◆「格闘者の血」~「餓狼伝」夢枕獏・レヴュー | ぐーすけとりきのブログ

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さて、おおトリは夢枕獏先生である。


獏さんが、格闘技小説を開拓し、存在しているから
こそ、「格闘者の血」というジャンルも存在して
いると言っても過言ではないであろう。


「餓狼伝」シリーズは、今も尚、格闘小説の最高峰
に君臨し続けている。


しかし、1985年という、遥かなる過去に誕生し
たものであるから、ちょっと誤解しているという
ところもある。


しかし、ご愛嬌である。


当時は誰も相撲が、柔道が、空手が、プロレスが、
ブラジリアン柔術が、サンボが、テコンドーが、
少林寺が、あまたある武術の中で最も強いもの
は何か?


ということは、脳内世界のシュミレーションにしか
過ぎなかったのだから。


物語は、様々な格闘技に長けている主人公・丹波
文七が、かつて自分を倒した、当時は若手の前座
レスラーだった梶原年男に再挑戦するまでを描く。


獏さんの格闘小説が何故これほど支持されているのか。


その理由の全てがこの物語にある。


描写力だ。


相手からのパンチを顎(あご)に食らったときの
描写はこうだ。


「後ろにのけぞった頭を追って、肩が、腕が、背が
伸びて、少年は尻餅をついた」


この、肩が、腕が、という言葉のリズム。


「ぎじっ」(足首が捻られる音)「みりっ」
(鼻の軟骨が潰れる音)という、擬音使いの
絶妙さ。


実は、僕は、大学のプロレス研究会の会報に
格闘小説もどきを掲載したことがある。


「格闘小説もどき」というのは、5~6ページの
「さわり」の部分だけだっただけで、いつか
後を書いてやろうと思いつつも、そのままになって
しまったものだ。


冗長だが、獏さんのキャラクターの名前を借りて
再描写してみよう。


           ★        ★          ★


文七は、同じ右の蹴りを、たて続けに梶原の
頭部に向けて放っていた。


しかし、その蹴りは、梶原の頭には当たらなかった。


梶原が、左手を上げて、それをブロックし、蹴りに
いった文七の右脚を、左腕に抱え込んでいた。


今度は、文七の軸足が狙われる番だった。


その前に、文七は、軸足の左足で跳躍していた。


右足を梶原にあずけたまま、左足で梶原の右側
頭部を蹴りに行ったのである。


梶原が、頭を沈めてその攻撃をかわしていた。


文七の足が空を薙(な)いだ。


……とかいうふうにである。


           ★            ★           ★


ご愛嬌というのは、関節技が旧UWFの極め技
しかない点である。


チキンウイング・フェイス・ロック


チキンウイング・アーム・ロック


アキレス腱固め


アーム・ロック


片逆エビ固め


など、佐山聡氏(初代:タイガー)がガイドブック
を出して説明していた技は、効かないのである。


僕も、柔道をかなりやっている人に、
酔っ払って、チキンウイング・フェイス・ブックを
かけさせてもらったことがあるが、
これが…
極まらないのである。
かなりの力技になる。
小のチカラで大を制すという技ではない。


佐山氏が旧UWFで藤原喜明選手にチキン~をかけて
藤原氏がマイッタをしなかったため、腕の骨が脱臼
した(あるいは骨折した)、という試合があった。


「ベキッ」という音が、コーナーに群がる取材陣に
も聞こえてきた、という。

 

藤原氏は「友達の骨を折ってしまった」といって
泣き出してしまったのである。


しかし、これはマット伝説らしい。


佐山氏は


「折れるわけないじゃないですか~。
そんな音しませんよ~。
プロレスですから」


とのコメントを出したのだ。


佐山氏の修行は「打・投・極」を念頭に
組手を加えるもので、85年というと
まだUFCも登場してなかったものであり
10年進んでいたという。


「打・投・極」のうち、「投」は、相手に
ダメージを受けさせる技ではなくなってしまった。


K-1やプライドを見ていた人には効果がわかる
だろうが、後ろに付いて腰を持ち、ひっくり返す、
~いわゆるバック・ドロップ~ことをしても
マットの上では効かないのである。


スティーブ・ウイリアムスというアメリカ人の
プロレスラーがいる。


A・猪木と初のシングルマッチで、猪木をバック
ドロップで投げて脳震盪させて、そのままフォールに
いこうとした、プロレス的にはKYな選手である。

(当時猪木氏は糖尿病で体調は最悪だった)


「K-1に出てみないか」と言われたらしい。


相手は、アレクセイ・イグナショフ。


イグナショフは、ウイリアムスが相手選手を
バック・ドロップで投げているのを見て
大笑いしていた。


試合は、あっさりイグナショフが勝った。


今は、殴るか、極めるか、である。


             ★         ★        ★
閑話休題(それはさておき)


「餓狼伝」その後の話は知らないが
30年もたっており、獏先生の豪腕で知悉な
筆により、現在の格闘技にマッチしている
格闘小説に進化しているだろう。


なお、この小説には、ひと目でモデルになっている
人がわかる登場人物がいる。


・北辰館の松尾象山は極真会館の大山倍達
・東洋プロレスの川辺は親日プロレスの山本小鉄
・悪役レスラー斑牛の伊達は上田馬之助


といったふうにである。


主人公の丹波文七と、相手役の梶原年男は
わからない。


というか、モデルはない。


僕も、その後の「餓狼伝」を、読んでみようかな
と思ってる。


しかし、長いんだよなぁ。


今日はこんなところで…。