嫁、あいちゃんが数日顔を見せないと、「あいちゃん来んね。あいちゃん来んね」と忙しい。

「あいちゃん何しとるんやろうか?」とかも訊いてくるから、「何度もおんなじこと訊くなや。俺に分かる分けねぇやないか」と突き放す。嫁、悪口言う割には、あいちゃんがかわいくてしょうがないみたいだ。

「普通の女の子はこんなじいちゃんばあちゃんのとこなんて遊びに来てはくれんよ」って、あいちゃん、ただ俺に車で送って欲しいだけなんだが(笑。

 まぁその間の短い時間内に、俺はあいちゃんから貴重な話を聞き出して、『あいちゃんがかわいくて』の記事にする。

 

 ローソンでのコーヒータイムか終わったら、車は左に寄せて枇杷の木の下に停める。嫁は寄せる前に降りる。荷物を取るために車のリヤドアを開けるが、「あいちゃんが来ていつでも乗れるように後ろ整理しとかんとね」

 

 このところ使っているタブレットは、専ら、息子から預かった?XiaomiのRedmi Pad SEだ。バッテリーが8000mAhあるので、一日じゅう使っても、減ってしまって車のシガーソケットから充電という煩わさはない。

 何度も書いたが、俺は息子から十年物のiPadを貰った。バッテリーが悪いというので、14000円、息子が出して交換したが、ほとんど意味がなかった。動画を1時間ちょっと見たら、充電50%まで落ちる。夕方使うために、車でうろちょろする間、車のシガーソケットに差した充電器に繋いで備えなければならない。

 本当は12インチタブレットを買って、早く息子にこのXiaomiを返したいのはやまやまなんだが、まだ踏ん切れない。Xiaomi以外の中華タブレットは当たり外れが酷いから。

 

 昨日も息子の帰宅は遅かった。今日も、もう8時だというのに帰って来ない。帰って来るまで車の中に居ようと思っていたが、諦めた。

 駐車場のJRの土手から生えている枇杷の木の下に、今日五回目の立ち小便をしたあと、家に入って体重測定。朝は66・4だったが、何とか300グラム減ってくれて、66・1に収まってくれた。ありがたい。これで、今日の晩飯もハヤシライスが食えそうだ。

 

 早速パソコン台に着く俺。21時過ぎ、勝手口のドアを誰かが叩く。って、あいちゃんしか居ないじゃん。

 俺は大声で、「あいちゃんちょっと待っとけ」と、スエットの上を着て義足を付ける。

 嫁、「早くせんね。あいちゃん待っとるよ」

 

 勝手口から出た俺は、こんな遅い時間にあいちゃんがやって来たことに関しては何も言わない。俺はあいちゃんの忠実な足だから。それに、息子がまだ帰って来てないことが幸いした。晩飯の準備には取り掛かってなかった。

「おうあいちゃんどこまでか?」

「下曽根駅まで」

 俺は笑いながら、「ほんと嫁があいちゃんが来んって忙しかったわ」と車を解錠して、俺は運転席に、あいちゃんはお決まりも後部座席に。住宅街の路地に車を出す。

 

「あいちゃん喜んでくれや。俺のユーチューブのチャンネル登録者また千人になったわ」

「俺のユーチューブ見てくれたか?」

「見てない」と素っ気ないあいちゃんだが、いつものことだから気にしない。

「昨日チャチャタウンに行って愛Dreamのライブの動画撮ってユーチューブにアップしたんじゃ」

「愛ドリーミン?」

「あいちゃん惚けてくれるじゃん。それをいうならメイドリーミンじゃね?俺が言うたんはあいどりーむ。出てたんはあいちゃんと同年代の中学二年生やで」

 

 住宅街の路地を直進して、大通りに出て右折。

「月曜日からちゃんと学校行けよ」

「月曜日は休みだよ」

「あっちゃぁご免。29日は昭和の日やったな。俺が中学生やった頃は天皇誕生日や」

「パパは帰って来たか?」

「まだゴールデンウイークじゃないしぃ」とあいちゃん。

「えっ、昨日からゴールデンウイークに入ったんやねぇんか。チャチャタウンの愛Dreamのライブで運営が言いよったでよ」

「あいちゃんは5月1日と2日は学校やな。でも休みの真ん中が平日やったらいろいろと困るんよね。俺現役のとき大きな車持っとったやん。ゴールデンウイークは29日から休みで関東以南のいろんなところに家族旅行しよったんやが、息子が1日と2日学校やもんで、関西旅行しよったときもわざわざ一旦小倉まで戻ってまた関西に向けて出掛けて行きよったわ」

「二度手間で金も掛かったわ。ばって現役のときは金があったけんな。最高で680万までいったかいな」

「えっ、猫Gってそんなにお金稼いでたの!」とのあいちゃんの驚きに、俺は、どうだとばかりに鼻を擦る。あいちゃんには見えないが。

「ばって1千万は無理やったな」とトーンダウンの俺。

「ほいで25日に給料貰って翌月の10日くらいには生活費が無くなって嫁平気で金がないってほざきやがるんじゃ。リタイヤしてから分かったんやが、福岡市の妹んちに1ヶ月に1回遊びに行って、姉としての太っ腹なところ見せて焼肉とか寿司とか奢り捲りよったごたるんじゃ」

 あいちゃん、「猫G分からんかったん?」

「分かる訳ねぇわ。仕事が忙しかったけんな。余計な気苦労しとうなかったしよ。でも1回、金払えってクレジット会社から督促が来たんや。その額何と10万円や。即行で俺が銀行から金借りて処理してクレジットカードにハサミ入れさせたわ。あいちゃんもカードで金借りんようにしとけよ」

 

 車は労災病院も交差点を右折して、突き当りの下曽根駅に向かう。

「あいちゃん学校の面白い話ねぇんか。かなえちゃんとかきよのちゃんとか」

「うん。あいかは2組やけど今度から体育、女子は1組と2組が合同でやるようになったん。1組にはSMとぶすえもん(かなえちゃんのこと)がいるじゃん。やから三人一緒になる。対応に困るよ。SMもあいかもぶすえもんとは話したくないからぁ。女先生なんやけど、二人でペア組んでってなって、ぶすえもん一人余って先生に私一人ですけどどうしたらいいですかって訊いてんの。SMめっちゃ笑ってたよ」

 俺はちょっと頭を捻る。

『SMって誰のことや?』

『きよのちゃんのことやねぇか。ほんとあいちゃん紛らわしい。今まできよのちゃんのことSMって姓で呼んだことないし。きよのちゃんと何かあったんか?ばって喧嘩した様子はないし』

「おう、それはかなえちゃんめっちゃかわいそうやったな。ばって一人余るってよっぽどのことやで。ほんと人気ないんやなぁ」

 

「で、下曽根駅から小倉駅に行くんか?」と俺。

「違うよ。苅田の友達の家に行って泊まるんだよ」

 俺は、「おうあいちゃん苅田に友達居ったな。確か、その友達から化粧品貰うって苅田駅まで連れていったな」

 と、下曽根駅に到着。 

「猫Gありがとう」

「おうまたな」