今、22日夕方6時前、滋賀に向かっていざ出発!

  一般道、山陰コースで16時間、山陽コースで19時間、万が一高速に乗らねばならなくなったときを考えて山陽コースを取る。
  30日まで家族三人とも無職、この10日間、心行くまで自由を楽しむつもりだ。調子こいて大出費をしないよう、心せねば。
  息子の勤めていたMUR海産、社長良い奴だったみたいだ。面接行くなら会社を辞めて行けと言い放ったのも、息子のために心を鬼にしてくれたのかも。失敗したらしれっと今の仕事を続ければいいさ、という甘い思考をすっぱりと断ち切ってくれた。
  この会社、去年から退職金積み立てが始まったようだが、五万ではかわいそう、五年以上も勤めてくれたんだからとぽんと十万加えてくれたとのこと。
 
  出発する日の朝、8時には起きた。朝の俺の体重は晩飯を絶食した甲斐あって、昨日の朝と同じ66・3キロ、これなら何でも食える。
  ファミマでのコーヒータイム中、「うどん、ラーメン、おでん、焼き肉、何がええか?」という俺の問い掛けに、息子が、「なら、焼き肉行こうや」
  うっ、つい涎が流れる。ウエストの焼き肉なんて、一年以上前に食ったきりではなかったか?
 
  俺ら家族、たとえ安いコンパクトカーであろうとも、遠出する前の洗車・ワックスは忘れない。綺麗にしてやっていれば、必ず期待に応えてくれる筈、デリカ・スペースギヤのときもそうだった。ただ今回は、ワックスは火曜日に掛けてやったばかりだから、洗車だけだ。
 
  ウエストのランチ、俺は880円の焼き肉一品ランチ、嫁と息子は1260円の満腹ランチ、ウエストの焼き肉の良いところは飯と味噌汁のお代わりが自由なこと。麦飯も選べる。
  本当に久し振り。いい頃合いに焼けた焼き肉を口に入れた瞬間、うっ美味い!五臓六腑に染み渡る。
  一日二食食っていたら、昼は空腹を抑えるためにちょっと腹に入れておくというくらいの量しか食えない。マックナゲット五ピースかレタス巻きのパックだ。
  晩飯、食わないならそれはそれで我慢できる体質に改造できた。一日一食だったら昼は普通の飯を食える。それも一つの選択かも。
 
  小倉を出たのが17時過ぎ、山口県内のローソンで息子と嫁だけ晩飯、焼き肉を食ったから、俺は翌日の昼飯まで絶食するつもりでいたから。
  彦根まで一人で運転する気概の息子だったが、岩国の手前でダウン、コンビニに車を入れて交代した。時刻は22時過ぎ。
  国道2号線をひたすら上る。広島市街地を抜けたら、高架橋道路の片側車線を全部規制して工事中、ガードマンが数人立っていた。反対車線の下りて行く側道を逆に上がるなんてこと、通常は考えられない。前のトラックは上がって行ったが、俺はまさかと二の足を踏み、結果、ナビの案内が狂ってしまって迷う。
 Uターンして引き返して、ガードマンのおいさんに、「工事中で上に上がれんやったけんナビが狂って迷ってもうたわ」
  おいさん、「じゃぁこっちに寄せて貰ってちょっと待っといて下さい」
  車を回転させてやっと本来降りる側道を上がって行って、通常のルートに戻ることができた。
 
  三原バイパス、尾道バイパスは半年前の年末年始、高松の嫁の実家に一般道から行くときに通ったのでちゃんと覚えがある。
  ただ、真夜中はトラックが飛ばして後ろについて圧迫してくるから、自然スピードを出さざるを得ない。ネズミ取りに捕まり易い先頭はなるべく走りたくないのだが。
  忙しいので、振り切るつもりで百キロ出してもピタッと付いてくる。前が、60キロちょっとで走る大型トラックで閊えると、もろ張り付いて来て、交差点の手前で一瞬車線が増えた途端、俺らの車をかわして先頭に出た。レースじゃないって。
  そのとき分かったのだが、そのトラック、何と、車両運搬用のトレーラーだった。
  なんちゅう危ない運転しよるんか!
  後ろに付いたら、ぼんぼん飛ばしてスピードメーターの針がみるみる上がって百キロを差す。いったいどこの会社のトラックだ。調べて文句言ってやりたくなる。
 
