※この書き物は私の独り善がりの妄想話であり、フィクションです。登場する個人・団体名はすべて架空のものです。どうぞご了承下さい。

 今日は俺ら夫婦のいつものルーティンがちょっと変わる。家を出る時間は7時と、一緒なんだが、コーヒータイムに、ローソンのホットカフェラテを飲んで、チョリソーソーセージパンをシェアして食って、数十分、スマホを弄くって時間調整をしたあと、ファミマの駐車場に移動する。昨日まではタブレットでネットフリックスを観たり、俺のチャンネルの音楽ユーチューブを視聴したり出来ていたんだが、今日は時間的に無理だ。 

 そう、今日から新学期が始まる。って、ジジイババアの俺ら夫婦に孫でも居るのかって?まぁこの世に出現するかどうか分からない孫(孫を見てあの世に逝けるかなんてもうどうでもいい。結婚するしないは息子の自由だ。俺は急かすようなことは何も言ったことはない)よりかわいいあいちゃんのことだ。あいちゃん、気持ちを入れ替えて、新学期、ちゃんと学校に行くことを俺に約束してくれた。

 今まで何度も、あいちゃんに、朝ファミマでや待っててとお願いされて、従う度に裏切られてきた俺ら夫婦だ。

 嫁、頻りに、「本当にあいちゃん来るの?また嘘吐かれたんやないん?」と、繰り返す。

 俺は、「もう三年生や。このまま不登校続けたら高校に行けんことくらいあいちゃんにも分かっとるさ。不登校ゆたぼん、まぁ自己責任やが、公立高校落ちて内申書に恨み言言いよったしな」

 

 昨日あいちゃんを小倉駅まで送ってやったときに約束した、待つ時間は、8時15分まで。15分過ぎたらファミマを後にすること、断言してある。

 果たしてあいちゃん、何と8時10分より前にやって来た。まだかなまだかなとじりじりして待っていた嫁、頓狂な声で、「あいちゃんが来たぁ!」

 早速、嫁が左側から乗るだろう、あいちゃんのために整理した後部座席に潜り込む。

 俺は、大袈裟に、「おうあいちゃん!!」

「約束通り三年生からはちゃんと学校行くんやな。感心や」

 俺は直ぐに車を出す。

 しみじみと、「こうやって朝あいちゃん学校まで送ってやるんは1年ぶりくらいやねぇか」に反応したあいちゃん、「そんなにならんよ。半年ぶりくらいじゃね」

 俺はわざわざ首を回して久しぶりの制服姿のあいちゃんを見ることはしなかった。あいちゃんが髪をどうしているのか確かめ忘れた。

 

 ファミマの交差点を直進して、高速高架を右上方に見て沿道を走る。今年の桜の開花は遅かった。高速高架の土手に植えられている桜、中学三年になったあいちゃんの初登校を祝うかのように満開だ。例年だったらもう葉桜なのに。

 通学路は最初の信号を右折する。この時間、登校中の数人の生徒の姿、その内の一人を視線で差して、「あの男子生徒誰やったかいな?」

 俺は、あいちゃんの『根暗の山田じゃん』を期待したのだが、「猫Gヤバい?」とあいちゃん。

 俺は思わず、「誰かヤバい奴でも居ったんか?」

 あいちゃん、「猫Gいつもの曲がったところで止まって」

「分かった」と俺。通学路の住宅の路地の小さな橋を渡った先を左に折れて、あいちゃんを降ろした。

「じゃぁな。勉強頑張れよ」


 2024年6月7日修正