■警察・株主総会シーズンの密かな楽しみ | ぐーすけとりきのブログ

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毎年、6月の株主総会のシーズンが近づくと、東京には
全国から総会屋が詰めかけ、都心のホテルには一種異様
な雰囲気に包まれる。


なかでも中部以西から上京した総会屋たちは、かつての
東映映画に出てくるヤクザそのもののいでたちで、見る
からに暴力団関係者と見分けがついてしまうのだ。


この時期になると警視庁の刑事の多くは「上京B(マル
ビー)の視察」を行う。


「動物園に行ってくる」


といって、赤坂あたりのホテルに出かけるのだ。


もちろん動物園といっても、上野にパンダを見に行く
わけではない。


街の野獣、つまり上京したヤクザもんを視察に行くのだ。


ホテル・ニューオータニや赤坂プリンスあたりに行くと
ロビーは地方から上京した総会屋でごったがえす。


あちらこちらからどすの利いた啖呵がお国訛りで聞こえ
てくる。


そんなロビーの片隅に陣取って、コーヒー一杯で長々と
粘り、無遠慮な視線を総会屋たちに注いでいると、さす
がに向こうも不審に思うのか、肩を怒らして近づいて
きて


「なんばしよっとか。くらさるるたい」
(なにすんだ。なぐられるぞ)


とお国訛りでまくしたててくる。もちろん、こちらは
そんな嚇しには取り合わない。


「別に」


と吐き捨てるなり、冷めたコーヒーをズルズル音を立てて
のんで、わざと相手を見定めたりする。


見るからにヤクザものとわかる相手に「別に」などと平然
といえるのは、一般職業のものにおいているはずはない。


せいぜい、東京のヤクザもんか刑事ぐらいのものだ。


ようやくそうと気づいたのか、


「あんた、おまわりさんや。そうやろ」


と顔を寄せてくる。


不思議なもので地方のヤクザものたちは上京してくると
東京の刑事と話をしたがるものが多い。どうせ国に
戻ってから


「わいは東京のオマワリと話をしたでぇ…」


などと自慢話にでもしたいのだろう。


そんなことはお見通しだけに、こっちはまったく取り
合わない。すると向こうは


「四課でっか?」


と畳み掛けてくる。


「さあね。ご想像におまかせするぜ」


とそっぽを向いてシラを切ると、


「あっ、やっぱりそうや。ご苦労でんなぁ」


とすごく嬉しそうな顔をする。


そうなると、こちらもちょっと打ち解けて、相手のことを

「おやっさん?」


とか、相手がちょっと若い場合には


「あにき?人気あんの?ぶっとい組なら上納金なんて
 すげいんだろ」


なんてからかってみる。


こうしたやりとりがとにかく楽しい。野獣をからかって
遊ぶというのは、刑事にとって数少ないレクリエーション
みたいなものなのだ。


そんな楽しみを上司の刑事課長などもよく知っていて、私たちが


「上京マルBの視察に行ってきます」


と怖い顔をしていっても、課長はニヤニヤしながら


「情報(ネタ)とってこいよ。みやげでてくるのかなぁ」


などというながら送り出してくれるのだ。


こんな優雅なやりとりができるのも、課長自身が若いころ
野獣をからかって憂さ晴らしをしていたからに他ならない。