「参謀本部編纂の地図をまた繰開(くりひら)いて見るでもなかろう、と思ったけれども、
余りの道じゃから、手を触るさえ暑くるしい、旅の法衣の袖をかかげて、
表紙を附けた折本になってるのを引張り出した。
飛騨から信州へ越える深山(みやま)の間道で、
ちょうど立休らおうという一本の樹立(こだち)も無い、右も左も山ばかりじゃ、
手を伸ばすと達(とど)きそうな峰があると、その峰へ峰が乗り、
巓(いただき)が被(かぶ)さって、飛ぶ鳥も見えず、雲の形も見えぬ。
道と空との間にただ一人我ばかり、
およそ正午と覚しい極熱(ごくねつ)の太陽の色も白いほどに冴え返った光線を、
深々と戴(いただ)いた一重の檜笠(ひのきがさ)に凌(しの)いで、こう図面を見た。」
天生峠
こんばんは
泉鏡花の「高野聖」
初めて読んだ時は 衝撃的でしたが
とても とても
おもしろい作品です。
申し訳ありませんが、あらすじは 省略します。
ところで‼️
ヤラレタ
いつもありがとうございます