※この書き物は私の独り善がりの妄想話であり、フィクションです。登場する個人・団体名はすべて架空のものです。どうぞご了承下さい。
今日は650万円の中古の家を下関に内見に行く約束を緑都開発としている。時間は14時だ。物件の場所は下関市長府満珠町。いつものローティンを守って、11時から、スシローで朝飯兼昼飯を済ませて、燃料を500円分入れていざ下関へ。
緑都開発は東武住販と違って、物件の住所がちゃんと記されているからわざわざ訊く必要ない。グーグルのストリートビューであらかじめ確かめておくことが出来る。
12時には現地に着いた。やはり屋根は瓦ではなくスレートだった。予想通り、色が褪めている。買ったら塗装の必要があるようだ。雨樋、一部切れて落ちている。庭に植わっていただろう木々、全て切られてしまっていて殺風景だ。これはダメだなというのが、外観を見た印象だ。屋内も察するに余りある。
嫁、「まだ1時間あるよ。トイレが困る」というので、一旦下に下りて、セブンイレブンで時間調整。序に、夕方のコーヒータイムを早めに済ませる。小倉には帰ったら即、ウォーキングだから。
13住所半過ぎに現地に戻って、一応駐車場に停めて担当者を待つ、駐車場は軽なら十分だが、車高が高く長い車はきつそうだ。
屋内、やっぱり察した通り、とても食指が伸びそうもない物件だった。
担当者に聞いたら、やはり両親が死んでの相続だった。相続の家はあまり宜しくない。住んでいた爺さん婆さんが死んだのは事実だ。気持ち悪い。今の小倉の俺の家も600万円で買ったが、相続物件ではない。所有者の夫婦、賃貸にして、マンションを買って住んでいて、もて余して俺に買ってくれるように不動産屋を通して懇願してきた。
リフォームはされてないとのこと。もう売り出されて2年を超えていて、最初付けた値段は何と1千万だったとのこと。二階から屋根を見下ろしたら、塗装が汚く剥がれていて、廊下には絨毯が敷かれていて汚い。よほどフローリング、剥き出しのままが掃除し易いのに。この物件は500万まで下がったとしてもパス。
担当者に希望を訊かれたが、俺としては、今住んでいる家の、25年前レベルの中古物件だ。探し続ければ必ずあるとは思うのたが。
夜8時、俺はコタツで不貞寝気分。今日はちゃんが公休だったから早く晩飯を済ませて、小便による体重の減りを期待したかったのだが、中々帰ってこない。と、勝手口をこんこんと叩く音。ちゃんが帰って来たのかなと思ったが、そんな訳ない。こんな時間にもしかしてあいちゃん?義足を外していた俺は、嫁に、「ちょっと見て来い」
「嫌よ」とにべもなく断られたら、こう叫ぶしかない、「あいちゃんかぁ?ちょっと待っとけ。直ぐ出るけん」と俺は、義足を付けて、帽子を被る。
勝手口を開けると、当然のこと、外は真っ黒。左手に立っていたのは想定通りあいちゃん、「おうあいちゃん、どこ行くか?」の俺の問いに、「塾ぅ!」
「分かった。特別につれ行ったる(こんな時間やけど)」と俺。
あいちゃん、「猫Gご飯食べたぁ?」
「まだ食ってないんじゃ。息子がまだ帰った来ん」
乗り込む前にあいちゃん、リヤのフロントのワイパーを下ろしてくれる。
俺は、「おうあいちゃんありがとう。やっとワイパーの下ろし方覚えてくれたな」と俺は笑顔。
後部座席のあいちゃん、かわいい質問、「どうしてワイパー上げとくの?」
「パパは教えてくれんやったか?ワイパーそのままにしとくといつも圧着状態にあって早く悪くなるんや」と、俺は車の屋根を枇杷の木て擦ってギギギと音をたてながら住宅街の路地に車を出す。