  姫路の手前のコンビニで息子と運転を交代、俺は後部座席で熟睡、父ちゃんという呼び掛けで目を覚ますと、神戸市内。来週は大阪でG20サミット、阪神高速は全線通行止めになるようだ。俺には関係ないが、テレビでは大渋滞と警告していた。渋滞だけでなく全ての経済活動が停滞してしまうのではないか。まさに大迷惑。
 
  次に目を覚ましたときは伏見。息子疲れてくると運転しながらぐちゃぐちゃとしょうもないことで口数が多くなる。
「普通、九州から一般道で来る奴なんておらん、もう12時間以上も運転しとんぞ」
「父ちゃんと代わって貰えばいいやん」と嫁。
「もういい。彦根まであと60キロや。こんまま運転するわ」
「コンビニに寄れや。小便や」と俺がローソンに停めさせる。
  伏見の街中、若い女子が無茶多い。試合か何かの待ち合わせか。引率らしき大人もいる。車から出てトイレに行きたかったが、さすがに義足を衆目に晒して付けるのが恥ずかしい。居なくなるまで待つ。
 
  夜走ったお陰でエアコンはつけなかった。燃費、結構伸びた気がする。ミラージュの燃料タンクは軽自動車と同じ32リットル、半分の15リットルで300キロ以上はは走ってくれた。兵庫県に入ったところで残量は半分、適当なところのスタンドで二千円分入れて満タンにした。
  息子、燃料代は全部持つと言っていたから任せればいいのに、嫁が要らんこと千円出してしまう。沿道のガソリン価格に目を凝らしていたが、140円を切っていたのは山口県だけ、あとの地域は140数円だった。
  彦根のホテルに着いたのは10時前、一応一旦駐車場に入る。細長い駐車場入り口に沿って斜めに停める枠は、工事中、業者の車が停まるということで13時までは駐禁になっていた。
 俺にとっては二十四時間ぶりの飯、体重調整はできている。何でも食える。和食はAにご馳走して貰って、昨日は焼き肉も堪能した。なら、今日は中華だ。目指すは王将。ナビで検索したらここから四キロ、店に着いたのが10時ちょっと過ぎ、開店時間を確かめたら、11時半、さすがにここでは待てない。嫁がトイレと言い出すから。車を出して近くのセブンで待機。
 
  30分前に行くと駐車場が結構車で埋まっている。関西の王将人気は凄まじい。行く度に思う。入り口ドア前に立って待っている客はまだいなかったので、ちゃっかり俺ら家族が一番乗りになった。開店と同時にほとんど満席。
  唐揚げ、酢豚、餃子二人前、焼き飯二人前、白飯の大を注文、これを小皿にわけで食う。ちょうどいい量で、追加の必要はなかった。
この時点で燃料の残量がまた半分、二千円分給油して明日に備えて満タンにする。
 
  ホテルにはピッタリ15時にチェックインしたが、王将から戻って来てもう動きたくなかったので、二時間以上ホテルの駐車場で待ってしまった。さすがに二年前の良いお姉さんはいなかった。当たり前だ。部屋は四階、予約時に別に希望はしてなかったが、喫煙になっていた。残っているかなと関心はあったが、入室した瞬間、プーンと煙草の匂い、俺は喫煙者だからどうでもいいが、嫌煙者は一分一秒でも、この空間、我慢できないんだろうな。
 
