▶「評伝シャア・アズナブル」レビュー・ザビ家一掃 | ぐーすけとりきのブログ

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敵の敵は味方、などという言葉がある。

キシリアはザビ家の一員である。だがシャアはそれをいったん脇
に置くつもりなのだとキシリアは考えた。ギレンとドズルを倒す
ため、とりあえず、キシリアに与するということだ。いつ裏切る
か、わからぬ男だが、シャアは持っていて損のないカードである。
主導権は自分が持っている、と。キシリアはシャアに「ザビ家打
倒をあきらめ」、自分に協力すると誓約させようとしているのだ。

これに対してシャアは恭順の姿勢で応じる。

キャスバルではなくシャアが為そうとすることをキシリアは問う
たが、実際のところ、彼女の目の前にいるのは「ジオン・ダイク
ンの遺児」以外の何者でもなかった。

キシリアは終わってもいない戦争の後をすでに考えていた。戦後
いかにして父や兄弟を排除していくかを思うとき、ジオン・ダイ
クンの遺児を擁する意味は大きかった。

キシリアはダイクンの子を飼おうとしたのだ。

獅子を飼う危うさを、自分ならば逃れうる──そのように考えた
ものだろう。

となれば、キシリアとしては一言、この新しいナンバー2にこう
告げるだけでよい。

「ギレン総帥をわたしは好かぬ……それだけは覚えていておくれ

シャアはこれに対し「新しき時代のために」と呟きを返す。

ニュータイプの時代の変革のために、という意味であったか。た
だ、このような言い方をキシリアは好まなかったようだ。

「政治は難しいのだ」

差し出がましさを窘める。

「ギレンはア・バオア・クーで指揮を執る」

はい、と応じたシャアへ、彼女は語を継いで「その後のことはす
べて、連邦に勝ってからのこと」という。宜しいか、と念を押し
てさえいる。

シャアはキシリアのア・バオア・クー脱出を、援護に向かおうと
していた兵より聞く。

ギレンによるデギン謀殺の事実を知ったキシリアは、これを口実
に指令室内でギレンを射殺、指揮権を掌握していた。しかし、ア
・バオア・クーでの敗色が濃いと見たキシリアは、グラナダへ逃
れようと考える。グラナダに温存した戦力と、公国本土を連携さ
せれば、戦争の継続は可能という見方である。

シャアはバズーカを手にキシリアのもとへ向かった。発進するザ
ンジバルの艦橋にキシリアの姿を認めたシャアは、敬礼を送る。

「ガルマ、私の手向けだ。姉上と仲良く暮らすがよい」

艦橋の正面でバズーカを構えるノーマルスーツはキシリアの目に
も留まった。シャアか、とキシリアは驚きの声を洩らす。復讐の
意図がないとシャアが断言していたからではない。ジオングの識
別信号が消失した段階で、キシリアはシャアが「白いヤツ」によ
って死に至らしめられたと考えていたのである。

シャアの放ったバズーカの弾丸は、艦橋の指揮官席に座るキシリ
アの頭部を正確に射貫いた。艦橋は損傷したものの、ザンジバル
は上昇を続けた。そのザンジバルを沈めたのは、要塞から出た直
後に喰らった、連邦軍の艦艇からの砲撃だった。ザンジバルは港
の施設を巻き込み爆発する。

ア・バオア・クー陥落とザビ家の崩壊を受け、共和制へ移行した
公国側(ジオン共和国臨時政府)は、連邦政府をサイド6を通じ
て終戦協定締結を申し入れた。翌0080年1月1日、共和制へ
移行した公国側と地球連邦政府との間で終戦協定が結ばれる。