1試合に数回、投手が主審にボール交換を要求する場面が見られ
る。
この行為に、特に不思議をおぼえる野球ファンはいないはずだ。
誰もが、「泥で汚れたり縫い目が擦り切れたりして、変化球が
投げづらくなっているためだろう」と思っている。
そのとおりなのだが、実は、野球の硬球には、汚れや縫い目の
劣化どころではないトンデモナイ支障がきたされることがある
のだ。
それは、ボールの変形である。
野球の硬球の表面は牛革で覆われ、中にはコルクの芯にきつく
巻かれた毛糸が入っている。
この頑丈なボールも、時速150キロのスピードで進み、時速
100キロ振られるバットとぶつかり合うのだから、無事です
んでいることのほうが不思議というものだ。
ウルトラスーパースローの映像を見ると、ボールがバットに当
たった瞬間、硬いボールの直径が5分の1ほどへこんでいるこ
とがわかる。
このへこみが元に戻る力がバットのしなりとあいまって遠くへ
飛ぶ打球を生み出すのだが、その衝撃がよほど激しいと、へこ
んだ部分がそのままになってしまうわけだ。
この変形ボールには、思わぬ変化球が生まれる可能性があると
いう。
だからといって、変形ボールをそのまま使う投手はほとんどい
ない。
ボールに勝手に変化されてしまっては、投球を組み立てること
ができなくなるからだ。