意外な容疑者 8

 

まさか断罪の城柳裁判長を告発するとは思いませんでした

部屋に入ってからナナさんが一言目にそう言いました。

とはいえ、まったく知らない僕にしてみればただ1人の人間です。

審理によっては僕の母親を殺した殺人犯にもなりえます。

どういう人なの?

そうですね。昔から裁判官をやっている人ですが、ここ2年間くらいで急に有名になった人です。検察以上に鋭い洞察力を持って犯人を有罪にし、時には弁護人よりも説得力のある推理で無罪を言い渡し、一説では超能力者ではないかともいわれています

言われてみれば孫の裁判長でさえ異様なまでの適応能力があり、裁判に対する柔軟性も並々ならぬものがあります。

そのあたりは祖父の血を引き継いだということでしょう。

それにしても、ただでさえノドカさんの登場だけでもギリギリまで追いつめられて逆転されかかったというのに、今度は彼女の何倍も経験を重ねてきた裁判長が相手になれば状況的にどうあがいても不利です。

それに孫の方が祖父をかばう可能性も否定できません。

僕だって父が同じ目に遭えばあらゆる手を尽くすつもりです。

あの少年が裁判官としての真実を受け入れるしかないのか、それとも感情に負けて祖父を守ろうとするのか。

どちらにしても決めるのは彼自身でしょう。

 

〔つづく〕

 

登場人物

遠崎悠一  主人公

藤堂奈々  ナナさん。弁護士藤堂姉妹の三女

裁判長   十代で裁判官になった天才少年


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作  者 草薙香(くさなぎかおり)


編集掲載 緋鷹由理(ひたかゆり)


文月鈴太郎(ふみづきりんたろう)の小説


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