「鮎竿はなんでも知っているので売らないでください。(仮)~その⑨~」 | 鮎釣り師Kuuの 今日は何 食う?

鮎釣り師Kuuの 今日は何 食う?

2015年6月1日より鮎釣りに遅過ぎるデビュー☆
鮎釣りの絶滅を危惧し、なんとかしたくて、
2024年、鮎釣りのでてくる映画「鮎、虹の空へ」を製作。
なんとかなれーっ!精神で挑む日常を綴るしがないブログ。

続きで~す。
 
 

⑰海部川、裕子の鮎釣りポイント

  少し上流に向かって歩いている裕子。その先に見覚えのある鮎釣り師が竿をだしている。

 

裕子「あら、もしかして、朝の・・・。こんにちは~。この辺りに入らせてもらってもよいですか?」

 

  身振り手振りで上の釣り人に挨拶をする裕子。

  (どうぞどうぞ)といったジェスチャーをする釣り師。

  そろりそろりと鮎釣りを始める裕子。しばらく竿をだすもなかなか釣れない。

  手元に囮鮎をよせてきて錘をつけておくりだす。

裕子「ごめんねえ、ちょっとがんばってきてねえ~。」

鮎竿「おいおい、そりゃちょっと酷やのお。弱ってから錘つけるとは。」

裕子「だってえ、もう元気な囮鮎いないのよお。真夏じゃないからって油断してたわ~、

  水少ないところに曳船浮いちゃってた・・・」

鮎竿「やれやれ、根ガカリさせないように気をつけるんだぞ」

 

  根ガカリさせて四苦八苦する裕子。なかなか外れない。

  じりじりと沖に近づいていく。

  上から走って来る鮎釣り師良男。ばしゃばしゃと根ガカリポイントに入って外す。

良男「ダメじゃないですかあ~、危ないですよ。」

裕子「すみません、ありがとうございますありがとうございます。・・また助けられてしまいました。」

良男「わははは、何かの縁ですかねえ~。あ、ここポイント荒らしてしまったので少し休みましょう。」

裕子「あ、は、はい。そうですね。本当にすみません、せっかく釣れてらしたところでしょうに・・・」

良男「いやいや、大して釣れてやしませんよ。お近くの方ですか?私は毎週のようにこの川で遊ばせてもらってます。」

裕子「…近くなんですけど、すごく久しぶりなんです。」

 

  担いでいた鮎竿を持ち直してしみじみ眺める裕子。

  しばし身の上話をするふたり。

  再びそれぞれのポイントに立ち、鮎釣りをする。

  穏やかな表情の裕子。いつの間にか姿がみえなくなっている良男のいた上流川原。

  だんだんと陽が傾いていく。

 

鮎竿「・・・もうワシの出番はなくてもよさそうだな。」

裕子「えっ?」

鮎竿「あいつは良い鮎釣り仲間になるだろう、あの威勢のいい嬢ちゃんもな。

  ・・・仕掛けも針も一生分あるんだから、せいぜい楽しんでおくれよ、元気に・・・な。」

裕子「待って!待ってよ!!、ねえまだ聞きたいこといっぱいあるんだから!!」

 

鮎竿「・ ・ ・ 」

 

  ほろりと裕子の頬を伝う涙。ぎゅっと鮎竿を握りしめる。

  変わりなくとうとうと流れる川の水。

  西陽に映し出される裕子の影。下で手をふっている小さな空の姿。

  竿を仕舞い、歩き出す裕子。

 

 

 
 

 

 

 
 
 
 
 
 

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