無罪になっても 6
父は休廷中に言いました。必ず最高の答えを突きつけてくれる、と。その答えを伝えるなら今しかありません。
「僕は恨んでませんよ」
「……えっ?」
「母さんが殺されたのはショックでしたけど、だからといってあなたのおじいさんを苦しめる理由にはなりません。できれば最大限まで情状酌量を計らってくれるとありがたいです」
「……ごめん、ねぇ~。そういうこと、言ってもらう、つもりじゃあ……なかったのに」
少年は言葉を詰まらせながらも話します。声は裏返り、そのあとの言葉はハッキリと聞き取れなくなっていました。
僕は泣き出しそうなショウタ裁判長を抱きしめて、その頭を腕で覆い隠します。ネコさんのように魅力のある身体ではありませんが、僕に出来ることはそれくらいでした。
「今は泣いていいんですよ。ここにいるのは僕だけです」
「ごめん、ごめん、ごめんねぇ……うああああぁぁぁぁぁぁ!」
泣き叫ぶ声が遠くへ飛んでいきます。父が法廷内で叫んだように、彼は僕の叫べなかった分まで思いっきり叫んでくれました。
名容疑者の真実・了
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編集掲載 緋鷹由理(ひたかゆり)
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