ショパンのエチュードには、それぞれニックネームが付けられているそうです。


この思い出の曲には、“滝” Waterfall と付けられていると初めて知り、えぇ?と意外に感じました。


しかし、今日、色々なピアニストの演奏を聴いてみて、なるほど“滝”というのもうなずけると思いました。本来、こんなに速いテンポの曲なのですね。メロディーが次から次へと重なりながら流れ落ち、勢いの良い滝みたいです。


でも実は、私の中では、この曲は“天国への階段”と名付けていたのです。


こんな理由からです。


父はピアノを弾くのが好きで、休日はよく練習していました。


私が小学5年生の11月6日、日曜日の午後のこと。


いつものように、父がピアノを弾いていました。


曲は、ショパンのエチュード。分散和音の響きが、とても美しい曲です。


上がったり降りたりを繰り返すところは、まるで階段みたいです。


また、曲調が明るくなったり暗くなったり、まるで、晴れたり曇ったりする空模様のようです。


それを父は、練習のために、ゆっくりと正確に弾いていました。そのゆったりさが、聴いていてとても気持ち良かったのです。


その時電話が鳴りました。


ピアノの音が止まり、母が電話にでました。


母の話す声が、驚きの声に変わり、次に泣き声に変わりました。


先程、伯父が亡くなったそうなのです。


電話が終わり、父が再び、ピアノを弾き始めました。


その響きは、さっきよりも、もっと優しく聞こえました。父が、祈りを込めて弾いているのがわかりました。


その、空へと続く階段のような曲は、まるで、天国へ登る階段のようでした。今、伯父さんが登っていってるんだ。


曲の最後は、輝かしい明るさで終わりました。


あの日、この曲を聴きながら天国を想像していたので、私にとって“天国への階段”に感じられるというわけなのです。


この演奏は、とても速いので、“滝”です↓。