  思い出す。辞める一・二年前だったか、新車の入荷遅れにより俺の営業車を代車に出したため、試乗車で回らざるを得なかった。
  運転席の窓を全開にして煙草を一本吸ったが、非喫煙者の俺の課のマネージャー、MTSTが犬の如く嗅ぎ分け、しこたま嫌み言われて、全窓を開け放って暫く放置させられた。まぁ確かに俺が悪いが、わざとらしい。俺はされたことは絶対に忘れない。こいつ、裁判の陳述書を被告の弁護士に言われるまま書いて俺に寄越しやがった。勝てば、この高卒の年下の低脳の顔をもう一度見ることができるかも。
  余談だが、俺は三度の飯より書くことが好きだから、裁判所に出す陳述書を、被告の答弁書が送り付けられて二・三日で十五ページ一気に書き上げて、俺の代理人、HTTR先生のところに持って行った。
  先生、俺が書いた文章そのまま被告に送り付けてくれた。
  すなわち、「肉体的苦痛が精神的苦痛になり、頭の悪い、過去、車をよく売っただけの高卒の年下の上司にいいように使われるのが、どうにも我慢できなくなったのです」
 この文章呼んで、被告、ムカついたかいな?まぁ頭に来んやったらオツムおかしいよな。
 
  このホテル、大人三人の場合はロフトベッドになる。俺は隻脚だから無理、嫁はデブっていて無理、 必然的に息子のベッドとなる。今はどこでもそうだろうが、Wi-Fi無料だ。早速タブレットに設定する。これでTVerとネットフリックスがギガ数を気にせず見れる。
 
  明日の行動はずっと家族で決め兼ねていた。車はホテルに置きっ放しにして、電車を利用して京都に行く案が有力だった。利用する駅は南彦根駅。京都駅まで約一時間。
「ねぇ駅に行って確かめてみようよ」という嫁の提案に乗る。
  ホテルから歩いて十分、駅舎は二階だ。学生とか、乗降客は結構多い。
  息子は高校への通学に電車を利用していたし、嫁も何回か新幹線で高松に行っていたが、俺はと言うと、う〜ん、最後に電車に乗ったのは、いや待て、一年半前の東京旅行で利用していた。
  料金は京都駅まで九百数十円、健常者の方には申し訳ないが、ジジイババアになると使える割引は必ず利用するようになってしまった。
  俺の身体障害者手帳は二種の四級、バスはその場で提示すれは半額になるのだが、鉄道は一定の距離がないと効かない。この場合は適用外だ。その点、嫁は一種の二級だから、本人と付き添いが一人、半額になる。東京のときは煩わしかったのでそのまま切符を買った。
  券売機には割引の購入の仕方は説明してない。駅員に聞いたらお座なり対応で、緑の券売機でオペレーターに電話して聞きながら購入してくれと言う。確かに緑の券売機はあったが、新幹線用で、切符の購入の仕方が分からない方は、とある。
  ちょっとムカつく。天の邪鬼的思考回路が全開になる。
  ――俺らは障がい者やがガキじゃねぇわ!
「別に俺は一生電車乗らんでも生きて行けるわ。京都は止めじゃ」

 

 その足で直ぐ目の前の大型ショッピングセンターに行く。俺は食うつもりはなかったが、嫁と息子の晩飯のためだ。今日は日曜日、若人の姿が多い。この彦根、今回で三回目だが、街全体が概して若い。比べて北九州、高齢化し過ぎて、見るのは爺さん婆さんばかりのような気がする。俺も含めて。序にホテルの横のセブンイレブンに寄って、アサヒのスーパードライを調達。

 

 ホテルは清潔で快適で過ごし易いのは認めるが、俺にとっての鬼門は無茶狭いユニットバス、一本足だから入り難いことこの上ない。いつもはそれでも無理して夫婦二人で入っていたのだが、今日は止めた。バスタブに湯を溜めて一人づつ入浴する。俺は一番最後だ。

 疲れた!小倉から彦根まで650キロ、よっぽどの暇人で馬鹿じゃないと一般道で行こうとは考えないだろう。旅日記を書けるところまで書こうと思っていたが、風呂上りのビールを飲んで良い気分、もう寝る。明日、ホテル客の中で一番に下に下りて、朝食の食卓に着かねばならないから。

 

 チェックインの15時まで車の中で只管待った↓

 2020年5月27日修正