「創業以来10年もかかって業界に立派に知ら
れるまでになった社名を、今更わけのわからな
い社名に変えるとは何事だ!」
「東京通信工業」が昭和33年に社名を「ソニ
ー」に変えたとき、メインバンクの三井銀行(
当時)からこう叱りつけられたという。
SONYという名前が初めて登場したのはその
3年前のことで、同社が国産初のトランジスタ
ラジオを海外に売り込むためのブランド名とし
てであった。
どこの国でも同じ発音で読まれること、心地よ
い響きを持っていることを条件として案を出し
たのは、創業者の1人である井深大(いぶかま
さる)(当時社長)である。
井深は「音」の英語であるSOUNDの語源が
ラテン語のSONUS(ソヌス)であることに
注目した。
このSON…の綴りを眺めているうちに、当時
アメリカで流行語になっていた「かわいい坊や」
という意味のSONNYという言葉を連想し、
そこから最初はブランド名としてSONNYを
考えたという。
だが、これを日本式に発音すると「ソンニー」
となり、「ソン」が「損」につながってしまう。
それならNを1字削ってしまえ、ということで
SONYが生まれた。
製品がポータブルなトランジスタラジオだった
こともあって、「かわいい」という意味と、「
音」の意を含んだピッタリのネーミングだと思
われた。
その狙いは当たり、SONYブランドは海外で
高く評価された。
ところが今度は、社名に不都合が生じた。
東京通信工業では外国人には発音しにくく、
商売に支障が出始めたのである。
そこで、社名をブランド名と一致させるしかな
いと決断。
当時としては大胆な、海外企業のような社名変
更に踏み切ったのには、そんな切迫した事情が
あったのである。
メインバンクには叱られたが、その危惧は杞憂
となり、現在の同社は、日本を代表するグロー
バル企業へと成長している。