▶「武藤敬司35年の全記録」5・ムタ、猪木を喰らう | ぐーすけとりきのブログ

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1994年1月4日の東京ドームで、天龍源一郎との初
対決で敗れた猪木は、51歳の誕生日を迎えた直後の2
月24日、日本武道館で、近い将来の引退へ向けたシリ
ーズ「INOKI FINAL COUNT DOWN
」を開催することを発表した。

第一弾は5月1日、福岡ドームに決定し、対戦相手には
「グレート・ムタ」が選ばれた。

迎えた5月1日、福岡ドームは、5万3500人(主催
者発表)の観客を動員した。

注目のメインイベントは、入場からムタが猪木を飲み込
んだ。

先にリングインしたムタは、猪木の「炎のファイター」
が流れる入場時、花道に仁王立ちしていく手をふさぎ、
テーマソングを止めた。

ガウンを脱いだ猪木を見届けると今度は、敬意を表しロ
ープを上げてリングへ向けい入れた。

なにをするのか予想のつかないムタの動きに観客はどよ
めきを起こし、5万人の視線は主役の猪木そっちのけで
ムタに集中した。

田中秀和リングアナウンサーは、「昭和の鬼か、平成の
悪魔か。鬼か悪魔か。スーパーヒール。超次元対決」と
前口上した。

「昭和」と「平成」の時代を象徴する二人の戦いは、ゴ
ングが鳴ると、勝手気ままにムタが動いた。

真っ赤な毒霧を吹くと、猪木の存在を無視するように場
外に飛び出し、リングを照らすライトから垂れ下がるは
しごにぶら下がった。

かと思えば、リング上では正統的なグラウンドの展開を
見せ、猪木の必殺技「卍固め」も試みるなど鋭い動きで
試合を支配した。

新日本プロレスは、いつでもどんな時でも創設者であり
カリスマでもあった「アントニオ猪木」が絶対的な主役
だった。

しかも、この試合は、引退への記念すべきカウントダウ
ンのスタートで、恐らく誰もが猪木を引き立てることを
厭わなかったはずだ。

しかし、武藤=ムタは違った。

「もちろん、猪木さんへのリスペクトはあるよ。

だけど、オレにとって重要なことは、ムタをどう作るか
であって、ムタを作り上げなきゃいけないじゃん。

だから、猪木さんがリングインするときにロープを広げ
て招いたのは『ムタワールドへようこそ』みたいな世界
に染める意味があったんだよ。

照明を消したアイデアも、この試合の背景とか猪木さん
が相手とかを考えた末に行き着いたムタのための演出だ
よ。

それは、武藤敬司じゃなくてグレート・ムタだからでき
たんだよ」

「猪木さんが掲げたあのストロングスタイルの新日本プ
ロレスの中で、ムタって唯一、新日本が認めたゲテモノ
レスラーだよ。

本来、ストロングスタイルはあんなゲテモノを求めない
んだよ。

だけど、何で這い上がったかというと、長州さんも、猪
木さんも毒霧を食らっているからね。

それは認めざるを得ないよな。

基本的にムタってギミックがあるから有利なんだよ。

ギミックはオレを有利にさせるためにあるものだからね。

だから、猪木さんが毒霧を受けてウワッってやっただけ
で、ストロングスタイルがゲテモノの土俵に乗ってくれ
たんだから、その時点でもうオレが勝ってるんだよ。

これが例えば前田日明さんだったら、絶対に毒霧食らっ
てウワァなんかやらない。

だから、あの人はUWFスタイルを貫いたし、リングス
で途中からプロレスを辞めたんだよ」

入門してから道場、試合、移動中と間近で猪木の背中を
見てきた。

スペース・ローンウルフ時代は、タッグパートナーに抜
てきされ猪木プロレスを体感してきた。

「あの当時、オレは猪木さんのパートナーを一番多く務
めたと思うよ。

外国人と試合して、オレがやられて、猪木さんに『助
すけてください』ってタッチを求めて、最後に延髄斬り
で美味しいところをかっさらっていったよね。

そういう姿も学んだけど、当時、ずっと傍で見ていて、
猪木さんって運動神経は良くないと思ったよ。

鈍臭いもんな。

恐らく球技なんかやらせたら、全然できないだろうね。

だけどプロレスって鈍臭くてもよく見えたりするんだよ


試合後、思惑通りに試合ができなかった猪木は、控室で
荒れに荒れたという。

試合を見た馳浩は、猪木が激怒した原因を「ジェラシー
」と表現した。

「猪木さんが怒った原因は簡単ですよ、自分中心で試合
を展開できなかった猪木さんのムタへのジェラシーです。

天龍さんともやりづらそうでしたね。

猪木さんがジェラシーを感じて荒れるほど武藤選手とか
天龍さんの才能を認めていたということじゃないですか


武藤はムタの姿を借りて無意識に新日本プロレスの源流
「猪木イズム」を飛び越えた。

5・1福岡ドームは、昭和の「猪木イズム」を脱皮し平
成の新日本プロレスの方向性を示した、歴史の分水嶺で
もあった。

武藤は猪木が試合後、荒れたこと当然知っている。

「そういうのは聞いたけど、猪木さんはオレに何も言っ
てこなかったよ」

そして続けた。

「猪木戦は逆にオレの肥やしになったよね」

 

おっとっと、試合展開をそっちのけやった。

猪木入場後の試合展開は…

ムタの毒が猪木を染める時が来る。

アリキックを食らったところで緑の毒霧を顔面に噴射し
立て続けに、今度は顔面を覗き込むように至近距離から
吹き付けた。

ここから一気に試合が動く。

花道でブレーンバスターを浴びせると後頭部にラリアッ
ト、場外で机上パイルドライバーを敢行し、さらには額
を切り裂き流血に追い込んだ。

場外で延髄斬りを食らったが空き缶を脳天に叩きつけ、
緑に染まった顔面に真っ赤な血が流れる猪木の首を、は
しごから垂れ下がるロープで絞めた。

ブレーンバスターを猪木に切り返され、チョークスリー
パーで締め上げられたが、大の字になった時に猪木の髪
の毛をつかむと、またも緑の毒霧を顔面に噴射した。

ムーンサルトプレスの二連発から、ジャーマンスープレ
ックス、ドラゴンスープレックスで畳みかけた。

最後は、スペースローリングエルボーがかわされ、スリ
ーパーで絞められ、そのままフォールを奪われた。

結果は猪木に敗れたが、ムタのインパクトだけがリング
に残った。