・「空の中」有川浩のレビュー | ぐーすけとりきのブログ

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これは、自分で選んだものではなくて、友人から
「おもしろいき、よんでみ」と薦められたものだ。

そういうの、ホント久しぶり。

しかし、並行して、読んでいるものもあり、読了
するのに時間がかかった。

まず、日本初の超音速ジェット機の試験飛行の際に
何故か高度2万メートルの処で、その機体が爆発
炎上する。

また、しばらくしてから、問題の空域で自衛隊機が
急上昇実験をしていて、再び、爆発炎上。

これは、なにか、ある。

ここで話は一転して、土佐の高校生が、とある“訳
の判らない生物”を拾うシーンとなる。

その生き物を拾った日、彼の父親は高度2万メート
ルで爆発炎上死をとげており…いきなり“父の死”
に直面した息子は、父の携帯を鳴らす。

勿論、とってくれる人が居る筈ないって判っている
のに。

それが…できてしまうのである。

その、“訳のわからない生物”と。

主人公のひとり、瞬(しゅん)は、その生物と交流
を重ね、その物体を「フェイク」と名づけ、「フェイ
ク」を思いのままにコントロールさせることができる
ようになる。

「フェイク」は実は2万メートル上空にいた、生物
【白鯨】・ディックのカケラであった。

その【白鯨】も大陸間弾道弾によって、バラバラに
なっており、その一番大きいのがディックだった。

バラバラになった【白鯨】は約5万個もあった。

これを超音速ジェット機の開発担当春名は、解離性
同一性障害とみたて、ディックは《全き一つ》の状態
を回復するというメリットを受け、ディックは他の
【白鯨】群と交信することを初めて了承した。

防衛型の【白鯨】が言うには

「私と私以外の我々にとって、自己の防衛と《全き
一つ》への回帰は同列に重要な命題である。自己の
防衛が不足なく果たされる条件が整備されるのであ
れば、私と私以外の我々は《全き一つ》への回帰手
段として人間を殲滅しないことを採択することが可
能である」というのだ。

【白鯨】は一つとなった、というかひとつになろうと
した。

しかし、「フェイク」は、瞬の望むとおり、バラバラ
なった【白鯨】を食っていた。瞬の望むとおりに他の
【白鯨】を捕食していった。

瞬は「フェイク」を猫可愛がりした。事故死した父親
の空白を埋めるように。

ここでいわば、高知での、瞬の親代わりたる人物、“
宮じい”が登場する。

「わしはもう50何年も仁淀川で漁をしてきた。瞬も
火振りをよう手伝うてくれたろう」

「火振りのとき魚がようけ掛かるろう。鮎だけやない、
ハヤもウグイもギギもオコゼも掛からぁね。わしらは
鮎だけが欲しいき、鮎だけきれいに箱に詰める。けん
ど、一緒にかかった雑魚は河原にほおっちょくわね。
売り物にならんきね。網で傷んじゅうき、じきに全部
死んでしまわぁよ。それはもう毎度のことよ」

小さい頃は、その放られて口をパクパクさせている雑魚
がかわいそうで仕方なかった。

水に戻してあげればいいのにと思ったりしたが、漁は
鮎が傷まないうちに網から外して回収するのが最優先
で、そうしているうちに雑魚は弱って死んでしまう。

それに慣れてしまったのはいつ頃だったろう。

「網を入れる度に結構な数の雑魚を殺生すらぁね。外す
に手間も要るし、正直なところ火振りをするには邪魔よ。
鮎だけ掛かってくれたらどればあ楽かと思うわ」

漁師の理屈としてはもちろんそうだ。でも──

「けんど、雑魚が邪魔の要らんの言いゆうがは、わしら
の勝手な都合ぜよ」

まるで内心を言い当てられたようで、瞬は一瞬どきりと
した。

「雑魚と呼びゆうがもわしらの勝手ぜ。魚のほうは自分
が雑魚じゃ邪魔じゃは思っちょらんきね。ただ生きちゅ
うだけじゃ。ただ生きちゅうだけのもんを、わしらが要
るの要らんの、えいの悪いの、勝手に分けゆうがよ。

けんど、それはわしらにそうする権利があるがやのうて
相手が物を言われんのをえいことに勝手にやりゆうだけ
よ」

宮じいはそう結んで口を閉ざした。



また、「フェイク」を、瞬が手懐けているのをいいことに
「セーブ・ザ・セーフ」という団体が瞬を名古屋に連れて
行った。「フェイク」に【白鯨】を食ってもらおうという
のである。

