!」
「わかってるよ!」
ついつい怒鳴り返してしまった。無駄に走り回ってしまったことくらい、自分が一番よくわかっている。
風丸がいれば、豪炎寺がいれば、せめて半田がいれば。そんなことを思いながら一人でボールを追いかけてしまった。
「でも僕だってボールが上がってこないから下がるんだよ! 悪いのはそっちだと思うけど!」
レベッカがマックスをにらみつけ、年長者のジュードが二人の間に割って入った。
「レベッカ、僕らの合言葉は?」
「…Enjoy to the max」
「そうだよ、楽しめばいいんだ。お祭りなんだから。」
ジュードがマックスの肩に手を置き、マックスはどきりとした。さっきまでキーパーグローブをはめていたはずなのに、ジュードはユニフォーム越しにもわかるくらいに冷たい手をしていた。
だけどその手の感触もジュードのまなざしも、とても優しい。
「そうだよね、楽しめばいいんだよね……」マックスはうなずき、肩の力を抜いた。
「そう、大丈夫、勝つのはあたしたちだから!」
根拠のないレベッカの言葉にもマックスはうなずいた。
そう、楽しめばいいんだ、楽しめば……。
だけど後半がはじまると、またすぐに「負けられない」という思いが頭をもたげてきた。
今度は無理にボールを取りに行ったりはしない。尾刈斗陣内のペナルティアーク付近で試合の流れを注視している。
そうしているとやっぱり後半も尾刈斗に試合のペースを握られているのがわかって、いてもたってもいられなくなる。
助っ人として入ったチームで尾刈斗に負けたなんて、円堂が知ったらどう思うだろう?
豪炎寺が、染岡が聞いたらなんて言うだろう。
サッカー経験が浅いから、なんていいわけにならない。陸上部の風丸はレギュラーに定着してるのに。
気がつくとずるずるとハーフウェーラインをまたぎ、自陣に入っている。
「マックス! 下がらないで!」
レベッカの声がする。
「わかってる……!」
「楽しもうよマックス!」
赤毛を三つ編みでまとめたエレンが歯を見せて笑う。
「うん!」
答えたものの、どうすれば楽しめるのかもわからなくなってきた。
ボールに触れない試合をしてるとき、サッカーはものすごく不安で苦しい。
ピッ
審判が笛を吹いた。ハロウィンチームのスローインだ。
ジャック・オ・ランタンを超えて出て行ったボールをマックスが取りに行く。
「ほら。」
観客の一人がボールを拾って手渡してくれた。
「ありがとうございま…す……」
マックスはその人を見て一瞬ぽかんとした。
バンダナ、前髪、やさしそうな、それでいて意志の強そうな目……
なにこのおっさん! 円堂にそっくり!
「仲間を信じろ、チャンスが一度もめぐってこない試合なんかないぞ!」
円堂そっくりのおっさんは、マックスの肩を叩いてにかっと笑い、そう言った。
「仲間ったって、今日はじめて会ったばっかりなんだけど。そりゃいつもの仲間なら信じてるけどさ。」
「それでも同じユニフォームを着てるなら仲間だ! 今の仲間もいつもの仲間も、みんな信じればいいんだ!」
「……」
無責任な、とつっこみたくなったけど、その人の笑顔を見てると言えなかった。
何も知らないくせに、と思ったけれど、何もかも知っていてそれでも信じろと言っているような気がして、マックスはうなずいた。
どうでした?次で完結です