前回のレスポールデラックスの改造ブログでボリュームはBカーブが好きであると書いていますが、実は色々な要因で直線的変化をしないのです。

そもそも、人間の耳は良くできていて囁き声から大音響ライブまでとりあえず受け入れられますが、電気的にレベル変化を数値にすると対数的になっています。要するに頭のなかでコンプレッサーが働いているようなものです。

直線的に電圧が変化するBカーブは中間位置では正しく50%の出力になるはずが、人間の耳には中間に聴こえないのです。だから対数的に変化するAカーブが一般的に使われています。

ところがBカーブをボリュームに使ったときアンプなどの受け側の影響で実のところ若干Aカーブ的な変化になるのです。机上計算ですが、どんな減衰特性なのかがわかります。


上の図はピックアップにポットを付けてアンプに接続した回路図です。

ピックアップは5kΩ、ポットは250kΩ、アンプの入力インピーダンスを1MΩとします。ピックアップは5kΩの出力インピーダンスを持った音源と仮定できます。因みにインピーダンスとは周波数成分を考慮した抵抗値のことで、ここではただの抵抗ということで考えています。

最大ボリューム位置と中間位置のレベルを計算してみます。最大位置では音源から5kΩを通過して250kΩでGNDに落とされアンプ入力の1MΩでもGNDに落ちています。要するに250kと1Mの並列抵抗値と5kの比になります。

結果は-0.02%で若干減衰していますがほぼ100%です。

次に中間位置のレベルを計算してみます。今度は5kと250kの半分である125kを通ってから125kでGNDに落ちています。アンプ側も1MでGNDに落ちています。したがって、125kと1Mの並列抵抗値と5k+125kの比になります。

結果は46%です。すなわち、中間位置に合わせてもまだ半分の音量に達していない訳です。緩いAカーブ的な変化をしています。まあ、このレベル差を聞き分けることができるとは思いませんけどね。

仮にアンプ側の入力インピーダンスが100kだったとすると中間位置で30%となり、いい感じのAカーブになりますが、高域も一緒に減衰することが殆んどです。ギターをディレイエフェクターなどの入力インピーダンスが低いものに直接挿すとまろやかな音になるのは出力インピーダンスに対して入力インピーダンスが低いからなんです。


ボリューム位置でギターの出力インピーダンスも大きく変化します。これも机上計算できます。

最大位置ではピックアップの抵抗のほぼ5kΩですが、中間位置では130kΩになります。ボリュームを少し絞るとノイズが増えるのはこれの影響で回路が高インピーダンス状態になり外部のノイズが飛び込みやすくなるからです。
ついでにトーン回路の影響をみてみます。トーンは250kとコンデンサを通して高域信号がGNDに落ちているのでボリュームを絞れば絞るほど抵抗値比率によって高域成分がコンデンサ側に流れやすくなり減衰します。中間位置では34%がコンデンサに流れていることになります。これの対策でボリュームポットの3番と2番の間に補正用のコンデンサを入れているのがよくありますよね。

これらはあくまで机上計算なので実際とは少し違うかもしれませんし考え方が間違っているところもあろうかということで、参考程度にしてください。

電気系の人間はこんなことを考えながら日々ギターを弾いておりますが、悲しいかな演奏技術には全くプラスになっておりません。