力道山は大一番の前になると
若い衆を連れて飲みに出、大酒を飲んだ。
そして最後はガラスのコップをバリバリと噛んで
口から滴る血をすすりながらそのコップを食った。
ただ歯で噛み砕くのではなく、本当に嚥下して、
すべて食い尽くしてしまうのだ。
私は(著者増田氏)この話をプロレスのアングルだと
長い間信じていなかったが。石原慎太郎が、「力道山が
このコップ食いをするのを実際に見た」と書いている
ので間違いなく事実だ、という。
石原の文によれば
「酒席で恐ろしい光景を目にしたことがある。
赤坂のどこかで飲んでいたら、私の連れの
これも酒と気の強いある料理屋の若い女将が
力道山をおだててかつ旨く乗せてからかったら、
力道山はすっかり気張ってしまって
私たちの前で手にしたグラスをガリガリ
囓って食べだした。
驚いた私が止めても聞かずに、
俺はこんなものを食うのは何でもないと嘯いて
しまいには唇を切って血を流しながらも
平気な様子でグラスを噛み砕き食べてみせる。
その形相たるや陰惨なもので、そそのかした女将は
平気でいるが私としてはその後こちらも食べられて
しまうのではないかと、電話をかけにいくふりをして
その場から逃げ出してしまった」
とある。
しかし、ぐーすけはこのエピソードを知っていたが
やはり増田氏と同じくプロレスのアングルだと思ってた。
映画の撮影でビール瓶を相手の頭に叩きつける場面
を見たことがあるだろう。
あれはご存知のとおり飴(キャンディ)でできたものだ。
だから力道山が食べてみせたグラスも飴でできたものだ
と思っていた。
しかしよく考えてみたら、グラスをボリボリ食ったのは
力道山だけではないのだ。
地方巡業で試合が終わったあと、タニマチ(後援者)が
用意した主席で若手のレスラーにこのコップ食いをやらせている。
いったことのない地方の店に、わざわざ飴作りのコップを持って行って
やるだろうか?
グラスは本物だったのである。
力道山はプロレスラーは異形の者でないとならないとして
冬でもアロハシャツを若手に着させていたほどのものである。
若手にも自分にもプロレスが舐められるようなことを
言わせるのが許せなく、きついことをやったのだろう。
プロレスを背負った者のエピソードである。