▶「機動戦士ガンダムⅠ」レビュー2・デキン、親馬鹿の真骨頂 | ぐーすけとりきのブログ

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デキン・ソド・ザビ公王は、年の割には老け込んでいた。長子の
ギレンが実質的な政務を執って十年になろうか…。

革命家ジオン・ズム・ダイクンから政権を奪取し、ダイクン派の
懐柔に狂奔している頃は、デキンは実質的な首領としてその覇を
極めていた。しかし、いつしか理想主義者とののしられる様にな
り、ギレンを中心とする一派に議会が編成されたとき、デキンは
ザビ家でありながら傀儡に成り下がっていた。

「親の七光りで将軍だ、元帥だと国民に笑われたくありませんか
らね。父上もご辛抱ください。必ずや、大きな戦果を私自身の手
で収め、将軍として立ってみせます」

ガルマが死ぬ三日ほど前に届いたビデオであった。デキンは嬉し
かった。若者の率直な気負いは、聞いていて気持ちの良いものだ
った。兄や姉たちと違うこの率直さは、母親のナルスに似たため
だろう。人の美徳だと思った。

ガルマの資質を尊んだデギンは、それまで一切の報道を禁止して
いたのであるが、士官学校入学のニュース・テープが公開された
時、ガルマは一挙に国民のアイドルになった。

やや神経質そうな顔型は高貴さに満ち、ややもすると冷たく聞こ
えた声なのだが、ガルマは言葉を選び、国民に対して、たえずや
さしくあろうとする彼の配慮が聞こえた。

「諸君と話す機会を下さってありがとう」

どのような場合でも、ガルマの第一声はこれだった。私は、末っ
子だからといって、卑屈にはなりません。これもガルマの口癖と
として国民の間で知らない者はなかった。そして、デキンは、こ
の国民の反応を子供のように喜んだのである。

今は、傀儡であるが、ガルマを利すればギレンを抑える事のでき
る時代も来るのではないか?と思うようにもなっていた。これこ
そ、親馬鹿の真骨頂ではあったろうが、今はガルマは亡かった。

「父上、まだ、この様な処(ところ)に…」

キシリア少将である。

「国民は、すでに父上のおいでを待っております。お立ち下さい

「うむ」

デキンは短く応えると立ち上がったが、なんとしても体が重かっ
た。キシリアを見返すと、その気持ちを読んだ彼女は冷たく言っ
た。

「公王としてのお役目は、果たしていただかなければ、国民に対
しての示しがつきません」

公王は、歩きださざるを得なかった。これ以上小言をいわれるの
が嫌だったからだ。

ザービ!
ザービ!

二十万群衆のコールは、コロニー全体を揺り動かすかと思えた。
弔砲が轟き、いつしか群衆の足踏みがコールと共に起こった。

どう、どど、どどん…。

それは形容でなく、事実、コロニーの人工の大地を揺るがせてコ
ンマ数秒かコロニーの回転軸を狂わせた。

群衆の大部分が若い人々なのであろう。デキンは、ふと歯ぎしり
をした。

「この世論があれば、ギレンを倒せたのではないか?」

祭壇上には、50メートル四方はあろうガルマ・ザビの肖像がか
陰られ、左右にはなだれこむように生け花が生けられていた。デ
キンは、壇上の公王の席に座り、改めて会場広場を一瞥(いちべ
つ)した。

「二十万人と、テレビ中継を観る国民は二千万人か……?」

ギレンを倒せるはずではなかったのか、とまたも思った。