アムロは立ち上がって一同を見回した。
「僕は一般大衆を信じないというのではなくって、多数派によっ
て可決される意見に危機感を抱くんだ。殊に連邦政府の決定とか
総意というのは、政治家の保身に固まってゆくからな…例えばこ
うなるのじゃないかな。ペガサスがギレンを倒せたのはなぜか?
それは彼らニュータイプたちが超能力者であって戦争の道具とし
て生まれてきた戦士たちだからだ。彼らは平凡人である我々の考
えを見透して心の中まで読んでしまう。
そんな化物のような人間を彼らの思うがままに跳梁させると、平
凡人たる人々の生活は心の中からすべて脅かされてしまう。
そんなニュータイプと大衆は一緒に生活できるか?時には嘘でも
生き抜く方便として必要なことがあるが、ニュータイプはそれを
許さないだろう。
そんなニュータイプは、超常現象の一つであって一般的に言う人
ではない。彼らは排斥されなければならない。
……こんな風に宣伝されたらどうする?我々は抹殺されると考え
た方がいい。出世どころではないな…」
「フン、舌ったらずな演説だけど、まあ、アムロの言う予測は正
しいな」
カイがうなずいて一同を見渡す。
「ジオンってさ、。ほら、今のジオンが共和制を施いた時のジオ
ン・ダイクンは、そんなことでザビ家から殺されたってんだろ?
」
スレッガーが物知り顔にセイラに尋ねた。
「さあ?それは知らないけれど、ジオンの言っていたニュータイ
プって言い方は人類全体の革新を夢みた言い方よね。だけど、現
実的には今アムロ中尉が言ったように捉えられて抹殺されてゆく
可能性は充分あるのではなくって?」
「現実の戦場では我々は絶対的な必要性に支えられているが、平
和時にはどうなるか研究してみる価値はある。
ただ、アムロの言う通り一般大衆は真実を素直に見つめる特性も
あると同時に、時の為政者の掲げる旗に従わざるを得ない部分も
ある……」
「一般論はいいわ。とにかく、私たちは明日にも決定を余儀なく
させられるかも知れない。その時どうするか、ね」
ミライがきっぱりと言った。
「お互い、死なない程度の闘えばいいんじゃない?」
「いや、それをやると、最終兵器にひっかかって我々もやられる
だろうよ…」
「ブライト艦長…なぜ判るのです?」
「状況判断からの推論でしかない。判りはせんよ。アムロ…」
アムロにはそうは思えなかった。ブライトも“勘”が拡大しつつ
あるのかも知れない。
「…ギレンは倒すべきです…」
「方法論は?」
「猪突猛進というわけにはいかないでしょうが…協力者がいれば
可能と思えます…」
答えながらアムロはなぜ自分がそんな可能性を予測しようとして
いるのか判らなかった。少なくとも自分の判断レベルででてくる
思考とは異なっているようであった。
「協力者…?」
「艦長と同じ空想ですがね…たとえば、シャア…アズナブル。
赤い彗星がどういう男か…」
「ニュータイプ同士の接触か…。しかし、奴とてドズルの直衛部
隊にいた男だぞ」
「ですから、空想なんです」
「よし、一休みしよう。次の作戦命令が出るまで第三戦闘配置の
まま休息する。考えておこう」
「でもね、俺は遅れた人だけど、ここの人たちが化物とは思えん
のだがな?恋の一つもするってのは人間として信憑性は充分ある
んでないの?」
スレッガー・ロウの率直な感想であった。