警察の捜査テクニックのひとつに「おとり捜査」というのがある。
ドラマでよく見られるのは、女性刑事がOLなどに扮装して、
痴漢が出没する公園に出動。
わざと夜中に公園を歩き、犯人がまんまと
ひっかかったところを逮捕するというもの。
これは女性刑事による「おとり捜査」の例だが、
実際にこのような捜査が行われているのかというと、
これがなかなか難しいものがある。
というのも、そもそもこうした捜査のやり方自体が
「適正といえるのか」といった議論があるためだ。
たとえば、警察が麻薬の売人に扮して、
ある人物に麻薬の購入を持ちかけたとしよう。
ここで、相手が応じれば犯罪となるわけだ。
いっぽうで、もし警察がこうしたことを行わなければ
その人はそもそも麻薬を買う気にはならなかったとも
考えられる。
つまり、おとり捜査を行うことで、警察が意図的に
犯罪を作り出すことも可能というわけで、
どの程度なら「適正な捜査」といえるのかが
問題となってくるのだ。
ちなみに、おとり捜査はその手法により、
すでに犯行を決意している人に対して、警察が意図的に
犯行の機会を与える「機会提供型」と、
もともと犯罪を行うつもりのなかった人に、
犯行を働きかける「犯意誘発型」に分類できるとされる。
先の女性刑事による痴漢捜査の件でいえば、もともと
その公園に痴漢が出没していたことから、既に犯意を持つ
人物に対する「機会提供型」の捜査と判断することが
できるだろう。
一方、麻薬の例は、警察が持ち掛けなければ、
相手が麻薬を買わなかった可能性があることから、
これは「犯意誘発型」に当たると考えられる。
この場合、見方によっては警察が犯行を「そそのかした」
ともとれるわけで、いくら捜査のためとは言え、
警察がそこまでやってよいのかということが
争点となってくるわけだ。
ちなみに、FBIでは犯意誘発型おとり捜査の事例が
あるものの、日本では機会提供型の捜査手法しか使わない。
なお、おとり捜査は最高裁見解においても合法とされ、
完全に禁止されているわけではないが、
「特別な必要がない限りは行わない」ということが原則と
なっている。そのため、警察の捜査活動においては
「違法なおとり捜査ではないか」といった疑念が生じない
よう、慎重に進めることが求められている。