意外な容疑者 1
奈々さんは彼が退廷していく姿を見たあとにうなずきました。
「さて、これで車の存在が確認できましたね」
これでこちらに有利な証拠品が出てきたのです。
しかし、ノドカさんは「無駄よ」と反論をしてきました。やや覇気が失せています。
「関係ない話ね。現場の車は白、事故の車は黒、それは覆せない事実よ。ここまできてどちらかのダメ男が見間違っていたなんていうわけじゃないでしょうね?」
シノミヤさんまでダメ男に認定されていました。たぶん、その採点基準の厳しさこそが未だ独身である最大の理由かもしれません。
ナナさんは「う~む」とうなります。
「仕方ありませんね。悠一さん、頭の弱い私の姉に説明してください」
おそらくナナさんも分かっていないのでしょう。それこそ仕方ありません。
「どっちの証言も合ってるよ。犯人は父さんを轢くときに黒い車に乗っていて、母さんを殺しにきたときは白い車に乗っていた。そうだとしたら答えは簡単でしょ?」
「は、犯人は2台持っていたってことかしら?」
「うん。セレブな人だよね」
「私だって免許さえあれば買ってるわよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そこで怒鳴られても困ります。
検事の資格を持った彼女が取れないというくらいなのですから、車の免許というのも意外とハードルが高いのかもしれません。
とりあえず検察側も納得してくれたようです。
〔つづく〕
登場人物
遠崎悠一 主人公
藤堂奈々 ナナさん。弁護士藤堂姉妹の三女
裁判長 十代で裁判官になった天才少年
武笛鉄人 ムテキ検事、マッスルを連呼し筋肉を強調
藤堂和花 ノドカ検事。藤堂姉妹の長女
藤堂音子 ネコ刑事。藤堂姉妹の次女
四ノ宮五郎 シノミヤ、ムテキ検事の連れてきた証人
遠崎雄太 主人公の父親
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編集掲載 緋鷹由理(ひたかゆり)
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