ブラウ・ブロ。正面から見ると上に一門、機体下部に三門の二連
メガ粒子砲を持つモビルアーマーだ。それは300メートルと離
れていないポイントに、まるで息を止めてガンダムが振り返るの
を待っていた。
メガ粒子砲を持つモビルアーマーだ。それは300メートルと離
れていないポイントに、まるで息を止めてガンダムが振り返るの
を待っていた。
“なぜ接近されたのを気づかなかったのだ”
“アムロ・レイなら応答して欲しい”
シャリア・ブルであった。以後、二人は巨大な繋がりをみせたの
だが、それは一瞬の間の出来事であって、カイやハヤトが気づく
までの、2,3秒のことである。
“!”
そのアムロの気をシャリア・ブルは受け取った。同時にシャリア
・ブルは事を急ぎ過ぎる間違いを犯したのだが、やむを得まい。
ここは戦闘空域で360度どこからでも不意に敵が襲ってくるの
だから…。
“この空域での戦いは我々に無意味すぎる。我々は手を引きた
い。この空域から直ちに脱出したいのだ。我々には成すべきこと
がある。そのために、君を同調者として迎え入れたいのだ。君の
ニュータイプの素質の洞察力を我々は期待する”
シャリア・ブルのそんな思惟がアムロに激流のように流れ込んだ。
シャリア・ブルはアムロの鋭利な反射思惟を受け止めて、シャア
以上に、クスコ・アル以上のニュータイプたる素養を感じすぎた。
感性と思考という二つの要素が人を成立させているという極めて
単純なことを忘れていた。
“同調?”
アムロが反芻(はんすう)する間もなかった。シャリアの思惟が
怒涛のように流れ込む。
“パイロットたちレベルの殺し合いが戦争を終結させることはな
いのだ。君の戦闘力を我々に戦争終結に向かって使わせて欲しい。
そのために私、シャリア・ブルとシャア・アズナブルの同盟者と
してこの戦場を離脱して、ザビ家を討つために協力してくれまい
か!
まずはギレンを討つだけで戦争は終結する。以後のことは考える
時間を得てからのことだ。アムロ・レイ。君と君の仲間たちと
我々は同類であるはずだ。我々に続いてこの戦域を離脱してジオ
ンに向かってくれ。システムが、ソーラ・レイが我々を襲う前に
!”
システムの第二射が十数分後に発射されるのならば、その時こそ
すべてが呑み込まれるだろう。それ以上にこの空域を脱出しなけ
ればならない。
“連邦のニュータイプよ。協同してくれ!”
そのシャリア・ブルの思惟の流れが性急であればあるほど、強靭
にアムロを金縛りにする。アムロはすでにララァやクスコが開い
てくれた思惟伝達の入り口を持っていた。シャリア・ブルがいか
に個としての洞察に優れていたにしても、彼にとっては未知の部
分であった。
シャアと判り合えるレベルと次元を異にするアムロの感性は、シ
ャリアの思惟のすべてを瞬時に捉えたばかりに暴力、強姦という
言葉が当てはまるような感じ方をした。
“私はシャリア・ブルという。シャア中佐の同盟者だ!手を貸
せ!互いに敵対し合う相手ではない!”
シャリア・ブルは牽制のビーム攻撃を続けざるを得なかった。が
灰色のガンダムの機体も左右上下に方角を選ぶことをせずに回避
し迫るのだ。シャリアはその機体から放散される鋭い気が怒気を
含んで若鮎のように弾けるのに感嘆していた。
“なぜこうも怒っているのだ!冷静に私の言葉をきいてくれ!”
「ニュータイプが来るぞ」
アムロはこの言葉がカイにもハヤトにもペガサスにも聞こえてく
れと願った。無線で伝わるわけはない。共にニュータイプなら受
信しれくれるはずだ。カイ、ハヤト、セイラさん‼ニュータイプ
がくる!
それはアムロの本来の願望とか目指すべき認識とは遠く離れた恐
怖の叫びであった。この感情こそ事態のあらゆる齟齬を生むのだ
った。
物事を反芻する時を与えられない宇宙空域の戦場で生まれた齟齬
であった。もし、地上戦であって、この後、アムロが塹壕なりで
1人シャリア・ブルのことを反芻する時が与えられていれば事態
は異なっていたろう。
であった。もし、地上戦であって、この後、アムロが塹壕なりで
1人シャリア・ブルのことを反芻する時が与えられていれば事態
は異なっていたろう。
しかし、ここは360度、すべて宇宙である。