※この書き物は私の独り善がりの妄想話であり、フィクションです。登場する個人・団体名はすべて架空のものです。どうぞご了承下さい。
車は◯◯元町から高速高架下沿いの道を進み、竹馬川の河川道路を遡る。橋を渡って、県道51号線の方に出て、横代を抜ける。
竹馬川河川道路を走りながら、「あいちゃんが1週間ぶりに帰って来てあいちゃんのママ喜びよったか?」
「そんな訳ないじゃん。あいかはママと合わないんだからぁ。今日も喧嘩して出て来たしぃ」
河川道路が終わると、竹馬川に掛かる高良橋を渡って、国道10号線下のトンネルを潜る。
あいちゃん、「猫Gこんな道よく知ってるね」
「俺は裏道王じゃ。何しろ53年の現役時代めっちゃ道覚えたけんな。ありきたりの道通りよったら先輩に言われるんや。裏道知らんと渋滞して時間掛かって忙しいやろうがってよ。北九州のほとんどの裏道は走ったわ」
県道51号線に入る。
俺は話題を提供する、「あいちゃん小学生のときiPadmini持っとったやん。実は俺も持っとったんや。2019年に親友から貰ったんやけど使い物にならんでずっと放っとったんやが、もしかして、弄り方が悪かったんないかって思うて5年ぶりに起動させようとしたら、くれた奴、パスコード入れてやがった。4桁やが、今は6ケタになっとるよな」
あいちゃん、「今でも4桁に出来るよ」
「起動できんなら最後の手段や。初期化や。実は二日前、息子から貰ったiPadのバッテリー交換に言って来たんや。そいでiPadminiの話になって初期化するんにいくら掛かるか訊いたら3900円げな。そげん出すんなら自分でやった方がええわってパソコンにiTunesダウンロードして繋いで初期化して起動してやったわ」
俺はにやっと笑って、「あいちゃん、Aiphoneパスコード忘れて起動できんごとなったら俺が初期化して起動してやるわ」
あいちゃん、「良いし。パスコード忘れることなんて絶対ないしぃ」
俺は、「残念!あいちゃんの個人情報盗み見てやろうって思うたんやが」
って、初期化しないと起動できないのに、個人情報も消えてしまっている。うっかり、アホなこと喋ってしまった。あいちゃんん、俺の矛盾に気付いてないようだ。
「で、動かして見たらOSが古すぎてまともに動かんのじゃ。あいちゃんiOSって知っとるか?今は17までいっとるようやな。あいちゃんのiPhoneは16じゃねぇかいな」
あいちゃん、「あいかのは13だよ」
って、「それ機種の番号じゃん」
「違うのぉ?」
「おう、アップルがiPhoneやiPadのユーザーに提供しとるスマホば動かすソフトウェアのことや。俺のiPadmini、OSがめっちゃ古くてよう、確か、iOS9くらいやったかいな。もうそれ以上バージョンアップも出来んやった。やけんヤフーがダウンロードできんのやけ」
「ヤフーが見れんってかなりヤバいね」とあいちゃん。
「もうシュンとは別れて1週間以上経つが音沙汰なしか?」と切り出した俺に、「全くないよ」と未練のみの字も無さそうなあいちゃん。
「でもシュンとは続いたらなぁ。半年いったんやねぇか」
「うん」とあいちゃん。
車は横代から石田へ。四つ角で信号待ち。右横にはエネオスのガソリンスタンド。
あいちゃん、「猫Gはレギュラー?ハイオク?」
「レギュラーや。この車はレギュラー仕様なけハイオク入れても効果ねぇし。ほらもう去年売つちまったがあの白い車はハイオク入れないかん。やないと本来の力発揮せんけんな」
あいちゃん、「パパはハイオク入れてるよ。調子が良くなったって」
「あいちゃんのパパは金持ちやな。って確かメビウスやったよな。ハイブリットやけレギュラー仕様じゃなかったか?ハイオク入れたも意味がない…、いや元来良い燃費がますます良うなるかもな」
ローソン石田店を過ぎて、左前方に企救中学校が見えてから左折。右手には医療刑務所と少年鑑別所。あれっ?前に、あいちゃんを乗せてこの道を通った記憶が。どこに送ってやったんかいな?
「このまま守恒のサンリブからモノレールの道まで出るぞ。あいちゃん右に行くか左に行くか指図してくれよ」と、案内した俺に、「分かるかな。今来た道全然分からんし。こっちから来たことないしぃ。っていうか前に猫Gに送って貰ったことおるんやけど」とあいちゃん。
「ほんとか?俺は全く覚えねぇわ。その徳力の友達ってインスタか?」
「友達の友達」
モノレールが上を走る国道322号線に出る手前、「右か?左か」
あいちゃん、「う〜ん、右」
左に競馬場を見ながら暫く走って、あいちゃん、「ごめん猫Gこっちじゃないみたい。リンガーハットと…、確かゲオがあったような」
「リンガーハット?ならさっきの道左やと思うぞ。引き返すぞ」
「猫Gごめんね。リンガーハットがあったら教えて」とあいちゃん。
国道322号線、モノレールの守恒駅の交差点の右斜め前にリンガーハット。ということはゲオじゃなくてTSUTAYAだ。ときどき、ビデオを借りに来ていたから。一番最後に借りに来た相当前の記憶は、加山雄三の若大将シリーズだ。家の近くのゲオになかったから、電話したあるのを確かめて、ここまでやってきた。
あいちゃんが左というから従った俺に、「ごめん猫G、言い難いけど…右ぃ…だった…」
『謝る必要なんてない。あいちゃんの忠実な足やからどんどんわがまま言ってええぞってね』と、自虐的な笑みを浮かべる俺だ。
ぐるっと回ってさっきの交差点を直進。
「あれっ?TSUTAYA無くなっとるやん」
あいちゃん、「ここを左」
「ここを右」
アパートの前で、「ここぉ」
俺は、「やっぱここ送って来たことねぇわ」
あいちゃん、「猫Gごめんね」
「おう!」と返す俺は、あいちゃんに一度視線をやって帰途に就く。