カナダ西部のアルバータ州で、2010年7月23日、航空ショー
に向けた訓練中、カナダ空軍のCF-18戦闘機が、突然、真っ逆さまに
墜落。戦闘機は地上に激突して炎上したが、パイロットが緊急脱出
(ベイル・アウト)して、最悪の事態を免れるという事故があった。
戦闘機をはじめとする軍用機には、このような緊急脱出装置が装備
されている。その起源は第一次世界大戦中で、パイロットがパラシュ
ートを携行して搭乗。当時、いざという時、パイロットはパラシュー
トを背負って空中に飛び出した。
これで、パイロットの死亡率が大きく下がったが、第二次世界大戦
中、戦闘機の飛行スピードが大幅にアップすると、一転して死亡事故
が急増した。コックピットから脱出後、自機の尾翼にぶつかる事故が
多発したのである。
そこで、座席ごと機外に射出し、パラシュートで降下させるイジェ
クションシート(射出座席)が開発された。実用化したのはイギリス
のマーチン・ベーカー社で、当初は火薬で座席を飛ばす方式がとられ
ていた。
1960年代になると、速度0、高度0でも安全に脱出できるロケ
ットモーター式が開発され、パイロットにかかるGが火薬式より小さい
こともあって、広く普及した。
現在、世界でもっとも安全な射出座席といわれているのは、ロシア
のSu-27やMiG-29/30などに装備されているズヴェズダ製
「K-36DM」で、マッハ3、高度2万4000メートルまで使用可能
だといわれている。
ただし、安全といっても、パイロットには15G以上の重力がかかる
ため、適切な姿勢と使用法をとらないと、背骨が折れて死亡したり、
大ケガをすることになる。そのため、アメリカ軍では、戦闘機のパイ
ロットにたいして、射出座席の訓練を義務付けている。
また、脱出後、救出されるまでのあいだ生存できるように、射出
座席には、膨張式のイカダや非常食、自衛用の拳銃、サバイバルキット
無線機などが積み込まれている。