美女図鑑(ケネス・クラーク「フェミニン・ビューティ」) | トトやんのすべて

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猫写真。
ブンガク。
および諸芸術作品への偉そうな評論をつづっていくブログです。

ケネス・クラーク卿の「フェミニン・ビューティ」

を紹介いたします。

つまり、ですな。

「西洋美術は『女性美』なるものをどのように表現してきたのであろうか?」

という本。


まー、ようするに「美女図鑑」です。

これは飽きないです。

表紙がティエポロというあたりも通好みな気がするね。

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序文がすこぶるよいのです。

やがて私は、昔も今も、美には、古典美と性格美という二種類のものがあることに気づいた。古典美は、古代ギリシアにおいて頂点に達したもので、シンメトリーと、ある一定の人体比例と、整った目鼻立ちを基礎としている。性格美の方は、目鼻立ちに関してもっとずっと自由で、上向きに反りかえった鼻や小さな輝く眼でも、それが容貌全体に生気を与えるものであるなら、喜んで認めようとするものである。

(メルヘン社「フェミニン・ビューティ」7ページより)


ようするに「美」には二種類あるんだって。

「古典美」

「性格美」ですって。

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まあ、このように、古代ギリシア…から、

(古典美の世界ですな)

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色気のないゴシックを経て…

(膨らんだおなか、とか小さな目、とか「性格美」ですな…)


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輝かしきルネッサンス絵画の登場。

左、レオナルドの「棒尺の聖母」

右、ポライウォーロの「若い婦人の肖像」


女性美の観念は、イタリア・ルネッサンスにおいてその最も完璧な勝利を示した。それは18世紀においていっそうの広がりを見せたとは言えるかもしれないが、しかし、ルネッサンス期におけるほどの偉大さに達することは遂になかった。

(同書14ページより)


ただし、帝王レオナルド&ミケランジェロ

この二人はガチガチのホモなので、この本では当然扱いが少ない。


じっさい、上の「棒尺の聖母」みてみるとよくわかるが、

ほんと女にキョーミなかったんだろうな。

(モナリザなんかもそうだよね)


対する右ページのポライウォーロ…

なんとまあ生き生きした描写。美容院帰りの生意気そうなお嬢様、という感じ。

ぜったい将来の旦那は尻の下に敷かれるな。

クラーク卿のいう「古典美」と「性格美」のバランスの良い融合・・・


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トマス・ピンコが個人的に一番好きなのは、彼女↑


わかってますわかってます。

美術的な価値とかはそれほどある絵じゃないっす。

「モデル勝負」みたいな絵。でも好き。というかこのモデルが好き。

上野の都立美術館で…テート・ギャラリー展とかなんとかで

実物を一度みた、ということもあるんだが…

もう、かわいいよね。ぽってりした唇とか。


ジョージ・ロムニー《キルケーに扮したハミルトン卿夫人》

ロムニーは、1781年、魅惑的な美しさに溢れるエンマ・ハミルトンと出会い、その美貌の虜となって、繰り返し彼女を描いた。彼はしばしば、この絵の魔女キルケ―の場合のように、神話の人物や歴史的人物に扮した彼女を描いている。

(同書131ページより)


ロムニー君、コスプレ好きだったのね。

もし現代人だったら、セーラー服着せたり、メイド服着せたり色々やったことでしょう。オホホホホホ…


ちなみにモデルのエンマたん…

あのネルソン提督の愛人だったことで有名。セレブ好き美女ですね。

(ネルソン提督…ナポレオンの艦隊をやっつけた偉い人)


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左、ブロンツィーノ「ヴィーナス、キューピッド、時、狂気」

なんかタイトルがマニエリスムしてます。

ていうか、キューピッド君、こら!

その右手!その卓越したエロテクニック!

もーう、指の股で乳首つまんじゃって!なにやってんすか!


右、ミケランジェロ「神々しい顔」

いったでしょ、色気ゼロなのよね。

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19世紀、おフランスにまいります。


左、テオドール・シャッセリオー「エステル」

右、アングル「ドーソンヴィル伯爵夫人」


大学の美学の授業で…

アングルってのは「タマゴ」なのだ、と教わった。

なるほど、顔がタマゴ、腕も、ふっくらした手も、体型もタマゴ…

ご丁寧に、背景の壺もタマゴなんだよな…

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20世紀に入ると写真が出てまいります。


左、ご存知、グレタ・ガルボ…

右、マレーネ・ディートリッヒ…


偶然(?)レズ疑惑のある二人なんですが…

(真偽のほどは知りません、いや二人がつきあってたとかじゃなく…)

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写真部門だと、個人的に一番好きなのは…↑

ヴァージニア・ウルフなんだよな。

「燈台へ」とかめちゃくちゃ好きなんだけど…


あのね「燈台へ」ってのは彼女の小説です。

女優さんとかじゃなくてこの子、小説家センセイですよ。


クラーク卿の解説。

後にレオナード・ウルフの妻となったヴァージニア・スティーフェンスは、きわめて個性的な美貌の持主であった。その美しさは、古典的とは言えないにしても、彼女の感受性と創造的知性とを完全に表現している。

(同書185ページより)


ですと。

「性格美」の極致、でしょうか。

あ、そうそう、ヴァージニア・ウルフもレズだったっけ。

不毛な片思いだなぁ…人妻だし…


というわけで…結論。

エンマ・ハミルトン、ヴァージニア・ウルフ…

僕は英国美人が好きらしいっす。