旬の幼なじみ、佳江は瞬の言葉を何度も繰り返した。

最後の言葉を。

「でも、俺も間違ったんだ。

最初からやり直せるなら、オレは今度は間違わないから」

「ねえ、宮じい」

佳江は尋ねた。

「何かをいっこ間違ったとして、間違った方へどんどん
押し進んだら、そのうち正解につくと思う?」

「また難しいことを言いはじめたのう」

宮じいは飲んでいた麦茶を置き、難しい顔で腕組みをした。

なにを言いよらあと一蹴することはない宮じいである。

「ようわからんが、間違ったほうをずんずん行ってもそれ
は正解にはならんろう。正しいように見えるとしたら、そ
れはそう見えるように取り繕っちゅうだけよ」

佳江も同じ事を思っていたが、宮じいに裏打ちされると勇
気が湧いた。

「いっぺん間違ったことを正解にすることは出来ると思う
?」

「そらぁ、無理よ」

宮じいはあっさり言ってのけた。

「いっぺん間違うたことは間違うたことよ。それは、人間
がごまかしても、世の中とか道理とかそういうもんが知っち
ょらあ。それが間違いじゃとね。どれだけ上手にゴマかしち
ょっても、後になったら間違うちゅうもんは間違うちゅうと、
ちゃんと分かってしまうもんよね。わしらがちんまいころは、
英語らぁ敵性言語じゃちゅうて使うたら特高に捕まりよった
ゆうけんど、今は学校で教えゆう。そういうことよ」

さらりと重たい例が出てくる辺りはやはり年代だ。

宮じいの言うことはやはり正しい。賢しくない朴訥なその理屈
は賢しくないだけに付け入る隙を持たない。

「じゃあ、間違ったらどうしたえいと思う?間違ったら、もう
どうしようもないが?」

「ないのう」

その時間違ったことはもうどうしようもないわえ、と宮じい
は言った。

「間違うたことを正しかったことにしようとしたち、いかん
わえ。神様やないがやき、あったことをなかったことには
できん」

じゃあ、間違った瞬はどうすればいいのか。間違った瞬が
救われる方法はないのか。佳江が唇を噛むと、宮じいは
ゆっくりと続けた。

「間違うたことは間違うたと認めるしかないがよね。辛う
ても、ああ、自分は間違うたにゃあと思わんとしょうがな
いがよ。皆、そうして生きよらぁね。人間は間違う生き物
やき、それはもうしょうがないがよね。何回も間違うけん
ど、それはそのたびに間違うたねゃあと思い知るしかない
がよ」

間違わんという意味では魚や動物のほうがどればあ賢いか
わからん、と宮じいがくしゃっと笑う。

間違うんだから仕方ないじゃないか、間違ってもいいじゃ
ないか──ということでは決してない。

「間違うことをごまかしたらいかんがよね。次は間違われ
んと思いながら生きていくしかないがよ。けんど、わしは
この年になってもまだまだ間違うぜよ。げに人間は業が
深い。死ぬまで我と我が身を律しちょかないかんがやき」

「間違ったことで──誰かを巻き込んだら、それはどうし
たらえいが?」

「そらぁ、謝るしかない」

宮じいはまたあっさり言った。佳江は食い下がる。

「でも、誤っても許してもらえんようなことやったら?」

「それでも謝るしかないわえ」

宮じいの答えは変わらない。

「許してもらえんかったら、それは仕方がないわね。許し
てもらえんようなことをしたがやと。やっぱりそれも思い
知って覚えちょくしかないがよね」

その厳しい真理から逃れる方法はないのだ。瞬も佳江も。

背負うしかないのだ。

そうして生きていくしかないのだ。

「宮じい、あたし瞬を迎えに行きたい。一緒に行ってくれる?」

宮じいはすべてが瞬の話だと分かっていたのか、この脈絡で
出てきた瞬の名前に意外そうな顔ひとつせず「いつにしよう
かのう」とつぶやいた。



こうして、【白鯨】はひとつに収斂していくのだが、もうひ
とり(二人というべきか)の主人公、最初の航空機事故の事
故調査委員として派遣された春名高巳(はるなたかみ)と、
自衛隊機事故に同行していたイーグルの武田光稀(たけだみ
き・女性・三尉)との凸凹コンビも捨てがたく面白いもので
ある。

さいごに、バラバラになった【白鯨】がどのような姿か自分
ながら想像してみた。

多分、チャリにのる人がつけている、流線型のヘルメットの
透明盤のようなものがたくさんあるのだろう、と思っていた
のだが、よく表紙を見てみると、白い苔(こけ)のようなも
のが、見当たす限り広がっている絵で、もう少しで刷り込み
をするところだった。

有川浩氏の作品は「ライトノベル」とジャンル分けされるもの
らしく、やはり「軽い」という感じは否めない。「県庁おもて
なし課」や「図書館戦争」などベストセラーもあるのだが、
それでも「ようやく読めた」のが実際の読了感で、こんどは
ビジネス書でも読んでみようと思う。

「ぐーすけがビジネス書を!」と思われる方、アタリ。
トカゲのしっぽのようなビジネス書をハケーンしたので
また、ひまがあれば上梓しようかなと思ってる。

それじゃ(*^っ^)/