※この書き物は私の独り善がりの妄想話であり、フィクションです。登場する個人・団体名はすべて架空のものです。どうぞご了承下さい。
あいちゃん、今日は珍しく8時14分にやって来てびっくり、「な、何かあいちゃん早過ぎるやねぇか」
「今日から試験なん」
「って期末テストか?」
「うん。それよりG猫信号青」
「おう!」と俺はファミマの側道の交差点に突っ込んで抜けた。
この時間だったらNM中生がたくさん歩いている。あいちゃん、「みんな勉強しながら行ってるぅ」
数人の生徒を車で通り抜けたが、曲がりくねった狭い小坂に差し掛かったところで、「あっ友達!G猫マズい」とあいちゃん。
俺は、「分かった」と今まで停めたことのない、誰かの駐車場か?左に突っ込んであいちゃんを降ろした。
俺はUターンで見逃したが、嫁、「今日のあいちゃんめっちゃ機嫌が良かったね。バイバ~イって手を振ってたよ。やけん私も手を振り返したよ」
嫁、「あいちゃんに猫の話した?」って訊くから、「お前、あいちゃんがファミマで乗り込んだのが14分で下ろしたんが16分やったかいな、そんな短時間で出来る訳ねえやないか」
12時前に自宅に着いた。今日は性的興奮の日。14時前までにはその行為を終えて眠くなった俺はシートを倒して寛ぎの体勢に持っていった。ただ、性的興奮の最中、午前中に試験を終えたあいちゃんがやってきそうな気がしていたので周囲に注意は配っていた。見られそうでヤバかった経験がある。
果たして14時過ぎ、「G猫!」と刺激的な私服に着替えてあいちゃん、やって来た。
俺は起き上がってドアを開いて、「おうあいちゃん。試験勉強はええんか?」
「帰ってからする。ねぇG猫、申し訳ないんだけどぉ、至急小倉まで連れてってぇ。みーちゃんが待ってるぅ」
『小倉までとは珍しいな。今までは下曽根駅か安部山公園駅でそこから電車に乗って市街地まで行っていたが。まぁ俺に気を使ってのことだろうが』
「待ち合わせの時間うちが間違えてみーちゃんがめったゃ怒ってる。その怒り方まるで毛玉みたいなんやからぁ」
俺としては、かわいいあいちゃんに一日に二回も会えたんだからラッキーだ。二つ返事で、「おおええで」と後部座席の荷物を左に寄せてあいちゃんを乗せた。
『小倉か、結構時間食っちまうな。その間、嫁が外に出て来る危険性は?ここは一応報告しておくか』と勝手口を開けたら嫁がパソコン台に居ない。居間のコタツで寝ているかもしれない。わざわざ上がって行って伝えるのも忙しい。もしバレてラインが入ってきたらこう言おう、「今、あいちゃんば小倉まで連れて行きよるわ。ちゃんとお前に知らせよう思うたらパソコン台に居らんやったけんそのまま出たわ」と。
俺は車を出した、あいちゃん、「三毛(猫)がおったぁ」
「そりゃ居るくさ。二匹生まれとるけんな。それよりあいちゃんまだ俺の動画見てねぇんか?」
「今見るよ」とあいちゃん。
あいちゃん、「今日のにゃんず?その子猫狂暴にて?」
あいちゃん、自分のアイホンで見だした。動画の中に俺の声が。
「G猫の声ジジ臭い」
「あいちゃんジジ臭いって俺はジジイやで」
動画の中での、「痛ぇ、ほんとに痛ぇんや。こいつ狂暴」に、あいちゃんが笑う。
俺は、「ほんとにこいつの爪痛ぇんやけんな。こいつにはチビ太っていう名前つけたんやが、見た目全く一緒でメスも居ってそいつにチビ子っていう名前つけてやったわ」
あいちゃん、「G猫再生回数600いってるじゃん」
「おう、一応チャンネル登録者610人やけんここまでは行くんやけど4桁は難しいわ」
俺は、「ところできよのちゃんとはちゃんと話しよるか?」
あいちゃん、「うん今毎日一緒に帰ってるよ」
「やっぱかなえちゃんとは小学校のときのようには無理か?」
あいちゃん言下に、「無理!」
「かなえちゃんのお母さんに嫌われててうちと遊ばんように言われてるみたい。吹奏楽部の保護者の集りがあったときうちのお母さんかなえちゃんのお母さんに睨まれたって」
俺は、「そうか、うちのかなえは小倉高校行って薬剤師になるんやから邪魔しないでっていうことかいな」
あいちゃん、「そういうことではないけどやっぱり小学校のときのことが結構尾を引いてるみたい。かなえちゃんお母さんに全部報告してたみたいだから」
「虐められたとかか?」と俺。
あいちゃん、「あれは小学校四年生のときだったけどかなえちゃんをずぶ濡れで帰したら相当嫌味言われたしぃ」
「G猫の家の風呂場っていつも窓開けたままなの?」
「おう、今は風呂場に家庭ごみ置いとるんじゃ。臭いが籠らんように開けとる。夏場は臭過ぎて我慢できんけポリボックスに入れとるけどよ」
