「総帥!出ませい!」
キシリアの声が右の赤いリック・ドムから発せられた。そのドム
の右手のビーム・バズーカの照準が大型エレカに固定される。
「シャアか…」
ギレンは逃げられぬ己が8機のモビルスーツに見下ろされている
という姿に怒りが込み上げてくる。これは屈辱の形であった。
右のドアを開いてギレンは上体をかがめて赤いリック・ドムを見
あげた。ドムの単眼(モノアイ)がかすかに点ってギレンを睥睨
(へいげい)していた。
大型エレカから降り立ったギレン・ザビ総帥の姿は、リック・ド
ムのモニターで見下ろすと小人であった。
赤いリック・ドムの左手が胸のハッチの所に水平に接すると、キ
シリアが姿を現した。手にはビームライフルを持ち、そのドムの
手がゆるやかに腰の所まで下りる。手のひらの上に乗ったキシリ
アはギレンと対峙した。それでも二人の距離は9メートルほどは
あろう。
そのモビルスーツたちの背後から有線ミサイルを装備したエレカ
が次々と姿を現したが、総帥を人質にとられた形に息を呑むだけ
であった。統合本部の玄関まで500メートルほどか…。数百を
数える将兵が駆け出してきたものの、同じくこの奇妙な対決を見
守るだけであった。
「なぜ、私を討つ決意をしたのか?キシリア」
「総帥が私を討とうとしたからでありましょう?」
キシリアはマスク越しにからかった。
「なぜ、そうと知れたのだ?」
「ランバ・ラルとクラウレ・ハモン…ご存じでありましょう」
「…そう言うことか…」
以下、ネタバレあり、あっけない終末
★ ★ ★
ふっとギレンの顎がひかれた時、キシリアのビーム・ライフルが
それを掃射した。
ギレンは全身にビームを受け、声もなくその肉体を四散させた。
「…では…」
シャアがリック・ドムの左手首を回転させた。キシリアの体が、
未だビーム・ライフルの引き金を引いたままの姿で空に孤をを描
いた。
「シ…シャア!」
キシリアの体は焼け焦げたアスファルトと大型エレカの間、ギレ
ンの肉塊の幾つかがへばりつく間に落ちた。
それだけであった…。
★ ★ ★
さて、このコミックの主人公、アムロ・レイはどうなったであろ
うか?
ぐーすけは、あえて明示しなかったが、ほのめかす文章も入れて
いた。
ルロイ・ギリアム中尉が「とりかえしのつかぬことをしてしまっ
た」と悔やむところで気づいた人もいただろう。
そう、富野先生は、アムロを殺してしまったのである。その終末
に、アムロは仲間や敵の間を巡礼しメッセージを残していく。ま
るでエヴァンゲリオンの最後に登場人物が補完されるように。
俺は、「ファースト・ガンダム」しか知らないので、「Zガンダ
ム」とか「逆シャア」とかは、ほとんど知らない。
だからアムロが死んでいても、お話し的には、完結していて、そ
れはそれでいいのだ。
皆川ゆかさんの「評伝・シャア・アズナブル」には、戦争終結後
アムロは地球の兵器ミュージアムの館長に左遷され欝々(うつう
つ)とした日々を過ごしていた、とある。ニュータイプに対する
警戒の念が解かれてはいなかったからだ。
富野先生は、あとがきでこう述べている。
このガンダム編でアムロを殺さない方法をこうじて、恥を少しで
も軽くしようと賢しくも考えたのだが、やめた。
本編を再読して、後半、圧縮した物語となって心苦しい気もする
が、もしこの物語でアムロが復活する改訂版としたら、今まで出
版されていたものの作品としての生命はどういうことになるのか
と思い至ったのである。それでは、自己否定の仕事でしかなく、
過去の読者を無視する行為であろう。
それは卑怯かも知れないと気付いてやめたのである。
だから、以後の、ガンダムサーガでは、アムロはあたりまえのよ
うに、登場するのである。(多分…読んでないので知らないが…
)