再びシノミヤさんの証言 4
この人、普段からこのテープを使っているとすれば今後の人生の大半を損するでしょう。このままではかわいそうです。せっかくなので教えておくことにしました。
「シノミヤさんって、動揺したときに光るみたいだね」
「すみませんでしたあああぁぁぁぁ!」
僕の方を見たまま直角に頭を下げます。あまりにも潔すぎて法廷内の全員があきれ返っている様子。そしてシノミヤさんは裁判長の方を向いて自らの頭をかきました。
「いやぁ、別に盗むつもりはなかったんさ。ほら、無人の高級車を見たら乗ってみたくなるんでな。あっ、でもあっしが触ったのは助手席だけなんよ。指紋もそこだけじゃろ?」
そもそも他人の車に乗りたがる気持ちが分かりません。僕には理解できなくとも、裁判長は納得したようにうなずきます。
「分かるよ~。おじいちゃんの車もみんな乗りたがるんだよね~」
「じゃろ? じゃろ? どうよ!」
なぜか僕の方を向いて誇らしげな表情でした。こっちとしては車の存在を確認できたのですから十分です。
彼の役目は終わりました。ムテキ検事に背中を押されながら法廷を出て行き、その後姿はそこはかとなく元気を取り戻していたようです。
〔つづく〕
登場人物
遠崎悠一 主人公
藤堂奈々 ナナさん。弁護士藤堂姉妹の三女
裁判長 十代で裁判官になった天才少年
武笛鉄人 ムテキ検事、マッスルを連呼し筋肉を強調
藤堂和花 ノドカ検事。藤堂姉妹の長女
藤堂音子 ネコ刑事。藤堂姉妹の次女
四ノ宮五郎 シノミヤ、ムテキ検事の連れてきた証人
遠崎雄太 主人公の父親
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編集掲載 緋鷹由理(ひたかゆり)
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