▶「機動戦士ガンダムⅢ」レビュー7・とりかえしのつかぬことをしてしまった | ぐーすけとりきのブログ

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“ララァかっ…”

シャアの思惟の問いかけが流れにのる。

“中佐…感謝しています。また会えて…感謝していますよ、アム
ロに…そうでなければ、ここでお会いすることもなかったでしょ
うね…そして、こんな糸口を作ってくださったのはみんな中佐な
のですから、感謝しています…人は…みんなこうして生きてふく
らんで…輝けます…”

“俺はネンネだったと認めるよ。シャア・アズナブル…いや、キ
ャスバル・ダイクンというべきかな?…ただ金髪さんにすがりつ
くしかない坊やが、ララァ・スンを殺し、クスコ・アルを殺して
貴方の大きな企みを洞察できずに邪魔をした…すまないと思う”

“必死だっただけ可愛かったのさね。中佐。あなたにはそれがな
かった…率直でなくって大人ぶって…それに比べればアムロはい
い子さ…いい子すぎて…ハハハハ…”

クスコ・アル!シャアの認識域で明確に分類されるそれらの人々
の思惟が、今や巨大な光芒を放ってシャアの知覚を奪っていった。

“だからなのさシャア・アズナブル。惨めに死んでゆく人のいな
い世界を目指してくれ…貴方なら、それが作れる…ギレン・ザビ
を討つのは人の歴史の必然だ”

“ルロイ・ギリアム中尉…笑ってくれていいぜ。こんなものだ…
しかし、君も俺と同じだ。若すぎる過ちが許されぬ時もある。
急ぐなよ。戦場の気に呑まれてすべてを忘れることが許され
ぬ時もあるのだ…焦ってもいけない…俺の犯した過ちを繰り
返しちゃあならない…な…”

「これが…ガンダムのパイロット?」

ルロイは茫然自失した。

その強震はカイにはより明白に与えられた。

“仲間が撃たれたことはすべて忘れろ。シャアの企てに手を貸
せ。状況が生み出す結果だけを見るのは危険だ!それでは、我々
すべてが死ぬぞ。恐れるのはギレンの業だ。次にジャブローだ。
それだけだ…”

“ミライ中尉。シャアの野心はすでに野心ではありません。現実
的なプランです。この空域を脱出すれば、ですが…いいですか
?ギレンのレーザー攻撃はア・バオア・クーまで呑みこむはずで
す。脱出してください。

その上でシャアと同盟するか否か決めれば良いことです。が、
彼の目指すべき道は正しい。今はギレンのみを討つべきだと断言
できます。次にジャブロー。それですべてが終わります。ニュー
タイプの糾合を求めます”

「アムロ!アムロが!」

ミライ中尉の叫びに、

「アムロが堕とされたのか!?」

ブライトは息をのんだ。

ブライト・ノアは艦内オールの回線を通じて命令を下した。

「この空域を脱出する。目的はジオン。スカート付きとこれに随
伴するザクへの狙撃は中止しろ。傘からの攻撃に対して警戒を怠
るな。全速全身!」

「了解!」

ミライは自分の判断と同じであったブライトに真底の信頼をよせ
た。

「シャアとの回線を開け!情報を確認しつつレビル本隊にこの空
域からの脱出を示唆しろ」

「り、了解」

セイラは震えのとまらぬ手でコンソールパネルにとりつく。

「急げよ。間に合わぬかも知れんのだ!」

シャアはリック・ドムのレーザー・センサーの照準をペガサスに
合わせながらルロイらに周辺の警備をさせる。

「こちらペガサス。現空域の脱出に同意します。貴下の支持を待
ちます」

「ペガサスは戦艦ズワメルを追尾することを望む」

ア・バオア・クーをすり抜けるようにしてペガサスはゆく。その
前方にはキシリアのズワメルが…。しかし、キシリアはペガサス
が己の艦艇を追尾していることはいまだ知らない。

そして、その二つを繋げるシャア麾下(きか)の7機のモビルス
ーツのパイロットたちは、誰一人黙して語らなかった。彼等はか
すかにではあるが己の立場が見え始めていた。

その中で一人、ルロイ・ギリアムはサンバイザーを開いて溢れる
涙を拭った。

「俺は…とりかえしのつかぬことをしてしまった…」

かつてアムロがもらしたと同じ言葉であった。