枇杷の木というと、どうも今年は生りが悪いようだ。花のつく枝が少なかった。でもその分は前の空き家に育った枇杷の木で補える。前にも書いた気がするが、これらの枇杷の木、この空き家に前に植わっていた枇杷の実の種を俺が吐いた分がここまで育った。元の枇杷の木は、所有者の爺さんに無惨に切り倒された。もうこの爺さん82歳を超えていたと思う。いつまでこの状態で、この空き家があるが分からないが、いつかは売られて、この枇杷の木、切り捨てられてしまうだろう。俺は文句言えない。
住宅街の路地の突き当りを左折して、「あいちゃん、婆さんが理由の分からんこと言よったぞ。あいちゃんがピアス二個に増やしとるってよぉ」
あいちゃんなんか説明していたが、よく理解出来なかったが、「1個だよぉ」
「よな。あいつ目が悪ぃ」と笑う。
「学校始まったんやろ。今日は行ったか?」
あいちゃん、想定通り、「行ってな〜い」
『まっええか』
「来週はちゃんと行けよ」
ふとあいちゃん、「地図付いてたぁ?」
俺は、「地図?おうナビのことか?あいちゃんが仲良し三人組で俺の家に来よるとき(小学校六年生のあいちゃんかなえちゃんきよのちゃん)から付いとるわ」
右折して大通りに出て、「誕生日パーティ楽しかったか?」
「うん」とあいちやん。
「何人集まってくれたんか?」
「三人だよ」とあいちゃん。
俺は、「その中にみーちゃんは居ったんか?」
「いな〜い」
俺は、「今日の塾は何時までか?」
「10時まであるぅ。行きたくな〜い」と弱音を吐くあいちゃん。
「頑張って勉強せいや。やねぇと高校行けんぞ。びって2時間っていうことは1万円の掛かるんか?確かあいちゃん50分5000円って言いよったよな?」
あいちゃん、「分かんない。ママが払ってるからぁ」
マツダの三叉路を右に進路を取る。
「俺今日下関に中古の言えない見に行ってきたんじゃ。写真とは全く違って幻滅やぁ」
あいちゃん、「そんなもんだよ。中古の家なんて」
「特に室内は酷かったな。カーペットに人形の染みがあったぞ」
あいちゃん、「猫G止めてぇ!怖いぃ!」
あいちゃん、ヤンキーで怖いもの知らずのようだが、霊とか超自然現象には弱い。
俺は笑って、「うそぴょ〜ん」
「ところであいちゃん、塾行きだして勉強分かるようにはなったか?」
「分かんない」と情けない答えのあいちゃんに、「2・30年前やったら俺が徹底的に家庭教師やってやってあいちゃん確実に高校入れてやるんやが、俺の時代に比べて数学めっちゃ難しくなっとるけんな。あいちゃんにおしえる前にまず俺が教科者見て記憶呼び覚まさないかんけんなぁ」
あいちゃん、「猫Gの2・30年前って昨日のことだよね」と笑う。
俺は、「あいちゃんとうしても高校が難しいって思ったらパパにお願いして専願にして貰え」
あいちゃん、「専願って?」
「もうこの前教えたやねぇか。この高校しか受けてまそんので入学許可お願いしますっていうんよ。これなら筆記試験は受けんでええ。面接だけや」
あいちゃん、「北九州高校にもあるん?」
「いや公立高校にはない。私立だけや。豊国とか。三萩野にあるかは分からねぇ。だだ豊国やったら校則厳しいけ遅刻や欠席は絶対ダメぞ。卒業出来ん」と俺。
俺は話に夢中になって塾を通り越そうとして、あいちゃん、「ここだよ!」
俺は、「おっとすまん」と若干急ブレーキ。あいちゃん前につんのめる。
「あいちゃん勉強頑張ってこいよ」と励ます。
俺はあいちゃんの高校進学、めっちゃ不安だ。でも何とか頑張ってピチピチの女子高校生になって貰いたい。北九州にある、昔、悪の集りと言われた私立高校三校、軒並み校則が厳しくなって真面目になってしまった。不登校だったらまともな内申書は、中学校、書いてくれないだろう。それで高校とか行けるのだろうか?それにあいちゃんのピアス、通学のときはちゃんと外せるのか?マスクじゃ絶対バレる。直ぐ停学、または退学だ。
出来ることなら女子高校生となったあいちゃんとも今まで通り交流を保って成長を見守りたいと純に願う、ジジイ度がどんどん増して醜悪なビジュアルになりつつある俺だ。