「RE_PRAY」を現地で3回見たし、録画はそれこそ何十回と見た。
何回見ても、見る度に感動と発見があるのだけど、今回は、それぞれのプログラムの好きなところを書いてみたい。
「いつか終わる夢-original-」
「RE_PRAY」最初のプログラム。
現地で見るときはいつも、生の羽生君のスケートに感激して、プログラムの世界観というよりは、スケート技術への注目が勝りがちだった。
アラベスクのような姿勢でゆっくりとリンクを縦に滑るシーンがある。
たまアリ初日は、その姿勢を保ちながらこんなにスピードを落として滑れることに驚いた。
テラサの固定カメラを見ると、軸足が最初は膝から少し曲げてあり、途中でまっすぐになっていることに気付く。
足かえをしても同じ。
最初から軸足をまっすぐにせずに、曲げた状態から伸ばす。
それによって、単調さがなく、より深い思いを感じさせる。
そして、このプログラムの中で一番好きなのが、アラベスクの最後にY字のように右足を高く上げるところ。
素晴らしいポジションなのだけど、照明が暗いので、いつもかろうじて見えるくらい。
現地でも録画でも、目をこらして見る。
最後は氷に何かを伝えるかのように手で触れる。
この手をアップにしていただいて、ありがたい。
「鶏と蛇と豚」
このプログラムは見どころ満載で、細かく書くと文字数がすごいことになってしまうので、特に好きなところを。
プログラムの前半から中盤までずっと、ランウェイのような細長い空間での演技が続く。
そして最後のほうに、その空間から解き放たれたかのように、一気に加速して飛び出す。
空間を引き裂くかのようなイナバウアー。
かと思うと、もとのランウェイにもどってピタッと止める。
この加速と静止に惚れ惚れとする。
「Hope&Legacy」
このプログラムは映像との融合が素晴らしいので、天井席から見た、たまアリ初日がよかった。
巨大な月と静かな海面。
「地球」とか「生命」というものがすごく感じられた。
「阿修羅ちゃん」
たまアリ2日目、このプログラムが登場したときの現地のボルテージはすごかった。
とても愛されているプログラム。
横浜千秋楽では余裕すら感じさせる振付と滑りで、完全にこのプログラムを掌握している。
セルフコレオだけあって、滑られる度にアレンジが変わっているのも見どころだと思う。
「Megalovania」
無音から始まる。
音を響かせることに特化した滑りというのも貴重。
そして繰り広げられるスピンのすさまじさ。
軸足が移動するパンケーキスピンが好きなのだけど、このプログラムでも効果的に入っていた。
そしてキャメルスピンの姿勢の美しさを現地でも堪能した。
6分間練習
ここで会場の照明がクリアな白に変わる。
それまでの、暗闇の中に羽生君だけが照らされていた世界から一変する。
そして、この瞬間こそが、待ち望んでいたものでもある。
羽生君のICE STORYでしか現れないもの。
現地では、見守る側の集中力もすごかった。
ジャンプが決まる度に歓声と拍手が上がるのだけど、それ以外の時間は驚くほど静か。
その一身に、会場中の視線と集中を集める。
それができる唯一無二のスケーターだと、改めて感じた。
「破滅への使者」
たまアリ現地で初めて5連続ジャンプを見た時には、驚いた。
たまアリ初日のジャンプ構成は、3A1Eu3S1Eu3S。
特に、後ろに2回も3Sをつける。
これは競技時代にも見たことがない構成。
(その後の公演で、本来の構成は4T1Eu3S1Eu3Sだったことが判明した)
フリーに限りなく近いジャンプ構成。
それを前半の最後にもってくる。
より難しいことに挑戦する。
もっと構成を上げられる。
もっと上手くなる。
羽生君がスケートをする限りは、このアスリート魂が芯にある。
余談だけど、「RE_PRAY」のなかで振付師が判明していないのが、「Megalovania」と「破滅への使者」。
どちらも羽生君のセルフコレオのような気がするのだけど、どうだろうか。
ここから、後半。
「いつか終わる夢;RE」
このプログラムはいつも、その表情に引き込まれる。
振付は「いつか終わる夢-original-」と(最後のポーズ以外はおそらく)全く同じなのだけど、こんなにも違う世界観を表現する。
清塚さんが奏でるピアノ曲というのも大きい気がする。
ピアノの音というのは、羽生君のなかで特別なのかもしれない。
「天と地のレクイエム」
横浜初日を現地で見た時、スタートポジションにつくまでの動きが違っていたように思えた。
通常のプログラムでは前向きに滑ってきてスタート位置につくけど、この時は片膝をついた姿勢で後ろ向きに入ってきたような気がする。(しかも回転していたような)
佐賀、横浜では、最後のスピンがとても印象的。
パンケーキスピンのキレと回転速度がすごい。
このプログラムにかける熱が伝わってくるよう。
「あの夏へ」
たまアリ現地では、かなり上の方の席だったので、プロジェクションマッピングがよく見えた。
ある場面では、荒々しく水が襲ってくる。
ある場面では、おだやかな水面の上を滑っているよう。
「水」というイメージと切っても切れないプログラムなのだろう。
見どころ満載のプログラム。
衣装の一部を持つことによって、天に昇っていくかのように見えるスピン。
リンクを大きく使うスパイラル。
仰向けの姿勢から腹筋のみの力で起き上がる振付。
このプログラムのコンセプトを作り、衣装と振付を依頼してこの世界観を作り上げた羽生君の企画力は、本当にすごいと思う。
「春よ、来い」
羽生君のプログラムの中で、人前で滑られた回数としては最多になるのではないだろうか。
特に、プロになってからの単独ショーや主催ショーでは皆勤。
その時々の、羽生君の思いや願いを投影するかのようなプログラム。
特にそれを感じるのは、終盤のハイドロ。
その瞬間を愛おしむかのように、深く深く沈み込んで氷に近づくハイドロからは、「魂を込めて滑りを置いてきた」という羽生君の言葉が感じられる。
「RE_PRAY」は本当に素晴らしい公演だった。
終わってしまったのが寂しくはあるけれど、おそらく羽生君は次に向かって歩き出しているのだろう。
その歩みをリアルタイムで見ることができる幸せを改めて、かみしめている。