桑田さんたちのレコーディングはでは、レコーディングスタジオ
に一ヶ月ほど閉じこもることがある。一ヶ月間もスタジオを借りる
アーティストは少ない。考えようによっては不経済でもある。
だが、サザンオールスターズにとって、この一ヶ月間は、アーテ
ィストの魂を曲と詩に注ぎ込む貴重な時間なのだ。そんな時、差し
入れを持って激励に行こうとしても、断られるだろう。非常に繊細
な桑田さんにとって、その時間に外部の人間と会うことは「精神の
内蔵」を見られるような心持ちなのだろう。
桑田さんは、自分でつくった曲をサザンの仲間たちに提示する。
そして、一緒になって曲を組み立てていく。試行錯誤を繰り返す
桑田さんが、時には矛盾する行動に出ることもあるだろう。それで
も、サザンのメンバーは桑田佳祐というアーティストの才能を認め、
「大人」になって彼を支えている。
桑田さんは曲を先につくり、それに詩をつける。その詩づくり
にも、桑田さんはのめり込む。「大辞林」とか「大漢和辞典」と
いった分厚い辞書から引っ張り出したかと思えるような重みのある
言葉を探り出し、言葉の韻を踏み、惹句(じゃっく)となる英語を
ちりばめる。ひとつひとつに精魂を込め、その息吹が聴く人の
スピリッツを揺さぶるのだ。
曲と詩をつくる時の桑田さんは、修行僧とよく似ていると思う。
笑いを感じないバラード曲がヒットするのも、その深さによるも
のであり、言葉を借りれば「振幅の大きさ」である。
聴く人たちの胸をキュンとさせる曲も、思わず笑ってしまう歌も
ちょっとエッチな感覚の曲も、すべて桑田佳祐というアーティスト
の人間性と同根なのだ。でなければ35年間もトップアーティスト
として継続はできない。
もちろん、彼を取り巻くスタッフは、「桑田佳祐をどう活か
すか」という戦略を展開している。時代の1歩先は進むが、あえて
3歩先には行かないようにするスタッフのすばらしさにも敬服して
いるが、それも桑田さんのユーモアスピリッツがあってこそ成立
すると考えられよう。