※この書き物は私の独り善がりの妄想話であり、フィクションです。登場する個人・団体名はすべて架空のものです。どうぞご了承下さい。

 俺は話を切り出す、「今通ってきたどデカい柑橘類が玄関前に生っとった家、ヤクザぞ」

「猫Gなんで分かるの」と、あいちゃん乗ってきた。  

 内心、よっしゃ~と俺。

「夏、あの家の前に通るとオヤジ、ランニングシャツ姿で外に出とんじゃ。上半身入墨曝してよぉ」

 高校生、「怖い!」

「オヤジ、娘が一人居るんじゃ。確か歳は俺の息子よりちょっと上っち思うがまだ結婚してねぇごたるな。ばってもし彼氏が出来て家に娘さんを下さいって言いに行ききる男は滅多に居らんめぇな。相当な覚悟と度胸がいるぞ。オヤジ堂々と入墨曝すけんな」

 あいちゃんぼそっと、「そんな感じシュンもあいかのお父さんから受けたみたい」

 俺は、「何かあったんか?」 

「実はね、シュンあいかのお父さんと会ったことがあるん。あいかを送ってくれたときちょうど帰って来てたお父さんと鉢合わせ。『あっ、こんにちわ』って感じでぇ」

「おう!」と俺は相槌を打って、その先を催促する。

「シュン、あいかとの結婚は無理って。お父さんごつ過ぎるってぇ」と笑う。

 俺は、「えっ!シュンも180超えとんじゃなかったんか?」

 あいちゃん、「そんなこと言ったかなぁ」と言葉を濁す。

「なら俺よりは背が高くて175くらいか。やったら、あいちゃんのパパ185くらいあるうえに体格がええけんビビろうな」と俺。

 

 車は竹馬川に沿って、ヤマト運輸の、徳力ー門司線との交叉点目指して走る。

 俺が質問、「俺のは小倉の地の者やねぇけんよう分からんよやけど北九州で一番頭の良い高校はどこなん?」

 あいちゃんの友達の女子高生、「やっぱり小倉高校じゃないかな」

 俺は確か小倉ではなくて北九州と言った筈なんだが、「東筑は?」

 あいちゃんも、「小倉西高は?」

 女子高生、「分かんない」

 俺ふっと、聞き忘れていたことがあった、「あいちゃん制服姿ってことは今日は学校行ったんやな?」

 あいちゃん飄然と、「行ってな~い」

 俺は、「えっ!ばって制服着とんやんか」

 あいちゃん、「起きたとき制服着ただけ」

「あっちゃ~!」と俺。

 

 俺も北九州に出で来てもう42年、今まで人から聞いてきた知識である程度の高校の格付けは出来る。福岡県の北九州地区は第二学区と第三学区に分かれて受験する。

 今は偏差値で高校のランク付けをするが、第二学区1位が小倉高校、2位が戸畑高校で、以下、公立で偏差値が一番低いのが北九州高校だ。でも、北九州高校は公立だから、私立の豊国学園高校に比べれば学費も安く、第二学区の公立高校では一番入り易い。ちなみに、第三学区での偏差値1位は東筑高校だ。

 

「でも小倉高校は推薦でも入れるんよね?」と問うた俺に、あいちゃんの友達の女子高生、「はい」

「でも中学の平常点相当頑張らんと推薦してくれんのよね。俺の知り合いに日明中学から推薦で小倉高校に入った女の子居ったわ。ばって進学したんが香蘭女子短大やったもんで、『クラス担任の俺の評判落とすなよ。小倉高校の恥になるやないか』と嫌味言われたって言よったわ」

 

 ヤマト運輸の交差点を右折して、竹馬川に架かる橋を渡って直ぐ左折。マンションの敷地に沿う道路を抜けて二車線の大通りに出、鋭角に左に曲がって100メートルほど走るとパチンコ屋の三叉路。これを右折したらモールだ。嫁がモールの中に店を構えるクリーニング屋に行くとき止まる安全地帯で二人を降ろした。右側は車道に面しているから、二人とも、荷物を押しやった左側から降りた。

 あいちやん、「お邪魔しました」に、「おう、いつでもお邪魔されてやるわ」