▶「機動戦士ガンダムⅢ」レビュー11・二つのクーデター | ぐーすけとりきのブログ

ぐーすけとりきのブログ

ブログの説明を入力します。

「総帥!出ませい!」

キシリアの声が右の赤いリック・ドムから発せられた。そのドム
の右手のビーム・バズーカの照準が大型エレカに固定される。

「シャアか…」

ギレンは逃げられぬ己が8機のモビルスーツに見下ろされている
という姿に怒りが込み上げてくる。これは屈辱の形であった。

右のドアを開いてギレンは上体をかがめて赤いリック・ドムを見
あげた。ドムの単眼(モノアイ)がかすかに点ってギレンを睥睨
(へいげい)していた。

大型エレカから降り立ったギレン・ザビ総帥の姿は、リック・ド
ムのモニターで見下ろすと小人であった。

赤いリック・ドムの左手が胸のハッチの所に水平に接すると、キ
シリアが姿を現した。手にはビームライフルを持ち、そのドムの
手がゆるやかに腰の所まで下りる。手のひらの上に乗ったキシリ
アはギレンと対峙した。それでも二人の距離は9メートルほどは
あろう。

そのモビルスーツたちの背後から有線ミサイルを装備したエレカ
が次々と姿を現したが、総帥を人質にとられた形に息を呑むだけ
であった。統合本部の玄関まで500メートルほどか…。数百を
数える将兵が駆け出してきたものの、同じくこの奇妙な対決を見
守るだけであった。

「なぜ、私を討つ決意をしたのか?キシリア」

「総帥が私を討とうとしたからでありましょう?」

キシリアはマスク越しにからかった。

「なぜ、そうと知れたのだ?」

「ランバ・ラルとクラウレ・ハモン…ご存じでありましょう」

「…そう言うことか…」

以下、ネタバレあり、あっけない終末

     ★      ★     ★

ふっとギレンの顎がひかれた時、キシリアのビーム・ライフルが
それを掃射した。

ギレンは全身にビームを受け、声もなくその肉体を四散させた。

「…では…」

シャアがリック・ドムの左手首を回転させた。キシリアの体が、
未だビーム・ライフルの引き金を引いたままの姿で空に孤をを描
いた。

「シ…シャア!」

キシリアの体は焼け焦げたアスファルトと大型エレカの間、ギレ
ンの肉塊の幾つかがへばりつく間に落ちた。

それだけであった…。

      ★     ★     ★

さて、このコミックの主人公、アムロ・レイはどうなったであろ
うか?

ぐーすけは、あえて明示しなかったが、ほのめかす文章も入れて
いた。

ルロイ・ギリアム中尉が「とりかえしのつかぬことをしてしまっ
た」と悔やむところで気づいた人もいただろう。

そう、富野先生は、アムロを殺してしまったのである。その終末
に、アムロは仲間や敵の間を巡礼しメッセージを残していく。ま
るでエヴァンゲリオンの最後に登場人物が補完されるように。

俺は、「ファースト・ガンダム」しか知らないので、「Zガンダ
ム」とか「逆シャア」とかは、ほとんど知らない。

だからアムロが死んでいても、お話し的には、完結していて、そ
れはそれでいいのだ。

皆川ゆかさんの「評伝・シャア・アズナブル」には、戦争終結後
アムロは地球の兵器ミュージアムの館長に左遷され欝々(うつう
つ)とした日々を過ごしていた、とある。ニュータイプに対する
警戒の念が解かれてはいなかったからだ。

富野先生は、あとがきでこう述べている。

このガンダム編でアムロを殺さない方法をこうじて、恥を少しで
も軽くしようと賢しくも考えたのだが、やめた。

本編を再読して、後半、圧縮した物語となって心苦しい気もする
が、もしこの物語でアムロが復活する改訂版としたら、今まで出
版されていたものの作品としての生命はどういうことになるのか
と思い至ったのである。それでは、自己否定の仕事でしかなく、
過去の読者を無視する行為であろう。

それは卑怯かも知れないと気付いてやめたのである。

だから、以後の、ガンダムサーガでは、アムロはあたりまえのよ
うに、登場するのである。(多分…読んでないので知らないが…