※この書き物は私の独り善がりの妄想話であり、フィクションです。登場する個人・団体名はすべて架空のものです。どうぞご了承下さい。

 車は10号線の湯川辺り。あいちゃん、車外を見て、「あっ友達。二人で歩きよる」と二人組の男子を見る。

「この辺りはNM中校区なねぇよな」

 あいちゃん、「小学校で一緒」

「おっ、そうやった。KZHR小学校は湯川中とNN中に分かれるけんな」

 

 10号線を直進せず、マルショクの交差点を右折して三郎丸の方に抜ける。

「あいちゃんの家は暖房はどうしよん?俺ん家はコタツだけや。もうジジイババアやけんめっちゃ寒いときはコタツに潜り込んで動かんごとしとるわ」

 あいちゃん、「エアコンだよ。あいかの部屋にはない。居間だけぇ」

「一日中つけとったら電気代めっちゃ掛かるやろ」

「乾燥するからつけたり消したりしてるよ」

「俺の実家は長崎県の佐世保っていう町にあるんやが、エアコン、居間と客間と洋室と死んだ親父とお袋の部屋の、おう四つも付けとるわぁ。ジジイババアは金持ちやなぁ。四つ全部つけたときの電気代考えただけてもぞっとするわ」と、俺は運転しながら冗談で身体を震わす。

 あいちやん、「それだったらあいかのおじいちゃんちもだよ。居間とおじいちゃんおばあちゃんの寝室とクニちゃん(あいちゃんの父方の叔母さん)の部屋ともう一つ、四つもある」

「おうあいちゃんのおじいちゃんち霧ヶ丘にあったな。確かに家に大きかったわ」と俺。

「クニちゃんもう実家に居らんのにまだ部屋そのままなんか。確か今長野県に居るんよね」

 あいちゃん、「そうだよ」

「年末年始は帰ってくるんか?」

「分からん。でもクリスマスはラインで話したよ」とあいちゃん。

 俺は、「クニちゃんしぶ(あいちゃんの兄貴)とはどうなんか?まさか無視?」

 あいちやん、「そんなことないよぉ。しぶとも仲が良いよ」

「あいちゃん家族今はアパートやけどおじいちゃんおばあちゃんが亡くなったら実家に引っ越すってこともあるんやねぇか?」には、あいちゃんノーリアクション。

 

 三萩野の北九州市民球場を越えた辺りであいちゃん、変なことを言い出す、「猫Gここから一番近い駅って南小倉駅?城野駅?」

 俺は、「何か突然」

 あいちゃん、「猫Gにはいつも悪いなぁなんて思って」

「で、ここから一番近い駅であいちゃん放って、俺は帰っていいってか。まぁ引き返したら城野駅が一番近いやろうけどよ。正直ここからやったら小倉駅が一番近いし」

 あいちゃん、「そうなん」

「おうそうよ。気にすんなや。いつも図々しいんがあいちゃんやろうが」と俺。

 

 あいちゃん、「昨日はみーちゃんと遊んだよ」

「おうみーちゃんかぁ」と俺。

「映画見に行ったよ。『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』だよ。猫G知ってる?

 おっとここで知らないことがバレたら俺の沽券の関わる。宮崎駿のアメリカでヒットしいるアニメ、「君たちがどう生きるか」と勘違いしていた。

「それ、宮崎駿のアニメよな」

 あいちゃん、「違うよ。ベストセラー小説が映画になったんだよ」

 俺はまだ勘違いして、「アニメの実写版か?」

 あいちゃん、「小説の実写版」

「リバーウォークの映画館行ったんやけど、席を予約しようとしたら、二人並んで取れなくて間に3席挟んだんだよ」

「そげん混んどったんか。その映画人気のごたるな」

 あいちゃん、「うんヒットしてる」

「チャチャタウンやったら並んで座れたんやねぇんか?」と俺。

 あいちゃん、「チャチャタウン遠い」

「でね、間に挟んだ3人どこかの男子生徒みたいで席を代わってくれたんだよ」とあいちゃん。

「そいつら中学生か?」

「分からん」

 

 あいちゃんを送って帰ったその夜、ネットで『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』を検索してみた。