遅くなりました。 ちょっと少ないですけど。 では
ハロウィンサッカー(2)
「お……尾刈斗中じゃん!」
10時20分。こっそり家を抜け出してグラウンドにやってきたマックスは、対戦相手を見て思わず声を上げた。
「そうだよ、知ってる?」
「知ってるよ、練習試合したことあるし。」
「負けたの?」
「勝ったよ! あの時はかろうじてだったけど、今の雷門なら楽勝な相手だよ。っていうか、君ら小学生でしょ? なんで中学校と試合するの?」
「仕方ないでしょ、うちなんかと試合してくれるとこ尾刈斗しかないんだもん。それにあたしたち別に小学生ってわけじゃないよ。」
言いながらレベッカはマックスをひっぱり、仲間のもとにつれて行った。
「キーパーはジュード。あたしはフォワード。ディフェンスはクリスにカルロス、ザイオンにスター、ミッドフィルダーはエレン、アレックス、ナディアにひろむ。」
レベッカの紹介にマックスはぽかんとしてしまった。レベッカのようなアフリカ系の黒人、ジュードのようなアングロサクソン系の白人のほかに、日本人のひろむに南米系の黒人にヨーロッパ系、アジア系とずいぶん多国籍なチームだ。
マックスがそのことを聞くと、
「ま、近所のインターナショナルスクールのOBにOGってとこかな。」
とレベッカはさらりと言った。OBって、卒業してないだろ? 変なボケ。
「それでマックスはどこができるの?」
「僕は一応フォワード。トップ下もできるけど。」
一応とつけたのは、染岡と豪炎寺がいるからあんまりトップで使ってもらえないせいだ。円堂の考えに文句はないけど、たまにじゃあなんで僕に9番くれたの? って聞きたくなる。
「ちょうどいいってことね。」
「うん、勝てるよ。尾刈斗なら。」
マックスは換えたばかりの靴紐をぐっと結びなおした。
ぼうしのため、というだけじゃない。雷門の9番として、尾刈斗くらいには勝てないと!
一番街チームとやったときのグラウンドは、今日はずいぶん違う姿を見せていた。
オレンジのかぼちゃをくりぬいたジャック・オ・ランタンがぐるりとピッチをかこみ、足元からグラウンドを照らしている。よくこれだけ集めたなぁと感心してしまう。
観客たちはその周囲に陣取って好き勝手にしゃべったり硬そうなパンとワインで宴会をはじめているのだが、その観客たちも仮装をしていてなかなか見ごたえがある。
ゾンビに吸血鬼、バンシーにフランケン、ただのゴスロリもいればスパイダーマンもいる。サッカーを見るというよりお祭りに来てるんだろうな、この人たちは……。
マックスはそんなことを思ったが、両チームがグラウンドに現れるといっせいに歓声があがった。
尾刈斗はいつもの紫のユニフォーム、対するハロウィンチームはやっぱりハロウィンを意識した黒とオレンジのユニフォームだ。
ピィッ
異様に背の高い主審のホイッスルが吹かれ、ハロウィンチームのボールでキックオフ。
マックスは真っ先にハーフウェーラインを飛び越え、レベッカにボールを要求した。足元で受け、ドリブルで前に出る。
が、目の前に現れた八墓にカットされてしまう。
「お前、どこかで見たことあると思ったら雷門の選手だろ。」
「そうだよ。」
「こんな時間にこんなところでサッカーなんて不健康だぞ。」
ボールを武羅渡に回しながらからかうように言う。
「そっちこそ。」
言い捨ててマックスはボールを取りに下がる。しかし、
「マックス! あんまり下がっちゃだめ!」レベッカから声がかけられて一瞬立ち止まった。
フォワードだから前線でボールがあがってくるのを待てと言うことなんだろう。
「そりゃ、雷門だったら中盤は宍戸や少林に任せるけどさぁ……」
歯噛みしてしまう。体格差のせいか単純な実力差かその両方か、ゲームはマックスの思ったようには進まなかった。
「無理だよ待ってるだけなんて!」
マックスはレベッカに怒鳴ってボールを取りに行った。
だけど勝ちたいという気持ちとは裏腹に、マックスは完全に空回りした。
スターが取れるボールを奪ってしまったり、ナディアに出されたパスを勝手に拾ってしまったり、その一瞬はマックスがかっこいいのだけれど、次のプレーにつながらない。
周りが見えていないからボールを取った後パスをすればいいのかドリブルをすればいいのか、パスをする相手がどこにいるのかがわからない。
「こんなところで遊んでるなんて余裕だな。それとも雷門はクビになったのか?」
「うっさいなぁ!」
いつのまにか最後尾まで下がってたマックスを、年下の幽谷があざ笑う。
あせった。
いっしょに練習したこともない急な助っ人だから無理もないことかもしれない。でも、雷門でプレーしてるときには感じたことない孤独が、焦燥感になってマックスをさいなむ。
あせればあせるほど余計にボールを持とうとして、マックスは中盤を走り回り前線にはほとんど上がれなかった。
どうでした? コメントよろしくお願いします。