このゴールデンウィーク、俺ら夫婦は地元に留まる。現役ならまだしも、今年で七年目のリタイヤ人生、地元が一番良い。っていうか、イベントが目白押しだから、遠出する必要がないだけだが。

 

 今現在、5月3日の11時半、門司港レトロ中央広場のステージ前で、門司港レトロポップスライブの開演を待っている。俺ら夫婦が一ヶ月に一度、楽しみにしている門司港レトロポップスライブ、この5月には何と、二回も開催される。

 一回目はこのゴールデンウイーク海峡フェスタで、二回目はいつも通りの第三日曜日で、5月は19日だ。

 

 明日4日は何もないので、俺ら夫婦にはいつもの一日だが、5日は関門海峡ミュージアム前広場で愛Dreamのミニライブ。そしてゴールデンウォークのトリは、6日、チャチャタウン小倉での、待ちに待っためいどりーみんの、11月の企業祭以来のご当地アイドルライブだ。めいどりーみん、去年の12月、おんぷちゃんが卒業した。人気ナンバーワンのみらいちゃんと、すいちゃんがまだ在籍しているのは救いだ。果たして、新メンバーは誰?

 

 門司港レトロには二ヶ所、安い駐車場がある。門司メディカルセンター前と関門海峡ミュージアム前だ。両方とも一時間100円だが、レトロ中央広場でのイベントなら、勿論、門司メディカルセンター前の駐車場の方が近いので、最初はここを目指した。停める前に一応案内看板に目を通してみると、あれっ、土日祝日を除いて12時間最大500円って、今日は祝日だから除外?10時前に入って5時まで停めていたとしたら700円?

 ここはまずいと、入るのを止めて、関門海峡ミュージアム前の駐車場に向かった。24時間で最大500円で土日祝日の制限はない。ただ、レトロ中央広場まで距離がある。義足の左足にもう一枚断端袋を被せないと歩き難い。ちんたら歩いてレトロ中央広場に向かっている俺に、嫁から機関銃ライン。

 ――今何処?最前列何処が良いか解らん――

 真ん中と返した俺に、

 ――もう早く来ないと無理や――

 ――真ん中でも解らん――

 ――今何処や?――

 ――人が多い――

 ――もう取られそう――

 ――遅いなあ――

 

 まだ開演二時間前、広場に着いたら、嫁以外誰も座ってなかった。嘘つきか。前半分はこの広場備え付けの三人掛け板製ベンチで、後ろ半分は肘掛け付きの樹脂製レジャー椅子だった。う〜、出来たらレジャー椅子の方が良かったのだが、仕方ない。

 

 野外のステージだから、枯れ葉とかが散らばっている。特に、ステージ左横のアカシアの白い花が散乱している。掃除をするのは門司港レトロポップス界のメンバーだ。オリビアちゃんの姿もあってほっとする俺だ。トレジャーボックス、メインボーカルのオリビアが怪我で居なくとも全くめげない強さがあるから。

 こうやって、俺ら夫婦、何もしないでベンチに座って、見知った顔の面々が大変そうに準備するのを眺めるのは何か悪い気がする。せめて、通常の門司港レトロポップスライブの如く募金箱が備え付けてあれば、黙って千円入れるのだが。

 嫁が真面目な顔で、「募金箱はどこに置いてあると?」と訊くから、「今日は海峡フェスタで初めての客が大部分なんに募金箱とか置いたら顰蹙買うわ」

 

 マスクで顔を隠したオリビアちゃん、ステージの掃除の手を休めて客席の方に寄ってきて、俺ら夫婦に気付いて挨拶してくれる。

 オリビアちゃん、「晴れて良かったです。今日は暑くなりそうですから十分に水分取られて下さいよ」

 オリビアちゃんと話せてにこにこ顔の嫁、「あい変らずお綺麗ですね」

「いえ、塗りたくってますから」と、ウィットで返してくれたオリビアちゃん、「今日は新しい衣装で臨みますから楽しみにされてて下さい」と、嫁と握手してくれ、序に俺とも。

 俺は、「新曲もお願いします」

 オリビアちゃん、どうも虫が苦手らしい、「アカシアの木にどうも巣があるらしくて大きな蜂が飛び回ってますから気を付けて下さい」と、数回繰り返していた。その後、ステージに戻って、再び、今度は棒タワシを手に階段辺りの掃除に勤しむオリビアちゃん。