俺がスマホを手に入れたっていうか、ガラケーを諦めて、2014年11月発売のソニーのスマホ、エクスペリアZ3コンパクトを手に入れたのは、タブレットを買った1年後くらいだったと思う。

 ガラケーを使い続けた理由は文字の打ち込み方だ。仕事が糞面白くなかった俺は、暇さえあれば、シャープのガラケー、SH01Cからiモードからヤフーブログにアクセスして文章を打ち込んでいた。俺がブログで小説を書き始めたのが48歳くらいだったか、それから5年以上、ずっとトグル入力で打ってきた。スマホに換えてもトグル入力出来ないことはないだろうが、さすがに恥ずかしい。スマホはフリック入力が当たり前だったから。

 

 俺はフリック入力は無理と匙を投げた出来事があった。俺の後輩だった、伊藤が八幡東店に転勤してきて二人で到津のフォルクスでランチしたときだ。

この伊藤、大学新卒で入社して来て、俺が所属する母店の販売一課に配属されて、暫く一緒に働いた仲だ。積もる話もあって、新し物好きの伊藤、もう既にAiphoneを手に入れていた。


 俺が34年勤めた会社MBの八幡東店から10年ぶりに北九州支店の母店に戻って来たのが2012年4月の、俺が53歳のとき。親父が死んだのがその1年前の2011年1月で、俺が52歳のとき。母店から転勤になったのは2002年4月で、俺が42歳のときだろう。

 Aiphone3Gがソフトバンクから日本で初めて発売されたのが2008年7月だから、伊藤がゲットしたとすれば、2008年が2009年辺りだろうから、伊藤か転勤して来たのも、08年か09年金ぐらいだったろう。

 ちなみに、日本で始めて発売後されたアンドロイドスマホは、台湾のメーカー、HTCの「HT-03A」で、2009年7月だ。ほとんど売れなかったとのこと。


 その伊藤、光か輝く?Phoneを俺にひけらかしながら、「このiPhoneめっちゃ人気で手に入れるの苦労しましたよ」と、話題を振ってきた。Phoneの出始め、テレビ番組のアメトークだったか、iPhone芸人という企画があって、俺は、その驚きの性能に驚愕した。楽器アプリを開いたら、ほんと、まるで本物の楽器を演奏しているみたいだった。

 俺は伊藤に最も気になっていたことを訊く、「iPhoneって文字打つときはとうするんか?」

この頃、まだスマホって言葉はなかったと思う。どうしてって、このようなスタイルの携帯電話はiPhoneしかなかったから。AiphoneはAiphone。2010年4月、国内メーカーのソニー、スマホ「Xperia SO-01B」を発売して、攻勢を掛ける。


 伊藤、「フリック入力っていうんです。例えば指で〈あ〉を押したら〈あ〉、その指を左に跳ねたら〈い〉、上に跳ねたら〈う〉、右に跳ねたら〈え〉、下に跳ねたら〈お〉なんです」

 俺はちょっとAiphoneを借りてやってみたが、トグル入力並みの速さと正確さになるには相当な修練の必要性を感じた。

『こりゃ無理やな!』


 1年1年、ガラケー派の俺は追い詰められていく。市場はスマホに席巻されていった。ガラケーメーカーの三菱とパナソニックが撤退して、シャープもついにスマホ市場に参入する。結果、シャープのガラケーのSHシリーズは蔑ろにされていって、俺が持っているSH01Cの後継機種は発売されず、出た新型は機能が落とされていた。

 となると、いつまでも使えるかわからないが、このSH01Cを大事にするしかなくなった。で、考えたのが、もう一つ、中古で程度の良いSH01Cを手にいれること。

 一応ネットで検索してみたが、値段を見て、『足下見てやがる』、アホらしい。考え直して止めた。もうガラケーは諦めるしかない。スマホをゲットしてフリック入力、上達させるしかないと覚悟した俺だ。