3号線を走るのはここまで。遠賀町の戸切の交差点を右折して県道286号線に入り、北九州市若松区から福岡市東区に至る国道495号線に合流する。福津市(当時は福間町)までの区間はおおむね玄界灘に沿って走る。都市部から離れているため比較的交通量の少ない快走路だ。岡垣町の国道に入って、汐入川の手前に三里松原海岸に抜ける林道がある。この海岸については後で詳述する。それまでもそれからも、玄界灘の保安林を右手に見ながら疾走する。

 古賀からは国道3号線と並走し、新宮中学校前の信号を右折して県道537号線に入って、西鉄貝塚線の踏切を渡り、湊川に沿って北上し、県道538号線に入る。この道沿いの三苫のスーパーでバーベキュー食材の調達だ。一人予算1500円くらいで片っ端から買い物籠に入れる。

 炭は調達済だ。バーベキューコンロは俺のパジェロの荷席にいつも積んでいる。炭に火を点けるバーナー付きカセットガスボンベは廣井さん担当だ。

 ツーリングし始めの頃は、律儀に付属の着火材とか紙に火を付けて炭を起こしていたが、風が強い浜辺は上手く着火しない。そんな折、廣井さんがバーナーを取り付けたカセットボンベを持って来た。これで一気に炭問題は解決。

 食材を調達したスーパーのちょっと先から、志賀島へ至る海ノ中道に繋がる道路に右折する。この道沿いの右手の歩道から、砂丘へと導いてくれる松林の獣道へ、段差をどんと乗り越える。もちろん、地上高の高い四駆じゃないとできない業だ。このルートを見つけた俺が先頭を行く。

 俺は呟く、「確かこの辺やったよな。入口は」

 名倉、「YMRさん入口って?車で入れそうなとこないよ」ときょとんとしている。

 俺は徐に荻野目ちゃんのカセットを止めた。

「ここや!」

「えっ!ここってとても車で入れそうもないけど」

「任せとけって」と、俺は名倉の不安混じりの言葉を意に介さない。歩道に乗り上げたら大きな段差が眼前に現れる。

 名倉が、「ひえっ!」という声を上げた刹那、俺はどんと段差を乗り越えた。後ろの三台も俺に倣う。保安林の中の松と松の間はやっと車一台分、若干ウエスタンミラーを擦りながら砂丘に向かって敢然と進む。

 

 俺がパジェロ・スポーツターボを手に入れたのは昭和61年、手に入れた当時は専ら、お客で嫁の従兄だった山田とだけ付き合っていた。岡垣の三里松原の砂浜も、平尾台の林道も、津屋崎のまっ平の固く締まった高速砂浜も、この志賀島の砂浜も、山田と二人で四駆の遊び場として開拓した。

 昭和61年当時は海の中道側からJR香椎線の線路を乗り越えて侵入していた。最初にこのルートを開拓したのは勿論俺と山田だ。その後、宮川さん・古庄さん・廣井さん・平井さんともこの線路を越えて砂丘に入っていたが、確か、廣井さんだったと思うが、一度、跨線を失敗して線路上で立ち往生し、青くなって白煙筒を翳して香椎線の電車を止めた。賠償金が来るのではないかとひやひやしたが、杞憂に終わってほっとした。この失敗に鑑み、平井さんを言いくるめて、20万円のWARNの電動ウインチを付けさせた。

 

 その後、俺たちは線路を越えるのは回避した。他にいい入口はないものか、俺は仕事中、北九州からここまで出向いて探索した。当時のMBは労務管理が好い加減で、車さえ売っていればよかった。日報など有名無実で、日中のセールスマンの活動など不問だったから自由に動くことができた。で、見つけたのがこの出入り口だった。

 上の画像は2年ほど前、海の中道からJR香椎線の線路を越えて入っていたときだ。その後開拓した保安林ルートだったら、眼前に景色が開けると下の画像の赤い楕円で囲んだ部分に出る。四駆野郎がバーベキューをやってなかったらここはパラグライダーのメッカだ。

 砂丘の一番高いところに着いたら、上の画像のような感じで、早速炭をおこしてバーベキューを楽しむ。この写真は名倉をここに連れてきた後のもので、廣井さんが会社の女子社員三人を騙して?連れてきた。俺ら、女子の居ないツーリングは絶対決行しなかったから、必ず誰かが連れて来た。黄色いTシャツの仲間は俺が昭和62年にパジェロスポーツターボを販売した松田さんだ。今どうしているかは知らない。当時の俺はパジェロ・スポーツターボを乗っているお客としか親しい付き合いはしなかった(仙道さんは例外)。

 今回の女子は、俺が名倉と奈美ちゃん、古庄さんがスナック・メルローズのママとももちゃんの四人だ。このときも「写ルンです」で写真を撮り捲ったのだが、平成6年、俺は結婚を機に女子の写る写真を処分した。数枚の写真が俺の手違いで残ってしまったが、それはそれで良しとしよう。

 この画像は名倉と行く二年前。俺らは志賀島と言っていた砂浜だが、正確には奈多海岸だ。ここには大小さまざまな砂丘があった。それを四駆で上り下りするのはスリル満点で時間を忘れて遊べた。ここの砂は非常に柔らかいので、下手な運転をすると直ぐ埋まってスタックしてしまう。特に波打ち際は。

「ほうら埋まった。言わんこっちゃない。下手な運転するけんたい」と揶揄しながらも、スタックした車に牽引ロープを引っ掛けて救出活動を楽しむ。

 パワーを食う柔らかい砂にタイヤを埋まらせながらも、フルスロットルをかましてやれば2000CCガソリンスポーツターボは80キロくらいは出せた。俺の2500CCディーゼルスポーツターボは60キロが限界だったが、特に廣井さんの乗っていた3000CCガソリンのスーパースポーツは100キロ近く出たのではないか。そんなとき、もう気分はパリダカだ。女子のきゃ〜きゃ〜燥ぐ声が俺らのアドレナリンだ。

オマケ

2021年3月6日・8月14日・2023年2月13日・2024年4月12日修正