昼飯はベンチに座ったまま食べる。嫁は江南町のローソンで買ったもの。俺はいつもの西鉄ストアのかしわ飯弁当。ここで、一回目の駐車券に判を押して貰う。二回目は、めいどりーみんの一回目のライブが終わったあと、13時半頃、一度出てまた入って駐車券を取る。  

 クーラーボックス、他の人の迷惑にならないように、俺の足元に置いた。この時間、まだ、三列目以降のベンチは空いている。

 嫁が突然、「警察が来とるよ。何か事件でもあったん?もしかして万引き?」

 警官が五人、広場に面した二階の通路を駆け足で慌ただしく移動していく。中三女子も興味あるんかな?と観察したが、ないようだ。と、途端、バタバタと足踏みしだした中三女子、「ヤバい!ヤバい!かわいい!萌え死ぬ!」

 おっと、めいどりーみんがやって来た。時刻は12時前。俺もつい、「かわいい!!」

 いつもの男女の運営も姿を見せる。

 

 ここで、俺にはちょっと不安が過る。中三女子ちゃん、コールするとき結構足をばたつかせるんではないか。すると、このベンチが揺れる。動画の画面がブレる恐れが。コンパスか博多ORIHIMEのときだったと思う。俺の右横に座ったヲタクがコールでペンチを揺らしてくれて、俺はひやひやしものだったが、撮った動画を見たら、ブレてなかった。ラッキーだったが、いつもこう運がいいとは思えない。

 

 暫くして、中三女子ちゃんの待ち人がやって来た。マスクはしていなから容貌が丸分かりだ。同級生のようだ。かわいい。

 中三女子ちゃん、「家出るとき何か言われたぁ?」

 友達、「バレそうでヤバかった」

『めいどりーみん見にチャチャタウンに来るんにヤバいってどういうこっちゃ?』 

 二人とも、ちゃんとペンライト、携えて来ていた。東側の、川沿いの道に出る通路の方に行って、コールの練習もやっていた。

 

 めいどりーみん、前回去年の7月のときも、チャチャタウン小倉のステージでは、リハーサルで運営の女性の指導のもと、入念な打ち合わせをやっていた。11月の企業祭のときはリハーサルやってなかった。

 と、メンバーがステージに上がった。中三女子ちゃんたち、会長と同じく、すいちゃんの熱狂的ファンのようだ。

 声を限りに、「すいちゃんかわいいよ〜」と、声援を送っている。

 俺、前回、リハーサルをちょっとたけ撮ったような気がするが、消した。今回もスマホを構えた。後ろのおいさんも、スマホを構えて撮り続けている。ならば俺もと、撮り続けた。念入りなリハーサル、十数分あった。本ステージは20分前後だから、リハーサルもユーチューブに上げておくか。ヲタク、喜んでくれるかも。かわいいみらいちゃんとすいちゃん、出来るだけ多くの動画を遺しておきたい。

 

 空を見上げたら、青空が見える。助かったぁというのが正直な感想だ。ほんと、二週間天気予報では変わらずずっと雨予報だったから。客席とステージには屋根があるから、少々の雨では中止にならないとは思うが、客席の方の天蓋は、全ては覆っておらず、後ろ半分のベンチは濡れる。座っている客もかわいそうではあるが、客席に動揺が見られれば、めいどりーみんメンバーのモチベーション、確実に削がれると思うから。

 

 そして、いよいよ始まった第一ステージ、客席のボルテージは爆上り、みらいちゃんコール、すいちゃんコール、凄まじい。昨日のアイDream TEAM LOVEに勝るとも劣らないコールの嵐。違うのは、その中の半分は熱狂的若年女性ファンだということた。

「あー!よっしゃいくぞー! タイガー!ファイヤー!サイバー!ファイバー! ダイバー!バイバー!ジャージャー! (ファイボー!ワイパー!)」

 俺の右横の中三女子たちのコール、まるで耳を劈くほどだった。あまりの大音声に、もしかして、動画に悪影響を及ぼすかもと心配したが、ユーチューブに直ぐ様投稿して、再生してみたら、良い香辛料となっていた。いかに、めいどりーみんが女性に人気があるかを示す、バロメーターと化していた。

 第一ステージの一曲目は『夢の熊さん』

 定番コールは、「けんけんぱけんけんぱ、けんぱけんぱ、けんけんぱ。熊・熊・熊・熊‥‥」

 これに新曲を二つ挟んで、観客の熱狂が最高著に達した最後の四曲目は勿論、『ドリーミンバスボート』

 定番のコールは、「はいかわいい!」「はいかわいい!」

 曲のインターバルでの、「言いたいことがあるんだよ。やっぱりみぃとはかわいいよ。好き好き大好きやっぱ好き。やっと見つけたお姫さま。俺が生まれて来た理由、それはみぃとに出会うため。俺と一緒に人生歩もう。世界で一番愛してる。愛してる

 

 因みにこのコール、どんなアイドルにも有効だ。福岡県での人気ナンバーワンアイドル、愛Dreamのコールにも使われている。俺の、愛Dream in チャチャタウン小倉(24/4/27)を見て貰えば分かる。

 

 この中三女子ちゃんのコール、本当に凄まじかった。声を振り絞る、あらん限りの声という表現では物足りない。こんな小さい身体のどこにこれだけのパワーが潜んでいたんだというくらいのコール。まるで命を掛けてるような感じ?

 中3女子ちゃんの腹の底から絞り出すような大声、彼女の自発的行為だ。ふと、思い出したのは、俺らが高校一年のときの体育祭での上級生たちによる説教。ぞろぞろと教室に乗り込んで来て、大声での自己紹介を強要した。

 男女構わず、「声が小さい!お前は三年の俺らをなめとんのか!」

 俺は含み笑いを漏らす。昭和48年、軍国教育的の残滓がまだ残っていたあの時代あの場所に、もし、この中三女子ちゃんが居たら、そのか弱さからは想像も出来ない声のデカさに感動した上級生たちの反応はこうだろう、「おう、一発合格じゃぁ。男子、お前ら女に負けて情けないぞ。ちょっとは見習えや」