話のてんまつはこうだ。
未来の世界大戦のさなか、
イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が
攻撃を受け南太平洋の孤島に不時着した。
大人のいない世界で、彼等は隊長を選び、平和な秩序だった生活
を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部
対立から殺伐で陰惨な闘争へと駆り立てられていく物語である。
不時着後、ゾロゾロあちこちから生き残りの少年たちが集まって
きた。孤島はまるでパラダイス。砂でかこまれた浅瀬には
美しい魚が泳いでいた。
やがて、おおきく、いかした法螺貝を発見したラーフ(主人公)
が提言し、法螺貝を鳴らす音がきこえたらすぐ集まる、
会議では、法螺貝を持っているものに発言権があり、ほかの
者はそれを邪魔しちゃいけない、というルールをつくった。
(さすがイギリス、議院内閣制発祥の地だね)
ラーフが隊長に選ばれ、その他のものは、遠くを通っている
船から発見されるように狼煙(のろし)をあげる組みと、
野ブタを見つけて食ってしまう狩猟隊にわかれて、うまくやってい
るかのように見えた。が、近くに船が来た時に狼煙をあげてなか
ったため、狼煙組と狩猟組とでいさかいが起こる。
狩猟組のボス、ジャックはラーフにこういった
「ラーフは狩りなんか下手くそなんだ。肉類なぞ手に入れて
くれるわけはない。立派な級長でも何でもないし、第一こいつ
のことは、ぼくらはナンニモ知っちゃいない。ただ命令を
下すだけで、みんなへいこらへいこら従ってくれるものとばかり
思っている。こんなだらしない話し合いだって…」
「こんなだらしない話し合いだと!」ラーフはどなった。
「よくそんなことがいえたもんだ!誰が話し合いをしようと
いったんだ!この集まり招集したのはいったい誰なんだ?」
(法螺貝を吹いて皆を招集したのはジャック)
「もうわかったよ」と、彼が意味ありげな、というより威嚇的
な調子でいった。「わかったよ」彼は、法螺貝を片手で胸に当て
人差し指をしきりに振りながらいった。
「ラーフに隊長の資格がないと思うものは、誰と誰だ?」
彼は、まわりにいる少年たちを、ある期待をいだいてじっと
見た。彼らは、すくみあがっていた。椰子の木の下、死のような
静寂が漂った。
「いったい何人くらい…」
彼の声は、最後が聞き取れなかった。法螺貝を持っている両手
が震えていた。咳(せき)払いをすると、大きな声で言った。
「もういい、わかった」
彼は、丁寧に、法螺貝を足元の草の上においた。両方の目尻から
屈辱の涙があふれていた。
「もういっしょにやるのは嫌だ。きみたちとはごめんだ」
しかし、バブにされたのは結局はラーフの方だった。いつ来るか
わからない船を待つよりも、ひと切れの野ブタの肉の誘惑に
負けたのだった。
ラーフとピギー(豚ちゃんというニックネーム)のほかは
だれもいなくなってしまった。ピギーのメガネで火つくるので
それを奪われたら狼煙を上げることも出来なくなってしまった。
豚肉の誘惑に負けて、ラーフとピギーは、ジャックにもらいに行く
しかし豚の宴会の真っ最中で、みんなグレート・ムタのような
ペイントをし、おどけまわっていた。ラーフもピギーもおさがり
をもらって飢えをしのいでいた。するとジャングルの方から
真っ黒なけむじゃくら生物がやってきて、なにやらいわんとする
のだが、狂宴の真ん中にとりこまれて、やるようにやられて
しまった(ネタバレなし)
第1部 完