●1 借金も相続しなくてはならない? | ぐーすけとりきのブログ

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 長須哲夫は、亡くなるまで病気などしたことがなかった。しかも
その前日まで、元気に山登りに出かけたほどである。亡くなった
日の朝、妻のさわが哲夫を起こしに行くとすでに冷たくなって
いた……。


 このように、元気だった哲夫は、自分の死んだ後のことなど
全く考えておらず、遺言書などあるはずもなかった。告別式が
終わり、長男の宏、長女の史子、次男の一徹、それに母親の
さわが久しぶりに顔を合わせた。宏はさわに、
「お母さん、親父は、昔から株をやっていたんだから、結構株券
を持っているんじゃないの。それから、この家も親父の名義
だろうし、財産をどうやって分けるか話し合わなきゃいけないね」


 これを聞いていた史子は、
「告別式が終わった途端に財産の話をするなんて不謹慎よ」
と怒り出してしまった。


「そんなことをいってる姉さんが、一番、財産を欲しがっている
んじゃないの。親父の面倒なんて全然みなかったくせしてさぁ」


「何を言っているのよ。離婚したときに、慰謝料を300万円も
お父さんに出してもらったのは誰でしたかね」


 急所を突くような弟の一徹に、史子は切り返した。これを聞いて
宏は気色ばんだ。


「俺はそんなこと初めて聞いたぞ。一徹、おまえ、それは本当
なのか」
一徹も切り返す
「そんなことは、今はどうでもいいだろ。それよりも、親父の
財産がどれだけあるのか、まずきちんと調べる必要があるん
じゃないの。お母さんはどの程度お父さんに財産があるか
わかってるの」


「お金のことはみんなお父さんに任せていたからね。月々10
万円をもらって食費なんかに使っていただけだから。詳しいことは
わからないのよ」
さわは悲しい表情を見せながら、宏にいった。


 このような具合で、哲夫の遺産がどの程度あるのか誰にもわから
なかった。ただ、みんなが、自分にも必ずいくばくかの遺産分け
があると心の中では期待していた。


 ところが、である。よくよく調べてみると、哲夫は株式や預金
などまったく持っていなかったばかりか、小豆相場に手を出して
いて、その負債が3850万円もあることが判明した。しかも
哲夫の死を知るや、哲夫夫妻の住んでいたこの家の所有者と
いう人物から
「今すぐに、出て行ってくれとはいわないが、なんとか早く引き
払ってほしい」
との電話まで入った。哲夫の名義になっていると思っていたこの
東京・江東区の土地建物が、他人のものであったのだ。


 先物取引業者からは、さわや宏ら三人のところに3850万円
の債務を払うように催告状が来た。なんとかこの支払いを免れる
ことはできないのか。