時代劇を見ていると、手練(てだれ)の武士が敵を切り捨てる
ときは、刀を抜くや一気に切り倒し、サッと刀の鞘に収める。
瞬間芸のような早業だが、実際の侍はそんなことはしなかった。
人を刀で斬れば、刀身には血液や脂肪が付着する。血ノリは
刀の錆の原因になるし、鞘の中で血液が凝固すると、刀を抜けなく
なってしまう。また、刀に脂肪がべったりつけば、刀の着れ味が
鈍ってしまう。
そのため、侍は人を斬ったあとは、紙や布で刀身を丁寧に
拭ったのち、鞘に収めたのだ。なお、刀身を拭った布はその場に
捨てず、倒した相手の着物の裾に入れた。その動きは、人を
斬っても動揺せず、落ち着いて処理したことを示すためでも
あった。