あいちゃん、「うわっ臭そう。うち昨日お風呂入ってない」
「うわっあいちゃんめっちゃ不潔ぅ!」と大袈裟に俺。
「G猫は昨日お風呂入ったのぅ?」
「当然くさ」
去年まだあいちゃんきよのちゃんが小学校六年生で毎日学校から帰って俺の家に猫に餌やりに来ていた頃、俺が二日に一回しか風呂に入っていないとカミングアウトしたらあいちゃんに、「めっちゃ不潔ぅ」とダメだしされた。俺のリアクションはそのときの意趣返しの意味もあった。
あいちゃん、「でも、今日ちゃんとお風呂入って来たからぁ」
俺は、「で、どこであいちゃん降ろせばええんか?」
あいちゃん、「近づいたら言うよ」
『って小倉駅じゃねぇんか?』
あいちゃん、「G猫は遊園地って行くう?」
「おう遊園地か、最期に行ったんはいつやったかいな。息子がまだ保育所んときやなかったかいな。やったら到津遊園地やな。あっ、スペースワールドにも行ったな」
あいちゃん、「G猫はジェットコースターとか絶叫マシンって大丈夫な方?」
「おう、大丈夫じゃねぇ方かもしれんな。ジェットコースター最期に乗ったんは…、あっと福岡の大宰府にしょうもないジェットコースターがあったんやがあれくらいで上がりきって落ちるとき相当ビビったもんな。スペースワールドにあったタイタンは凄いっち聞いたことあるしジュピターはぎしぎしいうてめっちゃ怖いっていう話やな」
あいちゃん、「ジュピターどってことないよ」
「おうそう言えば去年の小学校の就学旅行、あいちゃんたち城島高原やったって言いよったな」
あいちゃん、「うん、あのくらいどうってことないよって頼もしかった男子とグループ組んだんやけどもう勘弁してくれやけんね、幻滅ぅ」
「いやその気持ち分かるわ。女子の方が絶叫系強い傾向があるわ。スペースワールドの60メートルから落ちるタイタン乗ったことあるんか?」と俺。
あいちゃん、「乗ったことあるような気がする」
「スペースワールドご閉園したんは四年前で確かタイタンはその前から休止しとったごたるけんもし乗ったとしたらあいちゃんがめっちゃ小さいときじゃねぇか?」
あいちゃん、「G猫は毛玉と仲がいいやろ。やけん三人で一緒に遊園地行きたいなぁって。でもG猫ジェットコースター乗ったら心臓飛び出るかも」と笑う。
俺は若干むきになって、「そりゃ乗ってみらなわからんわ。っていうより絶叫ジェットコースターがある遊園地って三井グリーンランドか城島高原しかないで」
あいちゃん、「三井グリーンランドって遠いよね」
俺は、「そうやな。ここからやったら城島高原の方が近いかもな。でもあいちゃんきよのちゃん俺を裏切って到津遊園地行けんやったよね?」
あいちゃん、「あそこは動物園で遊園地じゃなくね」
俺は口を尖らせて、「楽しみにしとったのによぉ。確か前日あいちゃんが俺の家に8時まで居て俺らが帰ってくるんば待っとって、あいちゃんのお母さんが心配してきよのちゃんのお母さんに電話したことが発端やったよな。そいで根掘り葉掘り訊かれたきよのちゃんがあいちゃんのせいよぉって怒ったんやったな」
『俺と一緒に絶叫マシンに乗りに行くって簡単に言うけど保護者が許してくれる訳ねぇし、嫁への対応難しいわ。そいに俺がホストやったら金掛かるしよ』
俺は、「ところであいちゃん、飛行機に乗ったことはえるんか?」
「まだない」
「俺も北海道に行ったときに1回と東京に行ったときの1回の二回しかないわ」
あいちゃん、「どうもなかったぁ?」
「あれは下りるときやったか耳がキーンとなって痛かったわ」
あいちゃん、「それ聞いたことある」
車は平和通を香春口まで来ていた。以前、小倉祇園のとき、あいちゃんとみーちゃんとあいちゃんのお母さんを乗せて行ってやったとき、ここから御影通りに入ったのでそのルートをとったが、あいちゃん、「G猫小倉駅だよ」って、出るときはっきり言わずにその辺りに来たら指示するって言ってなかったか。
俺は、「何あいちゃん、小倉駅やったら元の道に戻らないかんやん」
「ところであいちゃん、俺の息子新車買ったぞ」
あいちゃん、「あの黒い車買い換えるの?」
「おうハスラーの新型や。要するに今あいちゃんが乗っとるこの車の新しいやつやな。そいで2年くらいしたら俺が貰う」
あいちゃん、「G猫最低!」
俺は、「何あいちゃん勘違いするなや。息子が150万でローン組むけど2年後俺が残りのローンば払うんや。そいで息子はまた新しい車買う」
俺は御影通りを抜けて旧電車通りを右折して小倉駅南口に近づく。
信号停車した際、あいちゃん、「ここでいいよ。このお礼はきっとするからね」